【大感謝!520万PV突破!】異世界転移したら飼っていた犬が最強になりました~最強と言われるシルバーフェンリルと俺がギフトで異世界暮らしを始めたら~【Web版】
第1034話 懐いてもらう方法を考える人もいました
第1034話 懐いてもらう方法を考える人もいました
「確かにそれも大きな理由かと。ですが、それ以上にフェンリル達はタクミ様に懐いていらっしゃるように見えます。私にできる方法で懐いてもらうには、やはり餌付けが良いのではないかと……」
野生の魔物や動物に対して、有効なのかはわからないけど……確かに餌付けというか、食べ物を上げるというのは仲良くなる方法としては実行しやすくて、現実的かな。
「タクミ様、シャロルはずっとフェンリルを餌付けして懐かせ、お世話をしてあげたいと言っているんです。フェンリルに対して、そう考えるシャロルが私にはフェンリル以上に怖くて……後ろで、不気味な笑い声を漏らしていましたし」
「あー、ははは……」
後ろでほくそえんでいたり、怖がっていたはずのフェンリルを懐かせて……なんて考えられて、ジルベールさんはシャロルさんが怖かったんだろう。
まぁ、背中を掴まれた状態で不気味に笑われたら、考え以前に誰でも怖くなるだろうけど。
「何を言っているんですか、ジルベールさん。こうしてフェンリルとの距離が近い今、チャンスなのですよ? それに、多くのフェンリルを味方に付ければ、きっと強大な力になります! そして私は多くの対象をお世話できるのです! こんなに喜ばしい事はありません!」
「……タクミ様、クレアお嬢様。シャロルはとにかく誰かをお世話する事で、喜びを感じる変人なのです。主と定めた人以外にも、相手は誰でもいいようで……」
「そ、そうなんだ……」
「へ、変人とまでは言わないけど……私が以前本邸で話した時は、ここまでではなかったような?」
急に大きな声で力説するシャロルに、チタさんが溜め息交じりに変人認定をする。
俺もクレアさんも、ちょっとだけ引き気味に苦笑。
お世話したがる、というのはライラさんと同じって事かな……? とも思ったけど、シャロルさんの様子から少し違う印象も受けた。
ライラさんは定めた相手のお世話をしたい人で、シャロルさんは相手を問わない……誰でもいいからとにかく全方位にお世話をしたい人。
同じだったり、似ているように見えて、何か違うような気がした。
なんだろう……ライラさんと違って、シャロルさんの方は必死さというか、やらなければいけないという欲求よりも義務感のようなものを感じる。
個人個人の事情や身の上話なんかはまだ聞いていないから、聞けば何かわかるのかもしれないけど。
「ま、まぁとにかく、お世話がしたいならまず屋敷にいるフェンリル達にしてみるといいかもしれませんね。料理長のヘレーナさんに聞けば、好みの食べ物とかもわかると思いますから……」
「はい、ありがとうございます。タクミ様! もちろん、タクミ様の使用人になった場合も、精一杯お仕えします!」
「あはは……はい、その時はよろしくお願いします」
先程、フェンリルを味方にして強大な力……なんて言っていたシャロルさんだから、精一杯と言われても何か含む事があるような気がしてしまう。
本人は、鋭く厳しい印象を与える視線を、真っ直ぐに俺へと向けているから、実際に含みを持たせているわけではないんだろうけど。
「それじゃジルベールさん、頑張ってください」
「た、タクミ様~」
「ジルベールさん……」
とにかく、こちらも慣れ始めていると判断し、ジルベールさんに声をかけてリルルから離れる。
情けない声を出すジルベールさんは、本当に後ろにいるシャロルさんの思考に困っている様子だけど……散歩の間だけだから、我慢して欲しい。
俺とクレアが苦笑し、リーザはよくわからない様子だったけど、チタさんが憐憫の眼差しをジルベールさんへと送っていたのが印象的だった――。
それからしばらくは、楽しそうにするチタさんやクレアと話したりして和やかに散歩を楽しんだ。
途中、ずっと一生懸命走っていたシェリーは、さすがにヘトヘトになっていたので、フェリーの背中でクレアとチタさんに挟まれて、休んでいる。
チタさんが延々と撫でているので、あまり休めてはいないようだけど……舌を出して目を閉じたまま、抵抗する気もないみたいだ。
「そろそろ、皆満足したかな?」
楽しそうに走るフェンリル達を見ながら、そろそろ引き上げ時かなと思って呟く。
背中に乗っている人達もそれなりに慣れた様子だし、長時間乗っていても疲れ切ってしまうからな。
「ワウ? ワフワフ、ワフゥ」
「ははは、レオはもっと力いっぱい走りたいだろうけど、今回は皆に慣れてもらうのが目的だからな」
「ワフー」
レオはもっと速く走りたいようで、走りながら訴えかけるように鳴いたけど、本来の目的が違うからな。
仕方ないなーと言うように鳴くレオの背中を撫でながら、目的がなくてもこうやって走らせるのは、ストレス解消や運動不足解消に良さそうだなと思った。
使用人候補さん達をフェンリルに乗せる時、背中を押すのが楽しそうな人達の中にも、乗りたそうにしている人がいたし、明日からも散歩として走ってもらうのも悪くないな。
そういえば、フィリップさん達屋敷の護衛さん達が、周辺を見回りしているとも言っていたから、その代わりというかフェンリル達が見て回るのもいいかもしれない。
「ふむ……むしろフィリップさん達に乗ってもらって、周辺を見回ってもらえば一石二鳥……かな?」
「パパ?」
「ワフ?」
「おっと、ごめんごめん。それじゃレオ、そろそろ……」
そろそろ戻るために、皆に声を掛けようとしていたはずなのに、また別方向へと思考が逸れてしまい、抱えるようにして支えていたリーザに見上げられる。
レオも同様に、気になったようだ。
考えるなら、屋敷に戻ってからだな……リーザ達に謝って、レオに報せの遠吠えをするよう頼もうとしたその時……。
「ワフ?」
「ん、レオどうした?」
レオが速度を落とし、少し首を傾げるような動作をしながら、声を漏らした。
急にどうしたんだろう?
「ワフ。ワフワフ……ワウー」
「多分、魔物の気配がするって、ママが言っているよ?」
「そうみたいだな。魔物か……」
屋敷からそれなりに離れた場所……多分、徒歩だと二、三時間はかかりそうな位置まで来ているから、魔物がいてもおかしくはないか。
見晴らしがいいのに、俺にはまだ見えないが――。
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