信仰の光

春風月葉

信仰の光

 太陽だけを信じていた。

 それだけが全てだった。

 眺める先の温かな光はどこまでも自分達を大きくしてくれると信じて疑わなかった。

 私達は大きな黄色の花を太陽に向け、高く、高く背を伸ばした。

 太陽は変わらず眩しい光を放っていた。

 私達はその姿を変わらず眺め続けた。

 しかし、ある夏の日に私達の信仰の光は私の友を焼き、隣人を焼いた。

 一面に広がっていた向日葵達の黄色は焦げた土色の大地には黒くなった皆の亡骸が倒れていた。

 残された一輪の私はそれでも太陽を信じ続けた。

 足下の彼らも太陽を信仰し、太陽に焼かれたのならば幸せだっただろうと私は考えたのだ。

 やがて私は気がついた。

 徐々に枯れ、朽ちてゆく自分に。

 太陽が私を焼いていることに。

 私は考えた。

 きっとこれは救済だ。

 私が美しい向日葵でいられなくなる前に、太陽がこの身を焼き消してくれるのだと。

 私は太陽を信じ続けた。

 変わらず太陽の光は私には眩しすぎた。

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信仰の光 春風月葉 @HarukazeTsukiha

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