巨魚名鑑⑥

〈ダイヤモンド・フューラー〉

 最大全長:約200メートル

 パルス器官:(後述)


 北極圏に君臨していた超大型のクリオネ。

 より厳密な定義で言うならば、ダイヤモンド・フューラーは実は巨魚ではない。

 パルスへの適応進化を遂げた単一のクリオネ、いわば『巨魚級生物』である。

 フューラーはこの世にたった一匹しかおらず、また、進化の過程において生殖機能が失われたため、増えることもない。


 巨魚ではないことの根拠は、フューラーがパルス器官を持たないことにある。

 フューラーの性質は、『パルスを吸収・蓄積し、それを扱う』ことであり、自身のパルスを生み出す機能は持たない。外側からパルス器官に見えていたものはパルスを溜め込むために発達した胃袋の一種、いわば『パルス袋』で、この胃袋の無尽蔵とも呼べる異常な貯蔵量こそが、フューラーを北極圏の支配者たらしめていた。さらに、溜め込んだパルスは新陳代謝を限りなく静的に変え、長大な命を与え、実に110年の時を生き永らえさせたのである。


 フューラーが王位種であるはずのレックスを攻撃対象に加えたのは、彼の傷口から体内を巡る王位種たちのエネルギーに反応したためであり、また、王位種が北極圏に干渉しなかったのは、巨魚でないフューラーを王位種は制御できないため。結果的にレックスは、フューラーの存在によって追っ手を免れたとも言えるだろう。


 今回はチャナ・アクトゥガの希望により、余計な追記はしないものとする。

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