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第352話 初めてミリナちゃんとニックが出会いました
第352話 初めてミリナちゃんとニックが出会いました
「あ、アニキ! お疲れ様です」
「ニック、お疲れさん。ミリナちゃんもここにいたんだ」
「はい、師匠。そろそろ、薬を調合する頃だと思って、用意していました」
屋敷内を歩いていた時、ゲルダさんにニックが来た事を知らされた。
客間で待っているようなので、先にカレスさんへの薬草を渡すため、そちらに行くと、ニックと一緒にミリナちゃんもいた。
どうやら、先んじてすり鉢を用意したり、調合するために準備をしてくれていたようだ。
「……誰?」
「あぁ、リーザは初めてだったな。えーと、ニックだ。……ラクトスの街に、俺の薬草を運んでくれてるんだ」
「アニキの舎弟のニックです! よろしくお願いします!」
「……リーザ、です。よろしく……お願いします」
客間に入って、ミリナちゃんを見つけた時は、少し嬉しそうな顔をしたリーザだが、ニックを見た瞬間、俺の足に隠れてしがみついた。
やっぱり、初めてあった人にはまだ気後れしてしまうか。
これまでがこれまでだから、知らない人を見ると警戒するのもわからなくはない。
ニックも、以前よりは多少マシだが、スキンヘッドで知らない人が見たら、威圧感を感じても仕方ないしな……ニック自身は、いい笑顔だが。
とりあえず、ニックを紹介しようとして、ちょっと困った。
ここで俺が雇う事にした経緯を説明するのも長くなるし……とりあえず、薬草を運んでくれる人とだけ伝える事にする。
しかし、ニック……舎弟って……この世界にそんな言葉がある事に驚いたが、それをニックが誇らし気に言うのにも驚いた。
薬草を運ぶ人材として、とりあえず雇っただけなんだが……舎弟のつもりは一切ないんだがな……。
「師匠……私というものがありながら、こんな人まで惹きつけるなんて……」
「いや、ミリナちゃん? ニックは弟子でもなんでもないからね?」
「へい。俺はアニキの忠実な弟分でさぁ!」
「忠実って……そこまでの事を頼んだ覚えはないんだが……」
リーザの前で、ミリナちゃんもニックも変な事を言わないで欲しい。
ないとは思うが、リーザが将来、子分を従えてレオと一緒にスラムの子供達と戦いに行く姿を想像してしまった……。
いや、さすがに考え過ぎだろうけどな?
「弟分……弟子……私の方が上ですね!」
「いや、どっちが上とか、そういう事も無いんだけど……」
「アニキの弟子……つまり、姉御ですね!」
ミリナちゃんとしては、弟分よりも、弟子の方が格上らしいし、ニックもそう考えたようだが、二人のどっちが上でどっちが下とかはあまり考えていない。
というかミリナちゃん……ニックの方が早く雇ったから、先輩なんだけど……それにどう見てもミリナちゃんより年上だし。
そもそも、ニックは俺よりも年上にも見えるしな……実際の年齢は聞いてないが。
「ニック、それはライラさんじゃなかったのか?」
「タクミ様、ニックさん、姉御は止めて下さいませ」
「うぉ、ライラさん!? いつの間に……」
「今来ました。ゲルダから、ニックが来たと聞きましたので、タクミ様の薬草をお持ち致しました。こちらです」
ニックは以前、屋敷の中でライラさんと話しているのを聞いた時、姉御と呼んでたからな。
何を基準に、姉御判定しているのかは知らないが……ともあれ、それをニックに指摘しようとしたら、後ろからライラさんから、突然声をかけられた。
全然気配を感じなかったんだが……いつの間に客間に入って来たのか……。
驚く俺に、しれっと答えながら、昨日作った薬草が入れられた袋を渡される。
「あ、ありがとうございます」
「ライラお姉さん!」
「ふふふ、リーザ様、ご機嫌がよろしいようですね?」
何とか平静を保ちながら、ライラさんから薬草袋を受け取りながら、お礼をする。
ニックも、ミリナちゃんまでもが、俺と同じように驚いて動きを止めてる……皆、ライラさんが客間に入って来た事に気付かなかったみたいだ。
レオとリーザだけは驚かなかったようで、その中でもリーザはニックという知らない人がいるためか、ライラさんの登場に安心した様子で、駆け寄って抱き着いた。
昨日、リーザを風呂に入れるお世話をしたため、屋敷の中では特に懐き始めているようだ。
リーザを優しく受け止めたライラさんは、問いかけつつも、耳をしっかり撫でる。
どうやら、食堂でクレアさんに伝えた撫で方や、嫌がらなければという事は、既に伝達されているようだ。
まぁ、昨日風呂にも入れてるのなら、その時触っていてもおかしくないか……。
それでも、ライラさんは楽しそうにしているので、余程リーザの耳や尻尾を気に入ったんだろう。
「えーと、ともかくニック。これがカレスさんの所に持って行く薬草だ。……そろそろストックが出てきていると聞いたが?」
「へい、確かに。そうですね、薬草の売れ行きは順調らしいですが、アニキの薬草が余って来ているのは間違いないようです。まったく、他の物なんて目もくれず、アニキの薬草だけ買っていればいいのに!」
「いやいや、俺の薬草だけじゃなく、カレスさんの店で売っている他の物も買われなきゃいけないだろ。それに、薬草が余るのなら、必要としない人が多いという事だ。それだけ、病気や怪我が少ないんだから、喜ぶべき事だぞ?」
「さすが師匠です!」
リーザとライラさんが楽しそうにしているのを見ながら、受け取った薬草と、さっき作って来た薬草を渡す。
ついでに、ストックがどのくらいなのかを聞いたのだが、ニックは俺の作った薬草が余る事に憤慨している様子だ。
薬草が余るのは、商売としては微妙かもしれないが、街の人達としては悪い事じゃない。
それだけ、病気になる人、怪我をする人が少ないという事だからな。
それに、薬草だけじゃなく、他の物も売れないとカレスさんとしても、店をやっていけないだろうし……。
薬草専門店というわけでもないしなぁ。
その事を軽くニックに伝えると、すかさず称賛してくれるミリナちゃん。
……確かに、ミリナちゃんは人の役に立ちたいと思って、薬の知識が欲しいと言っていたが、庄さんされるために言ったわけじゃないんだがなぁ。
ミリナちゃんもそうだが、ニックにまで尊敬の目で見られてるのが、どうにも気恥ずかしい俺だった。
ここに来る前の事を考えると、やっぱりまだ慣れないなぁ……。
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