第698話 畑のサイクルを考えました
その三人とレオに触発され、村の男性達も美味しかったと感想を言いつつ、お代わりが欲しいとの事で、急遽また大量に作る事になってしまった……修羅場再び、だな。
ダイエットの話が広まったのか、一部を除いて女性達からのお代わり要求はなかったんだけど……あの話をしたのは俺が食べていたテーブルだけの事だったのに、女性はそういう事に敏感なんだなぁと実感せずにはいられなかった。
あ、ルグレッタさん、もう少しで出来上がるのでお皿を持ってレオと一緒に並ぶのは止めて下さいね?
―――――――――――――――
翌日、再び薬草畑の予定地へ赴き、エッケンハルトさんとクレア、ハンネスさんとセバスチャンさんと薬草畑の大きさを決めるために話し合う。
レオやリーザ、ティルラちゃんやラーレは、昨日と同じように広い場所を走りまわっているのと、シェリーやアンネさんも一緒だ……昨日ハンバーグやハンバーガーを多く食べたので、ダイエットのために運動をという事らしい、チラチラとクレアも気にしている様子だけど、今はこちらの話に集中して欲しいところだ。
ちなみにユートさんとルグレッタさんは、マルチーズを始めとした犬達と戯れると言っていたから村のどこかにいるんだろう。
「まだ屋敷の方でも試験的に行っているだけなので、はっきりとした事は申せませんが……通常の農地よりも小さく小分けにして、役割を分けた方が良いですな」
「そうですね。俺が『雑草栽培』で薬草を作って根付かせる場所、その薬草の成長と増えるのを待つ場所、摘み取った後に土へ栄養を与えて次に備える場所……合計三か所ですかね?」
「場所を見るに、三か所だと余ってしまうな……それに、小さく分けるのはいいのだが、それだと多くの薬草を作りだすには時間がかかるかもしれん」
「ですが、あまり多くを一度にやり過ぎると、タクミさんが倒れてしまうかもしれません」
「それに三か所ですと、少々期間が短く思います。確か、数日で薬草は増えていくのでしょう? でしたら、摘み取った後の場所を使うのは、しばらく待たないといけないかと……」
「でしたら、休耕させる場所は複数で、畑を多めに作って順番に使って行く事にしましょう」
小さめの場所を複数確保して、小分けにするというのは賛成だ。
屋敷での実験で『雑草栽培』による植物の急速な成長のせいで、その場所が砂漠化というか、そこの一部だけ不毛の土になってしまったからな。
腐葉土を使って土壌改良したり、再び植物に必要な栄養分を土に蓄えるためには、休耕させてしばらく待たないといけない。
さすがに数日で土が良くなるわけでもないしなぁ……。
しばらくエッケンハルトさん達と話し合って、ひとまず畑は十程用意する事に決まった。
畑に薬草を作り、その成長をしばらく見守ってから摘み取る……その際に、また別の場所へ薬草を作って、摘み取った後の畑は土壌改良をしながら栄養を蓄えさせる、というサイクルにするためだ。
大体、薬草を作ってから四日程度で摘み取り、その後は順番が回ってくるまで休耕するから……えーと……。
全て四日目で摘み取るとした場合、一周して最初の一か所目に戻るのは三十六日くらいの計算だな。
畑の栄養をと考えるたら期間が短く感じるが、その辺りはやってみないとわからない事が多いので、様子見の部分もある……まぁ、もし駄目そうなら他の場所に新しく畑を作るとした。
野菜を作る農地と違って、今作る予定の薬草は植物としてあまり大きくないため、思ったよりも畑が小さく作られる事で、予定地に余裕がかなりあるおかげだな。
あと、さすがに畑一つ分の薬草を、一日で俺が作れるかどうかも不明なため、これも数日かけて行う事になっている。
余裕を見て四日程度で一つの畑を作れば、畑のサイクルと同じようにできるから丁度いいし、少し頑張れば休日を作る事だってできそうだからな、仕事ばかりにならないようにとの配慮となっている。
さらに、一つの畑の中でラモギだけは必要数が多いので、作る場所を大きめにとる予定だ……ワインに混ぜる分も必要だからな。
薬酒のための薬草は、ひとまず売れるかどうかが未知数なために、他の薬草と大差ない数になっている。
まぁ、こちらは余裕があれば俺が個人的に、少し多く別で作るとしておいた……そうする事で、ある程度臨機応変に対応できるだろう。
「あと、大きくなくていいので、運営する畑とは別に……個人用の畑が欲しいですね。『雑草栽培』で他に何かができるかもしれませんし、以前エッケンハルトさんやセバスチャンさんに提案したように、備蓄用の薬草も作りたいですから」
「タクミさん、大丈夫ですか? また倒れるような事は……」
話し合っている皆へ俺からの提案を聞いて、クレアが心配そうにしている。
以前目の前で倒れた事もあるから、余計に心配なんだろうな……。
「大丈夫、無理はしないから。今話し合った予定通りなら、何度も屋敷でそれ以上に薬草を作った事もあるからね。多少は余裕はあると思う」
「それならいいのですけど……本当に、無理はなさらないで下さいね?」
「ありがとう、心配してくれて」
余裕がなさそうだったら、畑の方を頑張って休日を作った際に『雑草栽培』を使えばいいからな。
以前のように仕事に忙殺されるような事は避けたいし、リーザやレオとのんびり過ごしたいとも思っているから、無理をして倒れないようにすると約束できる。
それこそ、たまにはラクトスへ行ってイザベルさんと話したり、カレスさんの店の様子を見たりもしたいし、食べ歩きとかもしたいなぁ……もちろん、クレアにも余裕があれば一緒にだ。
さすがに、照れ臭いのでこの場では言わないけど……エッケンハルトさんやセバスチャンさんにからかわれそうだというのもある。
「ワウ! ワウ!」
「おぉー、ママすごーい!」
「ん? なんだかレオの方が騒がしい?」
「さっきまで走っていましたけど、今は止まっていますね。ラーレやティルラも一緒です……アンネはシェリーを抱いてはいますけど、少し離れていますが……」
「アンネさんは……まだレオが怖いんでしょうね。最初の頃よりは随分マシになりましたけど」
「私のような荒療治だと、泣いてしまいそうだな……」
畑に関して話し終わった頃、さっきまで走り回っていたはずのレオ達が、一か所に集まって何やら騒いでいた。
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