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第387話 リーザが名案のような迷案を思いつきました
第387話 リーザが名案のような迷案を思いつきました
「そうですね……まずは捕まえて反省を促す事。その後、リーザに直接謝り、獣人は魔物ではない事を正しく教育する。そのうえで、奉仕活動をさせての経過観察……ですかね」
「その程度でよろしいのですか?」
「軽い処罰かもしれませんが、重処罰をするだけなのも違う気がしまして……」
俺の考えは甘いだとか、軽くし過ぎだからもっと厳しく……と考える人はいるかもしれない。
けど、経過観察と奉仕活動を経て、反省が見られなかったり、知識を得ても獣人を差別するようなら、その時はまた別の罰を与えればいい。
しっかり反省する事、更生する事を条件に、猶予のようなものを与えてもいいんじゃないかと思う。
まぁ、さすがに人を殺したりとかの、凶悪犯ともなったら話は別だけどな。
そう考えると、ランジ村をオーク達に襲わせた商人達は、猶予を与えたり、温情を……とは一切思わない。
その辺りは、セバスチャンさんやエッケンハルトさんが、厳しくしてるだろう。
あと、直接手を下してはおらず、オークを使った襲撃にも関わっていなくとも、アンネさんにはいずれランジ村への謝罪をしてもらいたいとは思ってる。
これはエッケンハルトさん達と相談する必要はあると思うが、ランジ村のワインへ被害を出した事や、病で苦しんだ人がいるんだからな。
罪に問われなくとも、原因の一つとして、けじめをつけないといけないだろう。
「わかりました。衛兵達が犯人を捕まえたら、タクミさんの意見を参考にさせて頂きます」
「まぁ、俺の考えは甘すぎるかもしれませんけどね……」
脱線した思考が、クレアさんの言葉で戻って来る。
偉そうな事を考えてしまったな……と思いつつ、クレアさんに苦笑して返した。
なんとなく、クレアさんは俺の意見そのままではなく、いい落としどころにしてくれるだろうな……と思った。
「ママー、もっと速くー!」
「ワフワフ」
「こらこら、リーザ。馬車を置いて行く事になるから、これ以上早く走るのはいけないぞ? レオも、あまり距離を離し過ぎないように走ってくれ」
ラクトスの街を出て、屋敷へと向かう中、レオに乗ったリーザがはしゃいで速く走るように言う。
レオもリーザが喜ぶならと、速度を上げようとしたが、注意して今のままを維持するように頼む。
馬車から離れ過ぎたら、クレアさん達を心配させてしまうかもしれないからな。
いやまぁ、置いて行かれたと、拗ねる方が先かもしれないが……。
クレアさんがそんな風にするかはさておき、リーザと一緒にレオに乗って屋敷へ。
大分暗くなって来たし、ティルラちゃんが待ちくたびれてそうだ。
そういえば、エッケンハルトさんはセバスチャンさんと、何か相談事があったようだけど、何を相談してるんだろうな……?
簡易薬草畑の経過も見ないといけないだろうし、剣の素振りもしなきゃな。
「速い方が、楽しいよ?」
「レオが速くても、馬車を曳いてる馬は大変だから」
「だったら、ママが馬車を曳く?」
「いや、それはどうだろう……?」
首を傾げて馬車を曳いてる馬の方を見て、レオが馬車を曳く事を考えたリーザ。
確かにそうすれば、背中に乗るよりも落ちないようにするのが簡単だし、馬車も早く移動できるんだろうが……レオがどう思うかだな。
馬が曳くから馬車だし……レオが曳いたら犬車? それとも狼車?
犬ゾリというのはあるが……あれは馬が使えない北国だからだしなぁ。
そもそも、ママと呼んでるレオを馬扱いとは……リーザはかなり遠慮がなくなったと実感。
獣人だからというのもあるかもしれないが、どちらかというと子供ならではの無邪気さなんだろうと思う。
……とりあえず、速度はさすがに遅くなるだろうが、レオに乗るだけよりも多くの人数で移動できそうだし、考えてみる価値はあるかも?
背中に誰かを乗せるのが好きなレオだから、承諾してくれるかはわからないけどな。
なんて考えながら、屋敷へと戻った。
「「「「「お帰りなさいませ、皆様!!」」」」」
屋敷へと帰り着き、中に入ると、いつものように使用人さん達に迎えられる。
一斉に声をかけられたから、まだ慣れないリーザは、出る時と同じように体をビクッとさせた。
いずれ慣れるから、それまで驚くだろうな……。
「では、タクミさん。また夕食の時に」
「はい。まずは荷物を置いて来ますね」
玄関ホールでクレアさんやライラさんと別れ、俺とリーザとレオは一旦部屋へ。
ちなみに、レオの足拭きはリーザが楽しそうにやっていた。
もう慣れたのか、レオがくすぐったがる事もなかった。
「リーザ、ここに服を入れておくぞ?」
「うん、ありがとう、パパ! これも入れよーっと」
買って来たリーザの服を、部屋に置いてある棚のうち、引き出しの一つに入れておく。
俺の服だとかも入っているが、まだまだ棚はいっぱいになっていない。
リーザの服で、そのうち一杯になるかもなぁ……その前に、ランジ村で薬草畑か。
俺と違い、数は多かったリーザの服だが、体が小さいせいもあって小さく、あまり場所を取らない。
恐らく下着類が入っていると思われる、小さな巾着袋は、リーザが自分で服をしまった場所の近くに入れていた。
ライラさんから、こっちは俺じゃなく自分で管理するように言われたらしい。
なんでなのか、リーザは首を傾げていたが……ライラさん、気を使ってくれたようで、ありがたい。
「さて、食堂に行くか。お腹が減っただろう?」
「うん!」
「ワフ!」
服をしまい、荷物を置いてリーザとレオに声をかけ、食堂へと向かう。
昼食は遅めだったが、リーザもレオも、お腹が空いているようで、夕食を楽しみにしてるようだ。
まぁ、多少間隔が短くてもたらふく食べるだろうしな。
「エッケンハルトさん、戻りました」
「うむ、タクミ殿。ご苦労だったな……大変だったようだな?」
「もう、何があったか聞いたので?」
「あぁ。途中、ニコラとヨハンナから、報告の伝令が来てな。騒ぎの事は聞いている」
「今、それに関する補足をしていたんです」
食堂に着き、先に待っていたエッケンハルトさんに挨拶をしながら、いつもの席へ。
ティルラちゃんやアンネさんも既に座っており、セバスチャンさんも含めて皆で、クレアさんから騒ぎの詳細を聞いていたようだ。
服をしまってたりしてたから、クレアさんより少し遅れてしまったみたいだな。
というより、ニコラさん達、伝令とかを送ってたんだな……。
まぁ、街であった事で屋敷にも近いし、クレアさんにも関わるから、連絡をするのは当然か。
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