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第951話 ブレイユ村の事はフェルに任せました
第951話 ブレイユ村の事はフェルに任せました
「ガフ、ガフガフ!」
「フェル。あぁそうか、フェルはこの村に残るんだったな」
「ガフ!」
そっと近づいたフェルが、慰められているデリアさんに鼻先を近付けて、鳴く。
実はハンバーグを食べる会が催された昨日、フェルとレオやデリアさんを交えて話していた。
フェルはブレイユ村近くの森に棲んでいるけど、他のフェンリル達の群れには所属していない一匹狼なので、このままブレイユ村の近くで過ごしたいと言っていた。
フェリーから、人に近いのでハンバーグを報酬に、俺やレオ、クレア達に協力するため、群れに入らないかとの誘いがあったらしいんだけど、そのお断りだな。
まぁ、ハンバーグは村の人達にも教えてあるので作れるし、昨日までである程度村の人達もフェルに慣れてくれていたようだから、なんとかなりそうだ。
それに、村長や一部の村の人達は近くにフェンリルがいてくれれば、村の守りにいいだろうと考えている様子もあったり……要は、用心棒とかに近いか。
報酬はきっと、ハンバーグだろう。
今はデリアさんが村にいるので、意思疎通は簡単だけど、ランジ村に来てからはどうしようというのが、村長達の目下の悩みとか。
「フェルに頼むのは違うのかもしれないけど……デリアさんの母親らしき人のお墓とかも、頼むな?」
「ガフ!」
「ダグミざん……ありがどうござびばぶー!」
「デリアお姉ちゃん、泣かないで。よしよし……パパにこうされると、暖かいんだ。だからデリアお姉ちゃんも!」
「リーザぢゃんも、ありがどう……!」
「うーん、デリアさんがすっかり泣き虫みたいになってるなぁ」
赤ん坊のデリアさんを守っていた女性……本当の母親かどうかはともかく、お墓は森の中にある。
村の人達が行くには遠いし、魔物に襲われてはいけないため、フェルに頼んでみると任せろと言わんばかりに頷いてくれた。
それを聞いていたデリアさんは、またしても号泣……もう言葉がはっきり言えなくなるくらいになっている。
リーザが尻尾以外にも、手を使ってデリアさんを撫でて慰めまた、という連鎖も起こっていたり。
まぁ、リーザに対しては寂しさとかありがたさよりも、小さい子に慰められている状況に対してっぽいけど。
デリアさんって、感極まるとこんなに泣いてしまうんだなぁ……。
「デリアは昔から、こんな風に何かある度に泣いていました。懐かしいと言うかなんというか……カルヤカトさん、先代の親方が亡くなった時は、数日泣き止まなかったものです」
「あぁ、親方さん。そうですか……育ての親なので、泣くのも仕方ないですけどね」
デリアさんの昔を語るのは、苦笑しながらこちらへ来た親方さん。
ちょっと厳しそうな目付き以外は、フェルも治した薬草のおかげで傷跡がなくなり、人相も改善されている。
親方さんの事はともかく、デリアさんは昔からこんな感じだったらしい。
これ……ランジ村に来る時も村の人達とお別れで、もっと泣いてしまいそうだなぁ……。
「村長さん、ありがとうございました。お世話になりました」
とりあえずデリアさんの事はリーザと親方さんに任せ、クレアと話している村長さんの所へ。
数日間だけとはいえ、村の人達にはお世話になったからな、しっかりお礼を言っておかないと。
「なに、世話をしたのはカナートやデリアですじゃ。むしろ腰に良い薬草を下さって、感謝するのはこちらの方です」
「役に立ったのなら良かったですよ。薬草は、偶然デリアさんと見つけただけですけどね」
「ふむぅ、あのような薬草はこの辺りで見た覚えはありませなんだが、そういうのであればあったのでしょうなぁ」
「あははは……まぁ、はい」
「タクミさん、村長さんには?」
「話したのは、昨日のペータさん以外にデリアさんだけだから」
ぎっくり腰だった村長さんは、いつの間にか一人でちゃんと立っており、痛みに顔をしかめる事もないようで無事に完治したようだ。
想像通りぎっくり腰だったみたいで、冷やすのではなく温めるのが効いたのだろう……治りが早くなったのなら薬草を作った甲斐がある。
鋭い村長さんは、温める薬草のラモギモドキをこの辺りで見た事がなく、何か含みがあるようだけど、『雑草栽培』の事は話していないので適当に誤魔化しておく。
村長に聞こえないよう、こっそりクレアに聞かれた質問には、同じく小声で答えておいた。
「カナートさんも、ありがとうございました」
「いえいえ、私などは特に何も……」
「ニャックの方、お願いしますね。セバスチャンが手配して、ラクトスから運ぶための幌馬車が来るようになっています」
「は……はい!」
村長さんの隣にいたカナートさんにも、お世話になったお礼。
謙遜するカナートさんへクレアがニャックのお願いをする。
交渉とも言えない話し合いで、ニャックを大量購入する事は決まっていたし、続けて継続的に購入するようにクレア達が来てから決まっていた。
まぁ、フェルがいてくれるので狩りなどで食料を得られる事から、備えとしてのニャックがあまり必要なくなったのもあるんだがな。
ともあれ、フェンリル達では樽に入ったニャックを運べないので、あらかじめこちらに来る際にセバスチャンさんが運搬用の幌馬車や荷馬車を手配してくれていたらしい。
あとは、屋敷に到着するのを待つだけだな。
しかし、本当にニャックでのダイエットというか、屋敷の女性達からの関心が強いようだ……これは、村にいる間に思いついたダイエット法も、屋敷に戻ったら伝えないといけないな――。
「では、ラクトスへ向けて参りましょう」
「はい。――レオ、頼んだぞ」
「ワフー!」
「ママ頑張ってー!」
「レオ様、よろしくお願いします」
しばらく後、見送りに来てくれた人達との話も終わり、まだぐずっているデリアさんを残して、それぞれレオやフェンリル達に乗って、ラクトスに向かって出発する。
ちなみに、ティルラちゃんとヨハンナさんは、既にラーレに乗って上空を飛んでいたりする……ヨハンナさん、慣れるまで頑張ってください。
レオには俺、リーザ、クレアの順番に乗っており、俺の背中にしがみ付くリーザを後ろからクレアが支えているという感じだ。
セバスチャンさんの合図でフェンリル達が走り出し、俺もレオに声をかけて楽しそうなレオやリーザのを聞きながら走り始める――。
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