第3話 たくましい・改その1

『第2話 たくましい』の改良版、その1です。

 主人公に対してネガティブな印象を持たせてはいけない。ポジティブな印象を持たせましょう。ということで、若干の直しを入れました。


 いっちばん最後の数行が変わっています。

 印象がよくなっていればよいのですが。


 * * *


 これはおれの友人の話だ。

 ちなみにおれたちは高校三年生。


「マサトくんさあ……高校生で独り暮らしってマジでできるの?」

「あ? できるできる。余裕だぜ!」


 友人はひょうひょうと答えた。


「お金は?」

「ん、家賃でほぼ消えるな。野宿でもよかったんだが警察官に怒られてよぉ」


 それは当たり前なのではないか?


「仕方なく区役所? だかなんだかよくわかんねえとこに連れてかれて、ちょっとだけお金はもらえるようになったから問題ねーな」

「いや、それでも足りないんじゃない? 着る物とか食べ物とかはどうしてるのさ?」


「着る物は知人、友人からゆずってもらってる。さすがに下着だけは買ってるが」

「……食べ物は?」


「バイト先のパン屋のおっちゃんがいい人でさ! 売れずに余ったパンを毎回どっさりくれるんだぜ! めっちゃ豪勢なひとときだ……」


 それはそれでありだと、おれは思った。

 売れ残ったパンを食べ放題か……いいかも。

 いやいや! ちょっと待て!


「そう都合よく余るもんでもないだろう? 余らなかった場合はどうすんの?」

「知ってるか? 雑草ってけっこう腹に溜まるんだぜ!」


 知りたくなかった。

 犬のうんこやしょーべんがかかっていたらどうする。


 と、友人は表情をやや引き締まったものに変えて、つづけた。


「ああ、でも電気と水が通ってなかったときはさすがにやばかったな」

「当たり前だ!」


 思わず怒号。

 それなしに現代日本をどう生きる。


「いや、電気はなくてもあんま問題なかったんだが、水がな……」

「まさか川の水を飲んだとかじゃ」


 はっはっは、と友人は笑った。


「いくらなんでもそこまでオレも無謀じゃねえさ。ちゃんと飲み水をもらったぜ」

「へえ」


 なにその、もらった、とかいう不穏な響き。

 おれは尋ねてみた。


「どこでもらったの?」

「洗車で水をぶっかけてた家を見つけてな。水をわけてくれって頼んだら、飲み水どころか身体までついでに洗う水を分けてくれたぜ! いやあ、ついてたわ!」


「その水はどこから出てたの?」

「青くて細い管からだが?」


 唖然とするおれをよそに、友人はきょとんとしている。

 聞かずにはいられないことを聞いてみた。


「進路はどうするのさ?」

「高校さえ卒業すりゃあ、もっと働き口は増えるだろうからな。ばんばん仕事してオレも贅沢な暮らしを目指すぜ!」

「そうか、がんばれ」

「おう!」


 なんてたくましいんだろう。

 男らしい生き方とはこんな感じなのかもしれない。絶対に真似はできない。

 おれは友人に対して羨望のまなざしを向けたのだった。



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※到底

※羨望

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