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第441話 ハンネスさんへの説明を始めました
第441話 ハンネスさんへの説明を始めました
「え? えっと、ほとんどの子供達が、レオ様と楽しそうに遊ぶ事が多かったように思います。大人達も、それを微笑ましく見ていました」
「子供達だけでなく、大人達も、レオ様を受け入れているのだな?」
「はい。レオ様やタクミ様には、村を救って頂きました。もちろん、公爵様のおかげである事はそうなのですが、ワインを見抜いた事や、オークが襲って来た時に戦って下さったお二方です。受け入れないという事はあり得ません」
エッケンハルトさんの質問に、しっかりと答えるハンネスさん。
確かに村ではレオが子供達と遊び、それを親達が微笑ましく見ているという景色がよく見られた。
はしゃぐ子供達を見て、ハンネスさん達はワイン作りをして手いっぱいだった事を反省したんだったと思う。
「そうか……それならば、簡単だ。今回の頼みなのだがな? ワインを作るのと共に、タクミ殿の薬草をランジ村で作ろうという事なのだ。もちろん、その場合にはタクミ殿とレオ様も一緒にランジ村へ赴く事になる。いや、住む事になると言った方が正しいか」
「薬草を……それで、畑のための土地をと?」
「うむ。そして、畑作りにはタクミ殿が雇った者達も連れて行き、管理運営する予定だ。その場合、レオ様は薬草に直接かかわる事がないため、村の子供達と遊んでいられるだろう」
「それは……そうですが……タクミ様の方はよろしいので?」
「俺は構いませんよ。レオも、子供達と毎日遊べるなら喜ぶでしょう。それに、実際薬草畑の事をしている時は、レオを構ってやれませんからね」
エッケンハルトさんの言う事は簡単だ。
要は、大人達が忙しくて相手をさせられない時間帯に、レオが代わりに子守りをするという事。
それならば、子供達は楽しく遊ぶだろうし、寂しく思う事もない。
大人達はワイン作りに集中できるし、俺も薬草作りに集中できる。
ハンネスさんの心配はなんとなくわかるが、俺は笑顔で頷く。
リーザもいるから、むしろ子供達と一緒に遊ぶ方がいいだろうしな。
人を雇って管理する必要があるから、今みたいにレオやリーザに構ってやれる時間は、当然少なくなってしまう。
仕事仕事で、いっぱいいっぱいだった以前の時のように、レオやリーザを放っておくつもりもない。
だがそれでも、数時間程度は必ず構ってやれない時間がある。
この案は、俺やレオ、リーザにとっても良い案だし、ハンネスさん達にとっても良い案だと思う。
「もちろん、数人はランジ村へ働かせに行かせようと思う。村であるからこそ、人手が足らない事もあるだろうからな。幸い、ラクトスを含め周辺には仕事を求めている者もいるしな」
俺が雇う人以外にも、という事だろう。
ニックに話を聞いてもそうだったが、ラクトスにいるままじゃ人が溢れて、働き口がない人もいるようだ。
そのおかげで、スラムに住み着く人が多くなるのかもしれないが……この機会に、大規模ではなくとも、雇用を生み出そうと考えてるのかもしれないな。
給金だとかがちゃんとしていれば、雇用は周囲の街や村に良い影響を与える。
……雇用ばかりあっても、人が足りなくなってしまうが、今の段階はそこまでじゃないみたいだしな。
「人が村へと来るのは喜ぶべき事ですが……大丈夫なのでしょうか?」
「大勢の人間というわけではないから、大丈夫だ。人員の選定も、公爵家が責任を持って行う。……心配事は、村へ馴染むかという事と、何か問題を起こさないか……という事だろう?」
「はい……その、あんな事が起こったばかりなので。村の者の一部は外部の者を警戒しています。もちろん、タクミ様やレオ様は信用していますが……他の者となると……」
数百人となれば無理だろうが、俺が雇う人も含めて数十人……といったくらいかなと思う。
それくらいの人達なら、公爵家の方で選定するのもそんなに時間がかからないのかもな。
まぁ、一人一人をエッケンハルトさんが面接するというわけじゃなく、セバスチャンさんを始めとした、執事さん達が調べるんだろうけどな……公爵家の執事さん達は優秀だからなぁ。
だが、ハンネスさんが言う外部の人を信頼できないというのも、理解できる。
騙されて病を広げる手助けをさせられた挙句、村を潰されそうになったんだから。
「そのあたりも安心して欲しい。いきなり全てを信用しろとは言わないが……公爵家が責任を持って事に当たろう。それにだ……タクミ殿とレオ様がランジ村に行くのだからな。何か問題が起こる事はあるまい。公爵家からも、人を出すから対処も難しくはないだろうしな」
「それは……確かに……」
エッケンハルトさんの、俺に対する信頼が重い気がするが……それに答えられるように頑張ろう。
レオが一緒にいてくれる以上、何か変な事をしようとした人間は、レオに見つかる可能性が高いし、エッケンハルトさんもそれを見越しての事だろうけどな。
それに、公爵家からも人を出すというのは、多分クレアさんの事だろう。
まだ本決まりではないが、クレアさんが薬草畑を共同運営するという事になれば、屋敷に戻る日があるとはいえ、公爵家の目が届く事になる。
当然、数人は護衛さんや執事さん達も来る事にもなるだろうから、様々な事にも対処が容易になる……とか考えていそうだなぁ。
セバスチャンさんの発案な気がしてならないけど……。
「どうだ? この案ならば、子供達をないがしろにせずとも、ワイン作りを続けられるだろう?」
「はい、その通りかと。ですが……」
「うん? まだ何か問題があるのか?」
「いえ、その……ランジ村にはいくつか、人が住める家は空いています。なので、人が増える事は歓迎なのですが……その……」
「ん? 俺ですか?」
エッケンハルトさんにハンネスさんが頷き、賛成になるか……というところで、難しい表情をさせて言いづらそうにする。
人が住める家が何軒かあるのは、俺も確認してる。
捕まえた商人を閉じ込めてたのも、そのうちの一つだしな。
それなのにハンネスさんは、俺へと視線を投げかけながら、言いづらそうな表情。
俺が何かあるのかな?
首を傾げ、何かを言おうとしてるハンネスさんに聞いた――。
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