巨魚名鑑④

〈ミリオナ・カウア〉

 最大全長:約30~70センチメートル

 パルス器官:有


 マウナ・ケア上陸戦において大量に押し寄せた上位種の巨魚。魚としての外見的な特徴はイワシに似る。

 ハワイ語で『百万人部隊』の意を取るこの巨魚は、基本的にはマウナ・ケア周辺でのみ見られる群体型の巨魚で、特徴や基本的な生態そのものは数ある群体型の巨魚と共通している。「小さいために力が弱く、群れの総合力で身を守る」「主たるボスがいないために一点狙いができない」などがこれにあたる。

 本種ならではの特性は、本編でも発揮された水を接着剤とする『合体』であるが、実はこの特性は最初から持っていたものではない。マウナ・ケアの発足当時、木材で水上の足場を組む人間の行動を模倣したことが始まりであり、生物兵器であることが判明した巨魚の人工的な基礎知能を証明する事実と言えるだろう。

 本種は、巨魚としては珍しく一匹単位においては調理法が確立しており、塩焼きが美味であるとされる。ただし手順を間違えた者はキッチンの大部分を失うだろう。



〈カナロア〉

 最大全長:約330メートル(※頭頂から触腕まで真っ直ぐに伸ばしたとき)

 パルス器官:複数個を有する


 マウナ・ケア火山に100年間以上潜んでいた、超々大型のタコの巨魚。

 まず特筆すべきはその巨大さで、触腕を寝かせた頭のみの計測すら100メートルをゆうに超える。なおかつ、自分の体躯よりはるかに小さい火口の中に全身で潜り込む優れた柔軟性を持ち、休眠中はその存在さえ住民に気付かせなかった。

 作中においては体内にマグマを含み高熱を放っていたが、実のところ本種は付近の液体を無作為に取り込むものに過ぎず、マグマを用いたのはあくまで棲息環境による偶然に過ぎない。むしろ、重量のあるマグマを取り込んだことで遊泳性能が低下し、弱体化していた可能性すらある。

 巨魚が水棲を前提とした生物兵器であることを考えると、本種は周囲の海水を巨魚ごと体内に収めて移動する潜水空母のような役割を果たしていると思われる。

 確認が世界初のためデータはないが、この巨魚を食用にしようと考える者がいれば異常と言わざるを得ないだろう。

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