魔法の言葉

隅田 天美

だから、お前は○○○

 いつのころからだろう?

 気が付いたときに親や周囲からこんなことを言われていた。

「……だから、お前は愛されないんだ」

「お前さえいなければみんな気持ちよく過ごせたのに」

 私は良くも悪くも子供の頃は純粋だった。

 だから、素直にその言葉を受け止めた。

――そうか、私は愛されない迷惑な存在なのだ


 最初の効果は虐められたときに現れた。

 虐められている多くの子供たちは『何故、自分は虐められるのか?』理由を探す。

 私はそういう意味では悪い意味であきらめがついてきた。

「そういう人間だから」

 そして、周囲の人間もそれを肯定した。


 結果、私は自己肯定感が極度に低い人間恐怖症になった。

 精神科医の表現で言うのなら「心理的外傷(PTSD)」になった。

 むろん、これは後年になってから知る事であり当時の私は他人は魔物であり恐怖の対象であった。


 それを和らげたのが小説を読んだり書いたりすることであった。

――これでなら、他人と理解しあえるかもしれない

 そんな淡い期待があった。

 だから、私は書き続けた。

 約十年前からは専門の病院で診察を受けつつリワークをして数か月前、私は周囲の力を借りて就職できた。


 だが、思い出すのだ。

――だから、お前は愛されない

――お前がいないほうがいい

 それは突然やってくる。

 職場で。

 街中で。

 書店で。

 誰も何も言っていないのに、『魔法の言葉』を思い出す。

 体が重くなる。

 心拍数が上がる。

 涙が溢れそうになる。

「辛い」

「痛い」

「重い」

 吐き出したい。

 でも、吐き出したら本当に人はいなくなる。

 だから、飲み込む。


 誰か、この魔法を……

 この呪いを解いてください。

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魔法の言葉 隅田 天美 @sumida-amami

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