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第391話 森へは刀を持って行ってもいいようでした
第391話 森へは刀を持って行ってもいいようでした
「タクミ様に付ける執事もそうですが、クレアお嬢様が助けてくれると思いますので、ご安心を」
「クレアさんと共同で、という話は大丈夫だったんですか?」
「まだ決定ではありませんが、そちらで話は進んでおります。クレアお嬢様には、これから話をするつもりですが、旦那様とは話を詰めてありますので」
区画だとかを考えるとなると、最初よりも多くの人を雇わないといけないというのは、当然か。
最初に考えてたのは、俺だけでのんびりとやる事だったんだが……随分と大きな話になってしまった。
だが、執事さんを付けてくれるとの事だし、クレアさんも一緒にできる公算が高いのなら、なんとかなるだろう……なって欲しいなぁ。
今日エッケンハルトさんとセバスチャンさんで、その事も話していたんだろう。
エッケンハルトさんは、森へ行く事ばかり話していたように、食事中は言っていたが、ちゃんと話すべき事は話しているんだろうな。
クレアさんは、俺と街へ行ってたから、話すのが後回しになったのは仕方ないか。
一緒に来てもらって、ありがたかったしな。
「なので、公爵家で選別した雇用者のリストは、まだ増える予定です」
「わかりました。何人雇うかは、まだ決まってませんが、しっかり選ばせてもらいます」
「はい、お願いします。もちろん、こちらでもおかしな人物を選ばないよう、しっかり選別させて頂きます」
「お願いします」
元々、渡されてた雇用者候補のリストは、とりあえずだったからな。
考えていたよりも、規模が大きくなってしまい、尻込みするような感覚もあるが、皆のためにできるだけの事をしよう。
もちろん、リストを見て良さそうな人を選ぶのも、しっかりとな。
公爵家の人達が、悪人をリストアップするとは思えないが、何かで紛れ込む可能性も、絶対ないわけでもないからな。
考える事が増えたため、頭を悩ませながら、クレアさんと話し合いをしに行くセバスチャンさんを見送り、鍛錬のために裏庭へ向かった。
「タクミ殿、森には刀を持って行ってもいいぞ。もちろん、いつもの剣もだがな」
剣のイメージトレーニングや、刀の素振りが終わり、汗をタオルで拭いていた時、ふとエッケンハルトさんからそう言われた。
「刀ですか? でも、いいんですか?」
「森でならばな。街のような、人目につくような場所では控えて欲しいが、森なら人はいないだろう」
「そうですね」
「今回森に行くのは、屋敷にいる者達でだ。外に漏らすような者達ではないし、刀自体は知っている者もいる。問題ないだろう」
「わかりました。剣と刀の両方を持って行きます」
確かに森なら、他人の目というか、不特定多数に見られる事はないだろう。
絶対に誰も近づかない場所……というわけではないだろうが、基本的に人はいないしな。
特に、前回の探索で野営していた場所なんて、普通の人は近付かないだろうし。
それならばと、刀を携帯する許可をもらった。
剣でオークを倒した事ならあるが、刀ではない。
使い方の違う部分があるため、多少の不安はあるが……今回はランジ村と違って、他の人もいるしな。
俺が上手くできなくとも、誰かが死んでしまう可能性はないだろう。
気楽にやれば……というのとは違うが、気負い過ぎる必要もないか。
「先程の素振りを見ていると、多少なりとも手に馴染んで来ているようだしな」
「そうですね。剣になれるよりも、馴染みやすいように思います」
「まぁ、元々剣を使っていたから、というのもあるんだろう。あとは、タクミ殿に刀の適正があったという事かもしれんな」
「適正……」
刀の適正、というのはよくわからないが、剣よりも握っていてしっくりくる気がするのは確かだ。
元々、刀が日本で作られた武器で、俺が日本人だからかもしれないが、剣を振るよりも使いやすいと感じている。
エッケンハルトさんの言うように、先に剣を使って、ある程度の基礎を学んでいるからというのが、一番大きいのかもしれないけどな。
「そういえば、森へはいつ行く予定なんですか?」
「そうだな……四、五日後だろうな。まだ行く事が決まっただけで、日取りの決定ではないがな」
「四、五日後ですか……少し間を空けるんですね」
「まぁ、急ぐ事でもないからな。戦うためにいくのだから、準備はしっかりしておかねばならん」
森に行く事に関しては、食堂で話して決まったが、いつ行く事になるのかはまだ知らされていなかったと思い、エッケンハルトさんへ質問。
前回森へ行った時は、決まった日より二日後だったから、間が空いてしまうように感じる。
あの時は、クレアさんが行きたいと押し通したから、という事も大きかったか。
四、五日後か……それだけあれば、簡易薬草畑の様子も色々見られるし、カレスさんの店に卸す薬草も準備できるだろう。
俺が屋敷を離れてる間、ラクトスで薬草が不足したらいけないからな。
もしかしたら、そういう事も考えての、四、五日後なのかもしれないが。
「それに、そろそろランジ村からの返答も、あるだろうしな」
「ランジ村からというのは、薬草を作る畑の事で?」
「そうだ。ランジ村の村長には、タクミ殿が薬草の畑を作る事を報せたが、その返答がなければな」
ハンネスさんの返答がそろそろか……薬草の畑の事を相談し始めて、セバスチャンさんがすぐに報せを送ったらしいから、すぐに返答してくれたら、そろそろ屋敷に帰って来る頃なんだろう。
公爵様から直接の報せだから、ハンネスさんが返答を後回しにするわけはないしな。
というより、そもそも土地は公爵家の物なのだから、決定事項として伝えれば向こうの人達は断る事なんてできないと思う。
まぁ、そういう事をしない公爵家の人達だから、民に慕われているんだろう。
でも、ハンネスさん……村の近くで薬草を作る事を許可してくれるかなぁ?
村にいた時は、親切にしてくれてたし、村の人達も親切だった。
ワインの事もあって、村の不利益になる事じゃないから大丈夫だとは思うけど、少しだけ不安。
村の人達に歓迎されないような事は、したくないからなぁ……。
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