第8話『必要物』

昨日戻って来たという先生が異世界部の顧問になった。

加奈さんと加代さん曰く戻ってきた瞬間に交渉し、死んだ目の状態で顧問を引き受けたそうだ。

そして、今日戻ってきたことが校長から発表するということで朝礼が行われた。


「えーっと大変長い間入院生活の末、何とか立ち直ることが出来たということで今日からまたこの学校で教師の方を務めて頂くことになりました。打田うつだ 影子かげこ先生です。先生皆様にご挨拶を」


と言って校長はマイクを恐る恐る影子先生に渡した。


「申し上げて頂いた通り今日から復帰させていただきます……今日からまたよろしくお願いします」


と簡単な挨拶をした。

俺は


「あの人って精神的に病んで入院って言ってたけど何かあったの? ここが実はブラックとか?」


と俺は健也に聞くと


「あの人は旦那さんを酒帯運転している奴に轢き殺されたんだ、助かると思ってずっと寝ずに病室で手術が終わるのを待っていたんだけど結果は残念なことに……そして肝心の犯人は殺すつもりはなかったとかなんとか言って有罪にはなったが2年の懲役刑だけでほとんどお咎めなかったんだ」


と教えてくれた。

俺はそれを聞いて本当にそんな事件が多いことに少し恐怖を覚えた。

人を殺しているのにもかかわらず軽い刑罰で済みその上、殺した相手はそれで終わりましたと言わんばかりに普通の暮らしに戻る。

どうして、こうも世の中は変なことばかりだと思った。

痴漢冤罪は厳しくするならもっとこういう刑罰も厳しく取り締まったらいいのではと子どもながら思ってしまう。

しかし、結局は俺のこの考えも子どもの意見であることと、ただの一般人のボヤキでしかない、そんな中で何も分かっていない人間の意見は取り入れられないのは当然である。


「ああ、本当に難しいよな……世の中は……正直あの2人が異世界に行きたい理由が分かってくる気もするよ……」


と俺は口に出して言った。

すると健也は


「止めとけ止めとけ、そう言うことに関しての状態はどこに行っても変わらんぞ? ファンタジーを求めるならともかくその法律方面はむしろ日本の方がしっかりしてるしな」


と言った。

俺は


「確かにそうだな、法律方面はさすがの異世界も難しいだろうな……差別とか普通にありそうだし」


と納得した。

すると


「まあ今いるこの世界で掴める幸せを噛みしめて生きろよ! そうやって小っちゃい幸せを掴むだけでもいやなことを忘れれるからな!」


とTXO型-12は加代さんの肩から出てきて言った。


「シ―!!」


と加代さんはTXO型-12に言った。


「そこうるさいぞー!」


と先生に叱られる。

そして、朝礼が終り


「ええっと、そういうことで影子先生はうちの副担任になった、よろしく頼むな、影子先生」

「はい……よろしくお願いします」


と言って少し静かに言った。

健也と来栖は


「「前はもっと明るかったんだけどなあ」」


とつぶやく。

清吾は


「まああの犯人は俺が生放送取材で俺と共に今も尚炎上中だから少しは償ってんじゃねえの?」

「ナイスだ」


流石の俺もその言葉にスッキリした。

たまにはこいつもいいことするなと思った。

すると


「てか君? どうやって取材したんや? 犯人は今も牢屋ちゃうん?」


と聞くと


「仮釈放って知ってる?」


と答えた。


「ケケッケ、刑務所調べてそこで張り込んだ甲斐があったぜ……クケケケケ、あの時は良い伸び率だった!」


と嬉しそうにしている。

俺は、こいつを敵に回してはいけないと思った。

そして、授業が終り再び放課後


「また行くのか? 異世界部?」

「ああ、お前も……来ないでくれ」


清吾を誘うのは俺自身が嫌であった。

清吾は


「俺も炎上に忙しいからな……さすがに部活は出来ねえ」

「先生はどうしてこいつを縛らないんだろうか?」


と健也は不思議そうに言う。

清吾は


「なら来栖を止めろよ、あと異奴の方だろ?」


と言った。

俺もそれには同意した。

どうせ炎上は止めようがないし。

そして、


「お前らはよ来いや!」


とTXO型-12は怒鳴った。

俺と健也は部室に向かった。


「では、今日はどうするんだ?」


と顧問の影子先生が言った。

加代さんは


「マンドラゴラ探す!」


と言った。

俺は


「それって、なんか薬って聞いたけど転移に何か関係が?」


と聞いた。

すると


「たまに向こうの薬がこの世界に生えていることがある。例えば聖遺物とかそういう物なんかが多いからそれを伝って異世界へ門を開けると思うの!」


と言った。

そして加奈さんは


「私は高圧電流とかかな?」


と言った。

俺は


「それって……やっぱり時空に穴を開けるため?」


と聞いた。

すると


「体を転移させるのにはエネルギーが必要だから」


とおそらく穴は開けるがその後どうやって行くかも考えているようだ。


「もし、自分を保護する物が無いと移動途中で死ぬ可能性も否めない、だから慎重になった方がいいの、例えばそれを防ぐ乗り物を用意とか」

「タイムマシーンみたいなのを作ったり、宇宙船を作ってワープしたりとか?」


と確認すると


「そんな感じ!」


と言った。


「まあそれぞれのやり方は分かった。取り敢えず物を揃えよう」


と言って、分担で物を買いに行った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

科学か魔術、どっちで異世界行きたい? 糖来 入吐 @pura32

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ