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第742話 面接のためにラクトスへ出発しました
第742話 面接のためにラクトスへ出発しました
「タクミ様は、私がいるだけでは不安ですかな?」
「いえ、そういうわけではないんですけど……」
「私もいますので、大丈夫ですよ」
「もちろん、私もです!」
「ははは、これだけいてくれれば、大丈夫そうですね……」
子供達と仲良くできるのか不安がるリーザを励ますはずが、いつの間にか俺が励まされる側になってしまっていた。
セバスチャンさんやライラさん、ミリナちゃんもいるので、こっちはこっちで本当に大丈夫だろう。
ライラさんとミリナちゃんはラクトス出身者なので、周辺から集まってきた人達を改めて見るために一緒に来てもらう事になっている……中には顔見知りもいるらしいから。
フィリップさん達護衛さんもいるし、結構な大所帯になったなぁ。
「「「「「皆様、行ってらっしゃいませ!!」」」」」
初めてで緊張する中、安心できる要素をかき集めて、ラクトスへ向かうために屋敷を出る。
いつもお馴染みになった見送りは、なんとなくいつもより威勢がいい気がしたり、人数が多いような気もするけど、そこはまぁご愛嬌と言ったところか。
皆、俺が雇った際の待遇とか、知っているんだろう。
「ママー、いつものお願いー!」
「ワウ。……ガウ~」
「ははは、リーザは本当にレオが出した水がお気に入りなんだな?」
「うん。だって、初めてこんな美味しいお水を飲んだから!」
屋敷を出て、各自馬車に乗り込んだり馬に乗ったりしている間に、リーザはまず水筒を取り出してレオへおねだり。
レオが頷いて、顔の前に魔法で作り出した水をリーザが水筒の中に入れていく……たまに手ですくって飲んでいたりもする。
初めて会う子供達と、という事で緊張もしているんだろうな。
リーザは屋敷へ連れて行く際に、レオが出した水が美味しくて一番のお気に入りだから、大体いつも水筒に詰めて持ち運んでいる。
ランジ村との往復の際にも、よくおねだりしていたっけな。
レインドルフさんがいなくなって、イジメられるだけじゃなく、喉が渇いても泥水を啜るような生活をしていたんだから、綺麗な水を飲める事に喜びを見出しているんだろう。
レオが作るとか、安心して飲める……という部分も大きいだろうけども。
「では、出発致しましょう」
「はい……ティルラちゃんはこっちなの?」
「そうです! リーザちゃんと一緒に行きます!」
「ワウ!」
準備の終えたセバスチャンさんに声をかけられ、水を出した後は伏せて待機しているレオに乗ろうとすると、先にティルラちゃんとリーザが背中に乗っていた。
多分、知らない子供達と会うから、緊張しているリーザを気遣っての事だと思うけど……ラーレがいないからというのもあるか。
相変わらず子供好きなレオは、ティルラちゃんとリーザを乗せて嬉しそうに尻尾を振りながら吠える。
それじゃ、俺も失礼して……二人が落ちないように、支えておかないとな。
クレアや他の人は、馬車に乗っての移動になるが、今回はエッケンハルトさんがいるわけでもなく、ただでさえ人数が多いのに仰々しい移動にしないため、小さめの馬車にライラさんと並んで座っているのが見えた。
……あっちに乗ろうと思えば乗せてくれるんだろうが、狭い中で密着するのはやっぱり緊張したり恥ずかしいから、レオに乗る。
男が恥ずかしいってなんだよと思わなくもないが、慣れていないから仕方がない……いつか慣れる事ができるんだろうか? いや、慣れて女性の扱いが上手くなっている自分というのも想像できないから、慣れないんだろうな……。
ちなみに、セバスチャンさんは御者台に座りながら、俺がどちらに乗るのか何も言わずに見ていたようだけど、口元が綻んでいたのが見えたから、楽しんでいるみたいだった。
「よーし、レオ。ありがとうなー」
「ママありがとー!」
「ありがとうございます、レオ様。やっぱりレオ様に乗るのは楽しいですねー!」
「ワフワフ」
「ご苦労様です。街の方は、何か変わった事はありましたかな?」
「いえ、何事もなく平穏そのものです! ディームを捕まえたおかげか、スラムの者達もおとなしく、外から来る者も悪さをする雰囲気ではないようです」
「そうですか、それは良い事ですな……」
ラクトスに到着し、門の前で衛兵さんと話す御者台のセバスチャンさん。
ここまで乗せてくれたレオを褒めて、背中に乗ったままではあるけど、体を撫でておく。
リーザやティルラちゃんも同じように、レオの体を撫でているので、嬉しそうに尻尾をふって鳴いていた。
それはともかくだ、セバスチャンさんと話している衛兵さんの話を聞く限りでは、ディームを捕まえた事がラクトスの治安にいい影響を与えているらしい。
一時的な事かもしれないけど、街で暮らす人達が暮らしやすくなるのなら嬉しい。
そういった影響があるとか、全く考えてなかったけどな。
門を抜けた後は、馬車や馬を預ける広場まで来て、レオから降りる。
護衛さん達も馬を連れて預けに行っていた。
それにしても、相変わらずここは人がおおいなぁ……広い場所だから、狭い感じは全くないけど。
「それではタクミさん、私はカレスの店に向かいますので、ここで」
「はい。――レオ、リーザ達を頼んだぞ?」
「ワウ!」
「パパ頑張ってー!」
馬や馬車を預けた後は、カレスさんの店に行くクレア達と、面接会場へ向かう俺達とで別れる。
クレアの方には、ティルラちゃんとリーザ、レオに加えてヨハンナさんにシェリー。
俺の方には、セバスチャンさんとライラさんに、フィリップさんとニコラさんともう一人護衛さん。
この護衛さんは、森に行ってシェリーを見つけた時に、入り口で馬の管理をしてくれていた人だな。
セバスチャンさんはともかく、ライラさんもこちらなのは俺の世話のため……ではなく、雇う事が正式に決まったので、自分の同僚とかを見るためだ。
あと、セバスチャンさんがいてくれはするけど、やっぱりそれだけじゃ心許ないので、一緒にいてくれるのはありがたい……あれ? 結局俺の世話になってないか?
まぁ、そちらは考えない事にして、さらに二人の執事さんがセバスチャンさんと一緒にいるから、そっちの事だな。
こちらは、会場の準備だったり集まった人の誘導など、細々とした事をやってくれるらしい……ありがとうございます――。
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