紛争平定、4年の頑張り

 魔獣掃討が終わったと思ったら、今度は王国近隣に暮らす他種族が貴族に向かって非難および宣戦布告をかましてきやがった、その報告を受けた俺は貴族領に向け馬を走らせる。貴族領では既にその私兵たちが陣を築いて他種族とにらみ合いが始まっていた。


「あ、清孝様! 参陣感謝いたします、現在は他種族と膠着状態」

「しっかしなんだって、落ち着くって所にいきなり」

「わからん、だが別の場所でも貴族領なんかが他種族に襲われてるそうだ」

「厄介な事になんでか魔法銃や魔法装甲とか武器防具がそろってるんだ」

「そりゃ変だろう、だって他種族への武器防具の配給はしてないはずだぞ」

「ええいとにかくやらにゃやられる! 生き残るためだ! やるぜぇ!」


 兵士たちは現状の把握に大急ぎ、訳も分からないながらも生き残るため必死に戦うことを選んだ、勿論俺だって何もしないという選択肢は選ばない。 確かに魔獣掃討だけが女神の勇者の役割それ以上はやらなくとも構わないかもしれない。だが俺はもうこの国の一員だそれに頑張っている兵士達を一人でも多く守りたい。

 戦場へ飛び出す、俺に魔法銃は効かない、あれは弾丸の形にした魔法を飛ばすタイプと本来火薬で出す推進力を魔法で代替し弾丸を飛ばすタイプがあるが、他種族の持つものは弾丸の形をした魔法を飛ばすタイプであった。 


 そうなれば真正面から突っ込んでもノーダメージ、敵陣の中央まで駆け敵兵に近づき木刀でその腕をへし折る、他種族の多くは人間と骨格や内臓も酷似している、魔獣よか柔らかいというものだ。数百人の腕や足、あばらを木刀でへし折ってやる、うずくまり再起不能にさせるのだ。死体よか負傷者の方が戦いには邪魔になると聞いたことがあるからな。この調子でガンガン攻めあがっていくぞ!


「おお、女神の勇者様はさすがだな、あの銃弾の雨を突撃するとは」

「そうか、魔力ゼロの清孝様なら銃弾もものともしないのか」

「よし、清孝様に続いて盾を前にして突撃! 俺達も負けてられないぞ!」

「「「応!!!」」」


 俺に続くように兵士達も続いてくる、敵も勢いに負け撤退を始めていく。

負傷者も多い、ここの紛争は後は兵士達に任せておけば平定するだろう。

別の場所でもこれが起きてるとなれば急行するべきだな。

隊長格の一人に別の紛争が起きている貴族領へ向かう事を報告して馬で向かう。


 各地を転戦するのが日常と化してきた紛争勃発から数か月。

いくつかの紛争は収まり始め、捕縛した他種族から聞き出せば。

帝国から独立し国を立ち上げる為自分たちの領域を広げる為が大半であった。


「帝国から独立って、自治権が与えられてるんだからほぼ独立してるもんじゃんか」

「いや、自治権を認めてはいるが、国の勅命次第で兵や食料の提供を行わないといけないからな、それらを嫌っての行動というなら納得できんが飲み込める」

「そのために、昨日はあいつが死んだんだ、この戦いつまで続くんだよ」

「清孝様まだ夜ですよ、立ち上がってどうしたのです、まさか!?」


 夜になり、兵士達は焚火を前に戦争理由について語ったり、戦に辟易する。

魔獣と戦うよりもその被害はかなりの者だ、なまじっか知性がある分なのか。

他種族独特の特性を生かして有利な状況や戦場に持ってこようとする。


 だが、他種族の中にはその特性ゆえで不利な状況も存在する。

それが今回のような夜に仕掛けられる夜襲、夜目が効きにくい種族は魔力感知で周囲警戒を行う。それなら俺は楽勝で決めることが出来る、実際この紛争地帯では一人で夜襲を仕掛けて他種族たちに負傷者を出してきた

まあ、魔獣と違って反撃されるので最近はケガや傷も増えてきたが。


「今日もお疲れ様です、すぐに衛生兵を呼びます、そちらでお休みに」

「清孝様、余り無茶しちゃいけませんよ、あんたの体はあんたのもんだ」

「だが、清孝様の奮戦で各地の紛争の被害は減少傾向にあるんだよなぁ」

「それに最近では前線を離れていた女神の勇者達が援軍に入ったとか」

「ようやくか、強くは言えないが、もっと早くに参陣してくれていれば」


 他種族との紛争は激化の一途を辿っていた、最近では他種族に俺の名前と能力も伝わっているのか白兵戦で戦い始める他種族も多い、生傷の絶えない日々だ。

 魔力ゼロには回復魔法も増血魔法も効果がないのが恨めしいが、俺の回復力は普通よりも高いらしい女神の力でも働いてるのかね? まあそれなので短いスパンで回復し終えるのですぐ別の紛争地帯に転戦だ、一日でも早く終わらせて見せる。

それに最近ではクラスメイトも前線に参戦しているという報告を聞いている。


 数名は紛争初期から参戦していたが、こうして全員が参戦し始めたのはここ最近との事。これなら思ったより早く紛争も片がつきそうだ、俺もやってやらなきゃな。


「もう3年か、母ちゃんの作った飯が食いてえなぁ」

「文句言うなよ、清孝様なんて聞いた話じゃもう6

年は戦場なんだぞ」

「でもよぉでもよぉ、携帯食料と水とか味気ないぜ、ねぇ清孝さん!」

「最近はどこの村も紛争や魔獣騒動のせいで食糧不足だしな」


 気づけば3年が経っていた、もう戦場に立ち続けて6年か、母ちゃんの作った飯。

俺も恋しくなるよ日本の飯が。白い飯にあったかい味噌汁母さんが作った特製肉じゃが思い出したら泣けてきた、母さんも父さんも元気にしているといいんだが。


 残る大きな紛争地帯は小倉が住んでいるという湿地帯と聞いている、彼らは帝国ではなく湿地帯全域を独り占めしようとする種族で、小倉が協力関係にある他種族達は独立は特に考えておらず帝国と協力し現在平定を急いでいると聞いた。


「悪い報告と良い報告が上がってるどちらから聞きたい?」

「良い話からお願いします、つっても予想はつきますけどね隊長」

「湿地の他種族が完全に沈黙した、ひとまず他種族紛争が全て収まった」

「よっしゃよっしゃ! わかりきってたとは言え、報告として聞けば嬉しいもんだ」

「隊長悪いニュースってのは何ですかー」

「信じがたいが、イスラル公国が宣戦布告をしてきた、帝国を納めるのは自分だと」

「「「はぁ!?」」」

 

 もう1年が過ぎた頃、とうとう紛争自体は終わった、しかし災難はまだ続くようだ

 兵士達は悪い報告を聞いた瞬間、かつて4年前、他種族紛争が起きたとき見たことあるリアクションを取る、そしてこれが8年に渡る。未来まで語られる大陸で起きた最大の大戦、ジークハルト帝国とイスラル公国の戦争の始まりだった。

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