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第167話 ランジ村の人達にラモギが行き渡りました
第167話 ランジ村の人達にラモギが行き渡りました
「それで、病気の方はどうなりました?」
「ラモギを飲ませてあげたらすぐに効果が出ましたよ。ライ君の両親はすぐに元気になったようで、ライ君を連れてハンネスさん達と村を回ってます」
「さすがですね、タクミ様の薬は。病気に罹って起きられなかった者が、すぐに動けるようになるとは」
「ライ君の両親は、病気に罹って日が浅いようでしたからね。あまり体力が落ちて無かったんでしょう」
孤児院で子供達の病気を治した時、すぐ庭に出てレオやティルラちゃんと遊べるようになった子もいた反面、病気が治ってもすぐに起き上がれずベッドでそのまま寝ていた子供もいた。
院長のアンナさんに聞いてみたら、起き上がれなかった子供達は、病気に罹ってから結構な日にちが経っていて、庭に出た子供は病気に罹ってからの時間が短いとの事だった。
子供だし、体力には個人差があるだろうが……病気に罹って時間が経ち体力が奪われると、ラモギで病気を治しても、失った体力を取り戻す時間が必要なんだろうと思う。
まぁ、病み上がりは体力がないというのは当然の事だ。
「これで、この村が活気を取り戻してくれれば良いですね」
「そうですね。俺の作った薬草が、この村のためになるのなら嬉しい事です。誰も外を出歩かないような静かな村は、やっぱり寂しいですからね」
「ワフワフ」
ハンネスさん達が、村の人達にラモギを飲ませているのだろう。
村のあちこちで声が聞こえ始めたのを確認して、フィリップさんと村を見てしみじみと話し合う。
レオも、俺達の言葉に同意するように頷いた。
「本当に、ありがとうございました。タクミ様のおかげで、この村は救われました」
しばらく後、ぼんやりと村の入り口で待っていた俺達を、ハンネスさんは自分の家に招待してくれた。
どうやらラモギの数は十分だったみたいで、村の人達に行き渡ったようだ。
……暇潰しに、少しだけラモギを追加で作ったのは無駄になったな。
ラモギを届けてるハンネスさん達を待つ間、暇を持て余した俺はそこらの地面で『雑草栽培』を使ってラモギを追加で作っていた。
まぁ、持って帰ればカレスさんの店に置けば良いから、無駄とまで言わなくても良いか。
ちなみに、レオはハンネスさんの家に入れないので外でロザリーちゃんと遊んでる。
ライ君も、ロザリーちゃんに促される形でレオと一緒に遊んでる。
最初は怖がったライ君だが、ロザリーちゃんと遊ぶレオを見て大丈夫だと思ったようだ。
今頃、元気になった村の子供達数人を背中に乗せて、レオは走り回ってる事だろう。
フィリップさんは、そんなレオを見てくれている。
ハンネスさん達が村を回る時、一緒にレオというシルバーフェンリルの事も説明したみたいで、家の中から出て来た人達は、多少腰が引けてる人もいたが、おおむね村人達に歓迎されてる様子だ。
レオが怖がられなくて良かったと思う。
「……これは、少ないですが……ラモギの代金でございます」
ハンネスさんの家で、向かい合ってテーブルについてる俺に、何やら革袋を俺に渡して来た。
村の人達分のラモギの代金という事らしい。
「ここしばらく、村で病気が広まったため……あまり多くは用意出来ませんでしたが……」
「お金のためにラモギを用意したわけじゃないですよ。この代金は、村のために使って下さい」
お金のために仕事をするのは、前の世界で飽き飽きする程やって来た。
最終的には、仕事のために仕事をするというわけのわからない状況になっていたが……。
生活は屋敷にいれば十分だし、セバスチャンさん……というより公爵家か……から使い切れない程の報酬を貰ってる。
お金が無くて生活に困るってるわけじゃないから、ラモギの代金は無くても構わない。
病気で働けない人だらけだった村のために、このお金は有効に使って欲しいと思う。
「しかし……それでは公爵家にも申し訳が立ちません……タクミ様にも、わざわざこの村に足を運んで頂きましたし、何もしないというわけには……」
ハンネスさんは、俺がお金を受け取らない事に対して申し訳ないと考えているようだ。
そんな事を考えなくても良いんだけどなぁ。
「……そうですね……でしたら、美味しい料理を頂きたいですね。それと、もう遅い時間ですので、泊まる場所も欲しいですね。出来れば野宿はしたくありませんから」
「その程度の事でしたら、代金とは別に用意するつもりでしたが……」
「ははは、俺にはそれくらいで良いんですよ。お金のためだけに人を救う、という事はしたくありませんからね。それに……レオは見た目通り沢山たべますからね、それを用意するのも大変かもしれませんよ?」
「欲の無い人、なんですね……素晴らしい方です。感服致しました。村を挙げて満足の行く食事の用意をさせて頂きます!」
もう完全に日が沈んで外は真っ暗だ。
レオがせがんだ昼食以来何も食べて無いから、そろそろお腹が減ったしな。
それに、野宿をするのを避けれるならそれで十分だと思う。
俺の報酬は、村の人達が元気になった笑顔で十分だ……なんて事を考えたが、これはハンネスさんには伝えないでおく。
……なんだか、格好つけてるみたいで恥ずかしいからな。
「おーい、村の衆! 宴の準備だ! 今日はタクミ様とレオ様への感謝の宴だぞ!」
「「「「おー!」」」」
何故か、感服した様子のハンネスさんは、椅子から立ち上がり家の外へ。
それからすぐ、外からハンネスさんが村の皆へ叫んで報せてる声が聞こえて来た。
宴って……そこまでしなくても……俺はレオの分も含めてお腹いっぱい食べられれば良いんだけどなぁ……あ、もちろんフィリップさんも。
ハンネスさんの声に、村のあちこちから歓声のような声が上がり、外がにわかに騒がしくなった。
……どうやら、今日はお祭り騒ぎになる雰囲気だな。
「タクミ様、こちらになります。レオ様も……どうぞ」
「ありがとうございます」
「ワフ」
約1時間後、村の中央にある広場にテーブルと椅子がいくつも用意され、そのうちの一つに俺は座っている。
隣にはレオがいて、お座りの体勢でおとなしい。
ハンネスさん達が、俺のいるテーブルに大量のお皿とその上に載った料理を用意してくれた。
レオの前には、俺がハンネスさんに伝えたソーセージと牛乳が、これでもかという程の量を用意されている。
……レオもそうだが、俺はこんなに食べきれるんだろうか?
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