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第109話 筋肉疲労を回復させる薬草を考えました
第109話 筋肉疲労を回復させる薬草を考えました
「まずは基礎鍛錬から始めるか……ティルラなんかは体力が無さそうだしな」
「基礎鍛錬……」
「どんな事をするんですか?」
基礎鍛錬って、筋トレとかかな?
確かに体力も無ければ剣を的確に振るなんて出来ないのかもしれない。
ティルラちゃんは基礎鍛錬というのがどういうものかわからず首を傾げている。
「癖が付く前に剣の握りは教えたから、それを忘れないようにしないといけないが……しばらくは体力を鍛えるぞ」
「はい」
「わかりました」
それからは地味な運動。
腕立てやスクワット、腹筋や剣を振るのに背筋も大事だからと背筋も追加。
完全に基礎的な自重トレーニングだな。
地味だけど、効果は確かなものなはず。
さらに裏庭を使ったランニングも追加された。
俺とティルラちゃんが並んで裏庭を走る時、レオとシェリーが楽しそうに並走。
二人で息を切らせながら走ってる横で、レオとシェリーは余裕の表情だ。
体のつくりからして違うのは間違いないけど、ちょっとだけレオ達の体力が羨ましくなった。
地味なトレーニングでへとへとになったところで、昼食の休憩。
「無理にでも食べて体力を付けないと鍛錬は続けられないぞ」
辛い運動をして食欲の無さそうだったティルラちゃんは、エッケンハルトさんの言葉を聞いて、何とか昼食を食べ切った。
昼食後もさっきと同じ基礎トレーニングを繰り返す。
その途中でちょっとした事を思いついた。
「エッケンハルトさん、ちょっと良いですか?」
「どうした、タクミ殿?」
「いえ、『雑草栽培』で作ってみたいものがありまして」
「ふむ……鍛錬の邪魔にならない物なら良いだろう」
エッケンハルトさんに許可を取って、一旦トレーニングを中止。
一瞬だけ『雑草栽培』に集中して植物を栽培。
それを採取して、ティルラちゃんにも分ける……エッケンハルトさんも欲しそうに見ていたのでそちらにも。
「これは何ですか、タクミさん?」
「これはね、疲れが取れる薬草だよ」
見た目は青い葉っぱ。
味に関しては何も考えなかったので不味いと思う。
ライラさんに言って、水を用意してもらってから食べる。
俺が食べるのを見てティルラちゃんもエッケンハルトさんもその葉っぱを口の中へ。
凄い苦みが口の中に広がるが、それを水で流し込んだ。
「ん……ゴク……おいしくないです……」
「苦みがひどいな……吐き出す程じゃないが……」
二人共、顔をしかめさせながら味の感想。
俺も苦みはきつかったが、すぐに実感出来た効果に成功したと頭の中でガッツポーズ。
「……んー! 凄いです! これならまだ鍛錬出来そうです!」
「これは凄いな……タクミ殿、昨日の薬草とは違うのか?」
「はい。これは疲労を取る事も出来ますが、体の疲れ、筋肉の疲労を取り除く事を目的にしています」
以前の薬草は体に溜まった疲労を取る物だった。
確かに体の疲れは取れるんだけど、こういう鍛錬の疲れはまた違うものだからな。
効果が無いわけじゃないが、もっとぴったりの薬草を思いついた。
鍛錬で疲れるのは主に筋肉。
この筋肉の疲れを取ることが出来れば鍛錬の効率が上がるんじゃないかと思って『雑草栽培』を使ってみた。
結果は成功したみたいだ。
さっきまで感じていた筋肉の痛みやだるさが消えている。
疲労回復の薬草と違って、体力全体の回復は少ないみたいだけど……。
「……これはこれからも欲しいな……まぁ、今は置いておこう。これなら、さらに激しい鍛錬も出来そうだ」
「……え……」
「……タクミさん……」
エッケンハルトさんは言葉通り、さっきまでよりも激しい鍛錬を俺たちに課した。
基礎トレーニングは倍の数になり、ランニングも全力に近い速度で走らないと、後ろから追走してるエッケンハルトさんに叱られる。
……並走してるレオとシェリーは速度が上がって楽しそうだったが……。
さらに剣を持った素振りが追加された。
途中何度か『雑草栽培』で作った薬草を食べて筋肉を回復させつつ、鍛錬は続く。
筋肉の痛みは取れても、体力が全快するわけじゃないから、鍛錬が辛いものになっただけだったな……。
「薬草……作らない方が良かったかなぁ……」
なんて呟きも虚しい。
俺達を扱きながら、エッケンハルトさんは鍛錬の効率が上がったと笑っていた。
夕食の準備が出来た所で鍛錬は終了。
皆で食堂に移動する。
「っと、その前に……」
俺達は用意されてたお湯とタオルで簡単に汗を拭く。
全身を綺麗にとまではこの場で出来ないけど、汗臭さはとらないとな……これから夕食だし。
しかし、クレアさん達はずっとセバスチャンさんと話しながら鍛錬を見ていたけど、退屈じゃなかったんだろうか?
薬草のおかげで筋肉疲労はほぼ無いため、何とか歩いて食堂へ。
体力自体はほぼ空になってるからゆっくりだし、ティルラちゃんなんかはレオに乗せてもらって移動してるが。
「タクミ殿も、ティルラも、剣の素質は悪くないようだな……薬草の効果のおかげで効率が良いのもあるだろうが」
「それなら良かったです」
「強くなれるよう頑張ります」
「タクミさんは剣も使えるんですね」
「魔法と剣、それにギフトですか……タクミ様の重要度が高いですな」
食事中のエッケンハルトさんからの言葉。
俺もティルラちゃんも素質はあるようで、これからも剣の鍛錬に励むやる気になった。
薬草での効率アップが大きな理由だとしても、剣が使えるようになるのは嬉しい。
「当然、まだまだだがな。これからも鍛錬を続けるぞ」
「はい」
「わかりました」
「……そうだな……寝る前に素振り1000回はやっておけ。手に剣を馴染ませるのにも必要だ」
「……えっと」
「寝る前にもですか……?」
エッケンハルトさんはさらに寝る前の鍛錬をさらりと追加して来た。
素振りが大事な鍛錬の一つなのはわかるが、1000回も……。
「……後で薬草を追加で栽培しておこう……ティルラちゃんにも渡さないといけないな」
俺は夕食後、剣を持って素振りをするため裏庭に出て、そそくさと『雑草栽培』で薬草を大量に作った。
剣を持って出て来たティルラちゃんにも分けつつ、二人で黙々と素振りをする。
監督する人はいないが、ここで怠けても自分のためにならないと、退屈そうに座って見ているレオをそのままに素振りをして今日を終えた。
……ちゃんと素振りを終えた後は、風呂に入って汗を流したぞ。
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