魔獣掃討、気張った3年

 早いことで異世界に来てから3か月が経過した、その間俺がやったことと言えば、魔獣退治を命じられ各地を飛び回りまくった、帝都に帰った試しもない。しかし、どうやら俺の噂は王都やその周辺の町や村に広く知れ渡っているようで、べらぼうに強い女神の勇者と言われている、武器は木刀一本だというのにそれだけで100の戦果は当然、3日もすれば周囲の魔獣はさっぱりいなくなるだとか、買い被り過ぎだろう


 まぁ実践に出るのを渋ってた組もようやく覚悟とか訓練とか終わったみたいで見かけるようにはなった、大体は5~6人でチームを組んでるようだ、俺? 俺の女神の力は一人でいる時が一番力を発揮する能力そのものなので基本一人だ。

 ちなみに今日は狼の群れを殴り殺してきた、数ばかり多くて歯ごたえは無かった。


「今日もお疲れ様です清孝様! 将軍殿から辞令をお預かりしてます、どうぞ」

「また、転戦ですかい、噂は聞いてますよ、将軍様達に使いまわされてるって」

「文句の一つでもいったらどうです? もうちょい休憩の暇くれとかさ」

「帝都にも戻ってないんだろ、きっと、陛下や宰相閣下も心配してるだろ」


 兵士の一人が一枚の書類を俺に手渡す、次の魔獣の出る地域への辞令か。

ここから馬を走らせて3日かな、俺も転移魔法の魔法水晶が使えればな、ま、ないものねだりはみじめか


 兵士の何人かは俺を気遣ってくれる、この心遣いにいつも助けられている。

現地にいる兵士達が今まで魔獣と戦ってきて得た知識やノウハウは俺にとって重要な情報だ、仲良くなって色々聞き出す、中には俺の戦いぶりから疲れてないかなどとこうして心配してくれたりするのもいる。とても嬉しいものだ、しかし別にいいんだ。

 俺が戦えばその分多くの村や街、人が助かる、それに俺は基本無傷で帰還出来る。

誰よりも沢山戦えるし一番戦果を得ることが出来るなら戦うべきだろう。


 さてと、早速次の戦地に向かいますか、一頭の馬に飛び乗る。この3か月で随分と乗馬も上達したという物だ、ちなみにこいつは近隣の村がお礼にと渡してくれた馬。

名前は晴天号、貰った日が雲一つない日だったから晴天号だ。

よし、出発次の戦地でもやってやる、俺ならそれが出来る!


 6か月が経過した、季節は既に冬となりつつある現在は雪原と化した地帯に駐屯している、小倉がトレンチコートを用意してくれていたので現在はそれを装備してる。

 上着も防寒性の高い物を誂えてもらった、小倉様様だ、それでも寒いがな!


 魔法が効かないつっても、雪の息吹とか気分的に寒いわ、あのライオンめ俺がいるのかいないのか知ってか知らずかそこら中吹雪で雪をばらまきやがって! つか、俺にかかってくるまでは思い切り魔法の効果あるからな、温度は下がるわな、思い切り頭蓋勝ち割ってやったわ、ライオンの頭蓋勝ち割る高校2年生ってやばいよな

 

「清孝様、今日もお疲れ様でございます、暖房の前にどうぞ、身体を温めるように」

「清孝さん! こっちきて鍋つつきません、村民の方が野菜譲ってくれたんです」

「今日はもうラジオ聞きながら休みましょうや、これから吹雪になりますよ」


 あれから各地の兵士で俺を知らないという奴はいなくなっていた、ここ半年ずっと戦い続けてきた、戦果を数えるのもそろそろきつくなってきたので、もう数えてない

他のクラスメイトも奮戦しているという話を兵士から聞く、この調子なら後数か月で国内の魔獣はほぼ掃討することが可能だろうとも。


 更に3か月この異世界に来てから9か月が経った、先月から春模様が続き過ごしやすくなったという物だ、しかし兵士達は明るい顔をしていなかった。

ここ最近また魔獣が活発に活動し始め発生するようになった。

 熊の魔獣には数人が大怪我、死者も出たという報告が出ている。

慌てて飛び出して倒したが数名の犠牲を出した、俺の落ち度でもある。


「ちくしょう、ようやく終わると思ってたのに」

「魔獣も寒さで冬眠なり活動が鈍ってたんだろうな」

「清孝さん、帰還したってのに出撃させてすみません」


 魔獣に悪態をつくもの、冷静に状況を分析する者、俺に援軍の礼をするもの。

その誰もが悔しそうな顔を隠すことが出来ていなかった。周辺の村にも被害があったという報告も上がってる、更にペースを上げて戦う必要があるな。


 12か月、とうとう1年が経過した、魔獣との戦いのペースを上げた俺は更に戦果を挙げる速度を加速させた、他の女神の勇者も最近は目に見える形で戦果が上がったとか、更には王国の兵士達の戦果も上がり、だというのに怪我率は下がったとか。理由は簡単だった。


「この魔法銃ってのは凄いな、魔獣の頭が簡単に吹き飛んじまったよ」

「防具も凄いぞ、魔獣に吹き飛ばされたんだが、無傷なんだよ」

「すっごい音がしたがな、べきべき何かが折れる音が、そういう防具なんだってな」

「もっと早くに有ればなぁ、帝国は軍事技術にもうちょい金かけるべきだろ」

「まぁともかくこの武器と防具があればやれるぜ! 帝国兵士の意地見せようや!」

「「「「応!」」」」


 小倉が作った装備に似た銃や防具を帝国兵が装備していた、聞けば女神の勇者の一部もその銃を装備していたり、防具に至っては全員装備しているとの事。因みに俺もここ最近は使ってたりする。使い慣れるとこれが剣よりまぁ強い。

弾丸が切れたら相変わらず木刀に頼るのだが。


 そんな武器を提供してくれた小倉は帝都には戻らず、湿地にいる他種族の元で兵器を想像しその他種族の下で生活を共にしてるそうだ、更にはそれらの技術を帝国にも提供し帝国は独自の技術も組み込んで銃に似た最新兵器として魔法で動く銃を作ったそうだ。兵士にも希望が湧いてきた、このまま女神の勇者だけでなく兵士の俺達も戦果を上げれれば、きっと数年以内に魔獣を掃討できるぞと。


 そうして3年の月日が経った頃、王国の村や街周辺から魔獣はその姿を消した。

しかし、問題は次から次へと起きるのだった。


「魔獣掃討ようやく終わったか、長かった、これでお袋の所に帰れる」

「俺も前から無事に娘が生まれたって手紙があったんだ、抱いてやらねぇと」

「俺も弟と妹に無事な姿を早く見せてやりてぇなぁ」

「緊急指令だ! 他種族と貴族の間で紛争が起きた! 援軍に向かえとさ!」

「「「はぁ?」」」

 

 その報告に兵士一同は声を上げる、俺も声を上げそうになったが緊急指令なら仕方ない、晴天号を走らせ、紛争が起きた地帯へと向かうのであった。

 どっちに援軍に入ればいいかは聞きそびれたな、まぁ、向こうに行けば分かるか。

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