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第743話 ドジっ子は街中にもいるようでした
第743話 ドジっ子は街中にもいるようでした
「では、行きましょうか、タクミ様」
「はい……」
カレスさんの店の方へ行くクレア達を見送り、セバスチャンさんと一緒に会場へ向かって歩き出す。
「……緊張しておられますかな?」
「そりゃそうですよ。こんな、人を見て選ぶだなんてやった事がありませんからね……」
「ですが、タクミ様は雇う側なので、もう少しどっしり構えていてもいいのですが……まぁ、そこもタクミ様らしいのでしょうな」
「タクミ様は、身分の上下に関わらず、低姿勢ですからね。……もう少し、命令してお任せして下さってもいいのですけれど……」
「ははは……性分ですから……」
先頭を歩くセバスチャンさんに問いかけられると、意識しないようにしていた緊張が沸いて来るようにも感じる。
面接はする方が初めてなのはともかく、される方にしてもどちらにせよ緊張するものだからなぁ……セバスチャンさんの言うように、どっしり構えるなんて俺には難しい。
さらに横からは、ライラさんが少々不満そうに呟いていたけど、性分という事にしておく……というか、命令して欲しそうに見えるのは、世話をしたがるライラさんらしいと言えるのか。
雇う事が決まってすぐ不満を溜め込むようになったらいけないので、気を付けようと思う。
「タクミ様、あちらが今回の会場になります」
「……この辺りは、来た事がありませんでしたね。大きい建物?」
「はい。あれは、この街を管理する者達がいる建物となります。住んでいるわけではなく、あの建物の中では管理のみを行っています」
区役所とか、市役所みたいなものかな?
セバスチャンさんに案内された場所は、孤児院に近い場所だけど、大通りからは外れた場所にあって、今まで来た事がない所だった。
まぁ、ラクトスの中を詳しく隅々まで歩き回ったわけじゃないから、知らない建物や場所があるのも当然か。
その建物は、ハインさんの雑貨屋みたいに複数階建てでそれなりの大きさがあり、入り口には見張りが立っていて、さっきから衛兵さんや街の人達が出入りしているのを見かける。
ここで管理しているという事は、ラクトスでの行政の中心部となるのか……うん、やっぱり役所と考えて良さそうだな。
「すいません。……急がないと……あ、ぶべ!」
「あ……」
役所に入ろうと入り口に向かって移動していると、後ろから一人の女性が駆け込んできて、俺やセバスチャンさんの間を通って駆けて行った。
急ぐ用事でもあるんだろうなぁ……と思って見ていたら、入り口の手前の何もない所でつまづいて、前のめりに転んだ……顔から行ったよな今?
突然の事に、俺だけでなくセバスチャンさんやライラさん、さらに建物を警備している兵士さんもポカンとしている。
……というか、どこかで見た事のある光景……と思ったら、屋敷の中で何もないのに転ぶ事に定評のあるゲルダさんだった。
見事とも言えるヘッドスライディングをした女性と、以前見た事のあるゲルダさんの転び方がそっくりだったんだな、うん。
まぁ、ゲルダさんと違ってスカートがまくれ上がったりはしていないが……ズボンを履いているし……残念だとは思っていない……おっと、そんな事を考えている場合じゃないな。
「……大丈夫ですか?」
「勢いよく行きましたが、怪我などはしていませんか?」
「ふぐ……だ、だいじょうぶれふ……ありがとうございます。……はっ! あぁ、良かった……」
「ん?」
呆けている場合じゃないと、セバスチャンさんやライラさんと共に声をかけながら、女性を助け起こす。
女性は、痛みに耐えるようにしながら鼻を押さえていたけど、血が出ている様子ではないので怪我はしてないないようだ……どうして、こういうドジをする人って、怪我をしてもおかしくないくらいの転び方をしても、怪我をしないんだろう?
ある意味運がいいのか……? いや、転んでいる時点で運がいいとは言いづらいか。
助け起こされた女性は、俺達にお礼を言ってすぐハッとなり、帽子を被っている頭を両手で押さえた……鼻の頭はしっかり赤くなっている。
「どうかしましたか?」
「い、いえ。なんでもありません。ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした……」
「いえいえ、何事もなかったのならそれでいいんですよ」
「はい。あ、急ぐのでこれで……失礼します! 時間に間に合わないー!」
「……騒々しい女性でしたな?」
「そうですね……」
セバスチャンさんが声をかけると、首を振って謝る女性。
すぐに急いでいた事を思い出し、建物の中へ駆けて行った……また転ばないといいけど。
女性を見送って、セバスチャンさんと顔を見合わせる。
「それにしてもセバスチャンさん……?」
「どうかなされましたか?」
「いえ……今の女性もそうなんですけど……どうして多くの人が、耳付き帽子を被っているんでしょうか?」
「……どうやら、前回タクミ様がお買いになった後、この街ではやり始めたようです。ハルトンが上手くやったようですな」
「ハルトンさんが……はぁ……」
あまり触れないようにしていたんだが、前回来た時とラクトスで大きく様子が変わっていた部分があった。
それはさっき駆けて行った女性も同じで、街中を歩いている時に耳付き帽子を被っている人が結構いた事……すれ違う人のうち、三人に一人くらいは耳付き帽子を被っていた。
ランジ村から帰る時は、ラクトスを通過するだけでほとんど見ていなかったんだけど、こんな事になっていたとは……。
「おそらく、私やタクミ様があの帽子を被り、レオ様やリーザ様と一緒にいるのを目撃した人が多かったようです。そこから、レオ様やタクミ様にあやかろうと、耳付き帽子を求める人が増えた……と聞き及んでおります」
「まぁ、いろんな人から見られていた自覚はありますが……それにしても、広まるのが早すぎませんか? ハルトンさんの店だけで作っていたら、とてもじゃないですけど間に合わない量が出回っていると思うんですけど?」
ディームの事があってから、ラクトスでは俺の評判がうなぎのぼりらしい……というのは前回来た時に、色んな人に言われて自覚しているけど、ここまで一気に広まるとは……。
それはともかく、道行く人だけでなく屋台をやっている店主さんとかも、耳付き帽子を被ったりしていて男女問わず持っている様子からすると、百や二百くらいの数どころではないだろう。
ハルトンさんの店がどれだけ頑張っても、急にそこまでの数を用意するなんて不可能だと思うんだ――。
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