第11話 なかよし
高校1年生の初夏。
おれは幼馴染みの女と一緒にいた。でもべつに仲良しというわけではない。
なぜならこのような会話をするからだ。
「ねえねえ、あんたっていまどんなパンツ穿いてるの?」
「はあ?」
いきなり直球で聞いてくる女である。遠慮もなにもあったものじゃない。
好きではないが、嫌いでもない。
ちなみに現在の場所は、幼馴染みの自室である。休日の真っ昼間なのだが、呼び出されたのでとりあえず来てみた。
「彼氏ができた時の参考にしたいのよ」
「そういうことか。紺色のトランクスだ。ゆったりめのやつ」
「どうしてそれにしたの?」
「色は好みだな。ぴちぴちのは締め付けられる感がするから穿かない」
なるほど、と納得した様子で頷く幼馴染み。
他にも持っているパンツについて色々と聞かれた、って。
あれ? おれにも聞く権利があるのではないだろうか?
「なあ、おれからも聞いていいか?」
「なにかしら?」
「おまえいまどんなパンツ穿いてるの?」
「気になっちゃうんだ?」
「先に聞いてきたのはどっちだ……」
「それもそうね。ふふっ、薄桃色で絹地のやつよ」
「それはなんでだ?」
「薄桃色は女子受け男子受け万能だし、絹地は肌との感触がいいのよ」
さっぱりわからん。
が、こいつがいつパンツを見られてもいいようにしていることはわかった。
幼馴染みはおれをじーっと見ていて……それは、突然だった。
「彼女できた?」
ぶっ。
飲んでいたジュースを噴きそうになった。
できていたら休日の昼間におまえと一緒なわけがない。
わかっていて聞いてきたようで、幼馴染みはにやっと笑った。
はっら立つぅ……。
はっ、待てよ!!
ふっふっふ……墓穴を掘ったな!!!
「そっちこそ彼氏できたのかよ?」
どうせなにも進展していなくて、泣きついてくるに決まっている。
が、なぜか幼馴染みは気まずそうに、もじもじしやがった。
「えへへっ……」
なにその余裕!
まさか……できちゃったの!?
先を越された!?
「ぷっ、あっはっは、なんて顔してんのよ!」
「へっ? べ、べつに普通だぞ!」
「うそね。でもわたし、近いうちに彼氏を作ろうとは思っているの」
「そ、そうか」
つまり、いまはいないということか。
ふう、先を越されたかと思って焦ったぜ。
ん? 焦る?
おれは何に焦ったんだ?
答えが出ずにもんもんとしていると、幼馴染みが口を開いた。
「だからね、男子についてよく知っておこうと思ったの」
「おれで参考になるのか?」
「さあ? でも何も知らないよりはいいと思わない?」
「それもそうだな。よし、おまえのことももっと聞かせてくれよ」
そうだよな。
おれにだっていつ彼女ができるかわからないんだ。
身近な相手で慣れておくのは決して悪いことじゃない。
好きでもなければ嫌いでもない。
ほどよく仲がいいからこそできることだ。
「じゃあいままで隠していたわたしのこと、もっと教えてあげるね」
「なんか言い方が変だぞ」
あら、そうかしら。
幼馴染みの女は怪しげに笑ったのだった。
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