第13話 勇者

 なんか書きにくいし、この書き方やめるか。

 会話のほうがまだしっくりくる。



 * * *


 ついにこの時がやってきた!

 おれは喜びを隠しておくことはできずに、鼻息が荒くなってしまっていた。


 この世が『幻獣王』によって征服されそうになっているという話は聞いている。

 そして、幻獣王とおれの祖先には深い因縁があることも。


 幻獣王の一族が狂うたびに人間の生活はおびやかされてきた。

 その際に剣を持ち、討伐に立ち上がったのが『勇者』……おれの祖先だ。


 勇者は単独で強大な戦闘力を持つため、平時はひっそりと暮らさなければならなくて、おれは幼少のころにそれを聞いてからいつか絶対に大冒険をしてやると胸に秘めていたのだ。


 そして、先ほど。

 この世でいちばん偉い城主の王様から、直々に幻獣王討伐の許しがでた。

 というか懇願された。倒してくれと頭を下げて願われた。


 これで心置きなく大冒険ができるというものだ。

 いままでのように力を隠してこそこそと生きるような真似をしなくていい。

 自由に世界を回っていいのだ。

 凶悪な魔物たちと思う存分に力比べをしてもいいのだ!


 なんて素晴らしい世になったのだろう……。

 人間を滅ぼそうと狂ってくれた現・幻獣王に感謝しなくてはならないな!


 ……あれ、でもやっぱり勇者っていないほうがいいのでは?

 世界が荒れ果てそうになっている時に必ず勇者が立ち上がるんだよな?

 災厄の象徴みたいなもんじゃないか?

 いま活動しているってことは世界が荒れているってことじゃないか?

 そのくらいはおれでも考えつく。


 ど、どうなんだろう。

 これも冒険の目的にしようかな。うん、そうしよう。

 立ち寄った街で「勇者って必要だと思う?」って聞き回るんだ。

 どんな答えが返ってくるかな。


 なんにせよ、楽しみだぜ!



検索単語

※因縁

※災厄

※城主

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

キャラクターの練習 水嶋 穂太郎 @MizushimaHotaro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ