第180話 膨張するダンジョン


 祠を進んでいくにつれて分かれ道が増えてくる。


 元は一本道だったはずだ。


 しかし、今までは複数の分かれ道を通過してきた。


 ダンジョン化が進んでいる証拠……僕は足を止めた。


 「どうしたの?」とキララ。


 「風がある。分かれ道の先には、外につながっている箇所があるみたいだ」


 「え? それってヤバいない?」


 「うん……まずいな」


 生まれたばかりのダンジョンが広がり、一部が外とつながった。


 それは誰も知らないダンジョンの出入り口が生まれたという事だ。


 魔物モンスターがその場所から外に出ている可能性がある。


 そして、その付近に住民がいるかもしれない。


 「この先いる魔物は……やっぱりゴブリンか。10……いや、11匹だな」


 僕は、先にいる魔物の数を正確に数える。


 キララは、それを不思議に思ったらしい。


 「どうしてわかるの? 索敵系の魔法を使用している感じでもないけど……」


 「あぁ、索敵系魔法は常時展開が必須で燃費悪いから、僕は使わないよ。魔物の数と種類がわかるのは単純に臭いさ」


 「に、臭い? ゴブリンの臭いがわかる?」


 「そりゃ、普段なら無理だけど風上だからね」


 ん?なにやら、女性陣が集まって内緒話を……


 「これから風上でサクラさんの前に立たないようにしましょう」


 「うん、臭いを嗅がれるはちょっと……乙女のアレが……」


 「お父さん、さすがにキモい」


 「……聞こえてるぞ。おい!」



 ・・・


 ・・・・・・


 ・・・・・・・・・


 「それで、ゴブリンはどこに隠れているのですか? 臭いセンサーことサクラさん?」


 「臭いセンサーなんて二つ名を持った記憶はない。ちなみに、あそこの岩と天井に張り付いている」


 そうドラゴンに支持を出した。


 「はいはい!」と前に出るとゴブリンが反応するよりも早く、素手で殲滅していった。


 ドラゴンなら、索敵系の魔法ぐらい持っているのではないか? そう思って聞いたみたが、保有してないと返事が返ってきた。


 「真の強者である幻想種類はダンジョンの真ん中で昼寝してても、襲ってくる敵はいないので防犯意識は欠如しやすいのです。困ったものですが、生まれ育った環境の問題は改善が難しくて困りますね」


 「そんな、留守中でも家に鍵をかけない田舎系みたい感じで言われても……」


 そんなこんなで、ダンジョン内に風が入ってくる場所にたどり着いた。


 「これは思ったよりも大きいな」


 そこは、誰がどう見てもダンジョンの出入り口だった。


 外には森が広がっている。


 分かれ道で11匹のゴブリン。祠に入ってから遭遇したゴブリンの総数は3桁を軽く超えている。


 「もう、かなりの数が外に出ているかもしれないな。クリムとキララは集落が近くにないか調べてくれ。手遅れかもしれないが、無事なら避難勧告を頼む」


 「わかった。お父さんは?」


 「ここを破壊して、内部へ進む。他にも出入り口が生まれる前にダンジョン化の原因を取り除く」



 クリムは何か言いかけたが「うん、わかった」と駆け出した。


 「師匠、待ってください」と後ろからキララが追走した。


 「……それで私は何をすればいいんですか?」


 残されたドラゴンがいう。


 「2人を行かせた理由はわかっているだろ?」


 「ええ、わかってます。 夫のために働く妻のポジションもありですから」


 爆風


 魔法? 無詠唱のソレを近くできたのは、ドラゴンの魔法が発動した直後だった。


 天井が崩れ落ち、出入り口が封じられた。


 「それに新参のラスボスがいるとしたら……久々にガチンコ、セメント、シューティング、遊びなしの格付けマッチ。格を競わせるから格闘技とは誰の言葉でしたかね? 所謂、わからせに来たというやつですよ!」


 ドラゴンのボルテージが最高潮だった。


 

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