吸血鬼ドラキュラ


 あらすじーーーー


 イギリスの弁護士ジョナサン・ハーカーはトランシルヴァニアの貴族ドラキュラ伯爵の商談の招きによりドラキュラ城へと向かう。道中、ドラキュラ城へと向かう事を人々から止められ嫌々ながらも十字架のロザリオを地元住民から受け取ったジョナサンはドラキュラ城へと辿り着いた。目の前に現れたドラキュラ伯爵は白髪混じりで異様な白い肌と赤い瞳の不気味な老人であった。気味悪く感じたジョナサンであったがロンドンの土地を購入したいというドラキュラ伯爵からロンドンの話をせがまれる。ドラキュラ伯爵の態度はあまりにも尊大であり何日か城に泊まることを強要されるが、ジョナサンは仕事と割り切った。だが、一日、また一日と経っても伯爵は城から返してくれる気配は無く。ジョナサンは伯爵に監禁された事実に気づき伯爵の願いに背き脱出の行動を取るが……。

 身の毛よだつドラキュラ伯爵の狩り場を求めるロンドン移住計画が静かに動き出す。



「吸血鬼ドラキュラ」は「魔人ドラキュラ」で申しましたが1897年に作家「ブラム・ストーカー」が執筆出版したホラー小説であり、後世の吸血鬼のイメージを人々に植え付けた不朽の名作ですね。当時のロンドン市民はこれを読んで恐怖に震えたそうな。

 僕は入院前に魔人ドラキュラを観た後に入院中に知り合いが貸してくれて初めて読みました。2014年の一番新しいやつです。

 あと、ちょっと小説の序盤を読みながら書いたあらすじがあまりよくないかも知れませんがお許しを。


 物語は1897年当時の現代が舞台になっており全編が登場人物の書いた日記形式で進んでいく小説としては珍しい手法を使っていて興味深かったです。あとがきによると当時の流行りの小説スタイルだったのではという事。タイプライターが重要なアイテムだったりするのもまた時代を感じさせますね。

 100年以上前の小説のせいか結構描写があったり無かったりと淡々と、または良い意味で大ざっぱに物語が進んでいきます。古典ホラー小説ではあるのですけど、正直怖いとは思わなかったです。いや、実際えげつない事をドラキュラ伯爵はおこなうんですけど、伯爵は(使用人さんはいないらしく)ジョナサンの食事の準備やベッドメイキングを自らおこなったり、弱点などサラッと露見したり意外と抜けてる部分が多いんですよ。鏡に映んないのにお城のジョナサンの部屋に鏡があったり「こんなものがあるからいけない」と力技で窓から外にぶん投げて鏡処分するんですよ。吸血鬼にした配下らしき美女三人もそれほどゆう事聞かなかったりね。しかし、知らなかった特殊能力は凄かったですね。隙間があったら向こう側に入れるんですよドラキュラ伯爵。鍵穴に指突っ込んでスルッとね。説明なんて一切ないです。蝙蝠や狼に変身できるんだからまぁ、説明求めるのも野暮なのか?

 あとね、血を吸われたらすぐに吸血鬼になるわけではなく結構手間がかかるみたいですね。大量の血を吸って相手が死なないとダメなようで、噛まれても生きてるうちは日の光を浴びても大丈夫。なので助けるために男達が代わる代わる自分の血を輸血するドラキュラとの攻防戦が中盤の見どころにもなってます。ですけど、ぇ、そんなポンポン輸血して大丈夫って思っちゃいますよね? あとがきによるとどうやらこの時代は「血液型」が発見されていないか、一般には知られてなかったようで現実に輸血事故で亡くなる方も多かったそうです。物語にもいちかばちかの賭けという悲壮感が現れてます。



 ドラキュラ以外の登場人物がメイン主人公らしい「ジョナサン・ハーカー」です。魔人ドラキュラでは「レンフィールド」という人物がジョナサンの役割りでした。一応、魔人ドラキュラにもジョナサンはいますけどあまりパッとしないキャラでしたね。セリフの大半が「ミナ!」だったような。レンフィールドも小説にもいますけどこちらは精神病棟の老人です。魔人ドラキュラでも途中から病院行きになります。どっちも砂糖を使ってハエやクモを捕まえて食べる奇行が印象に残る重要人物です。と、話をジョナサンに戻しまして、前半は彼のドラキュラ城での精神に異常をきたす恐怖体験が事細かに描写され、書き記しておいた日記が勝利の鍵となるわけですが、ジョナサンよりも彼の婚約者「ミナ」の方がなんか主役っぽく感じてるところが多いです。実際ミナも主役のひとりなんでしょうけど心が強く女性としてのカッコ良さが目立ってました。対ドラキュラ戦のヒロインでもあり、男性陣から尊敬と信頼が厚い。恐らくドラキュラ伯爵の誤算は彼女の存在と特技のタイプライターではなかろうか。その他にも「セワード医師」を始めとした「ルーシー」という女性に求婚した「ゴルダミング卿」「キンシー・モリス」等が登場します。彼らがまた親友同士ってのがまた。

 そして、彼らを導く「ヴァン・ヘルシング教授」ですね。ヘルシング教授は原作小説でも目立つ、というか、クソジジイっぷりが凄いです。葬儀の席で情緒不安定に笑ったり怒ったりしますからね、んで、割りと理由を話さない行動とかサラッと下世話なヒドイこと言いますからね。


「教授! それはさすがに酷すぎますやめてください!!」

「酷いと思うかね? だが謝らない!!」


 的なのが結構多かったり事前に説明しておけばな場面も多いけど、ちゃんとカッコいい場面もありますよ。罰当たりな行動を率先して行ない吸血鬼の生態を教えたり、伯爵のリスポーン地点等を地道に聖餅で潰したりね。性欲に正直で最終的に好感の持てる……かな?

 うん、この感想だとヴァン・ヘルシングのファンに殺されそう。


 で「吸血鬼ドラキュラ」を全部読んだ最終的な感想は


「ぇ、伯爵あっけねぇ……」


 本当に映画も小説もこの一言です。はい。

 特に小説。ぇ、嘘でしょって、スピーディーな展開で決着です。


 最後に。人によっては感じ方ちがうかも知んないし、僕もまた読み直したら感想が変わるかも知んないですけど、吸血鬼ドラキュラが歴史に残る名作であることは待ちがいないと言えます。まだ僕の脳みそが理解しきれていない魅力が伯爵の棺のように作品の中に眠っているかも知れません。










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