第14話 セバスチャンさんから魔法の説明を聞きました



 夕食後、客間にて俺とクレアさんはお茶を飲んでまったりとした雰囲気。

 セバスチャンさんとメイドさん二人は使用人だからか、椅子に座らず後ろで待機してる。

 立ちっぱなしってきついんだよね。

 だからと俺が座って休んでと言ったんだが、彼らはかたくなに断った。

 使用人としての矜持みたいなものだろうか。


「それにしても、おいしかったですね。クレアさん」

「喜んでもらえたようで何よりです。料理人にも伝えておきます」

「よろしく伝えて下さい」

「ワフワフ」


 レオもソーセージをたらふく食べていた。

 体が大きいから仕方ないのかもしれないが、ちょっと食べ過ぎてクレアさん達に悪いと思ってレオを止めようとしたけど、逆にクレアさんに止められた。

 ソーセージは一般的な食べ物らしく、高級な物でもないのでいくらでも食べて下さいとの事。

 もちろん俺も食べたが、あんな美味しいソーセージがいくらでもって言うのは単純にすごい。

 コンビニで買ったソーセージと比べたらコンビニがかわいそうなくらいだ。

 他にも肉料理、スープ、サラダ等、どこの晩餐会かと思う程の料理が出た。

 どれも美味しかったが、量が多かったため食べ切れなかったのはもったいなかったな。


「今日の料理は歓迎会のために量を多くして見栄え良くしましたが、いつもとあまり変わらない物で用意しました。タクミさんがあまり豪華にしないようにと仰っていましたので」

「……いや、さっきの料理だけでも十分過ぎる程豪華だったんですけどね……」


 量はまだしも、あれでいつも通りとは……普段から中々良い物を食べてるようだ。

 さすがこれだけの豪邸を別荘にする程の家のお嬢様だな。


「そういえばタクミさん、食事の前から何か聞きたそうにしていましたが……?」

「あぁ、わかりますか……」


 ギフトの話の時に魔法という単語が出た時から気になっていた。

 俺のいた世界では魔法は物語上のもので実際には存在しなかった。

 まぁ、魔法のような技術だとかの比喩表現であったくらいだな。

 でもさっきはセバスチャンさんを始め、クレアさんも魔法や魔力というものがあると話してた。

 魔法を使う事に憧れが無いわけじゃない。

 詳しいって程色々見て来てはいないが、アニメだとか漫画、ラノベでも魔法はよく使われていた。

 使い方や効果はその時によって違ったが、それらを使えたら便利だなぁと思ったりもしてた。

 俺に使えるかどうかはわからないが、魔法があるのならその事を知りたいと思う事は、俺の世界の人間なら考えても不思議じゃないだろう。


「その……先程魔法という言葉が出て来たのですが、この世界には魔法があるのですか?」

「え? ええ。魔法は普通に使われている技術です」

「そうですか……」

「一般で使われている魔法ですと、薪に火をつけるためだったり、風を起こしたりとかですね。それがどうかしましたか?」

「……いえ、その……私の世界には魔法という物が存在しないんです」

「そうなんですか!?」

「何と!?」

「「……」」


 クレアさんとセバスチャンさんは驚いて声を上げた。

 ライラさんとゲルダさんはメイドの矜持か、声は上げる事はしなかったが、驚いた表情で俺を見てる。

 この世界にとってはそれほど魔法は当然のもので、それが無いという事が信じられないのかもしれない。


「ワフー」


 レオは自分に関係無い話しだからか、ソーセージをたらふく食べた満足感のまま床に丸くなって寛いでる。

 丸くなってと言っても体が大きいので、銀色のモコモコした物が俺の座っている場所の横に鎮座してる。


「……タクミさんの世界には本当に魔法が無いのですか?」

「はい。本等の物語の中ではありますが、実際に魔法を使えたりはしませんね」

「……そうなのですか」

「……では、魔法の説明もギフトと同様にした方が良いですかな?」

「そうですね、お願いします。俺にも使えるのか興味はありますから」

「魔法は誰にでも使えるものですよ。効果等、色々個人差はありますけれど」

「ほぉ」


 魔法は誰にでも使えると……。

 なら俺にも使えるかもしれない。

 小さい頃憧れた魔法が使えるかもしれないという事に、ワクワクして来た。

 っと、まずは魔法の事をよく聞いてからだ。

 もしかしたら魔法を使う事で何かしら不利益があったりするかもしれないからな。

 物語によっては何者かと契約して魔法のような力を使えるようになったが、色々なマイナス要素があるという話もあるしな。

 俺は魔法の詳しい説明を聞くために、説明したそうにウズウズしているセバスチャンさんに顔を向けた。

 ……セバスチャンさんって絶対説明するの好きだよな。

 さっきもギフトの説明は喜々として説明してたし、俺から見ても生き生きしてた、何歳か若返ったかのようにも見えたくらいだ。

 説明爺さんとかあだ名を頭の中で考えたが、さすがに失礼なので考えただけで終わらせた。


「えっと……魔法の詳しい説明、よろしくお願いします」

「セバスチャン、タクミさんに説明してあげて」

「はい、畏まりました。しかし説明出来るというのは良いものですなぁ」


 やっぱり説明好きだった!

 セバスチャンさんが満面の笑みで説明を始める。


「魔法というのはですな、簡単に言うと体の中にある魔力を使って行使するものでございます。この魔力は生き物であるなら誰しもが持つもの。魔力が無くなれば生きられないと言われる程のものでございます」

「魔力が無かったら生きられないんですか?」


 水分みたいなもんか?

 人間は水を飲まないと生きてはいけないのは誰でも知ってる事だが、それと同じようなものなんだろうか。


「はい。実際魔力が無くなる程魔法の行使を行った実験では、魔力が完全に無くなった人は死んでしまったとの結果が出ているそうです。昔の実験なので、現在ではそのような事は行われておりませんが」

「……そうですか」


 魔法を使い続ける実験で魔力を無くすとどうなるか試したのか……。

 人が死んでしまったって事は非人道的実験と言えるのかもしれないけど、結果そうだっただけで、危険な実験のつもりは無かったのかもしれない。

 もしかしたら、人が死ぬような事があったから実験が中止になったのかもしれないな。



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