幕間『聞こえぬ声』




 そして。

 青い光も眠りの刻に消えたあと。


 その声は、月のない夜に響いていた。




「――――――――――――――――――」




 人間の可聴域にない波。

 話しているのか、歌っているのか。

 それとも、水に溶けるように泣いているのか。


 


 影は深く、表情は知れない。

 それでも、そのシルエットが物語る。


 


 人類が下半身と呼び習わす場所には、魚の尾びれが踊っている。




「―――――――――――・・・・・・・・・・・・・・・・・・」




 声の主が顔を上げる。

 何かを見つけたようだ。




 水面を刺して、冷たい酸素に身を晒す。




 




 ―――月光の道を閉ざした巨大な鉄塊。

 その国は、海行く意思を運んでいる―――。




            




 ≪次章『海行く国の少年』へ続く≫ 

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