第6話 すってんころりん
「嘘だろ…もう20時?!」
友達と飲み会をし、帰宅したのが4時。そこからまっすぐ布団へ入り、今の今まで熟睡していたようだ。最近バイトがフルな上に2週間連続だったから疲労が溜まっていたのだろう。
体を少し動かし、携帯を確認する。
「……ん? なんだこれ」
飲み会の際、友達が撮ってくれた写真を保存してフォルダを確認してると保存した覚えのない写真があった。
「俺だな……いつの」
写真が撮られた日付を確認すると今日の14時。いやまて、おかしい。今起きたばかりだぞ、俺は。
「しかもこれ、俺の寝顔……なんで」
怖くなり施錠を確認するも全てしっかりと鍵がかかっていて誰かが侵入したとは考えられない。かといってこの写真のアングルや距離的に自撮りでもない。そもそも俺はその時間寝ていた。
心霊現象、という言葉が頭をよぎる。
情けない話だがそういう目に見えないものは嫌いだ。
1人でいると要らないことを考えてしまいそうで、急いで友達に電話をした。幸い、すぐに電話が繋がった。
「え? いやなんとなく! はは、ほら昨日の飲み会やばかったよなぁ。俺いま起きてさぁ」
そのままコンビニにでも行って飯でも買おうとボロアパートを出る。
街灯がふたつほど球切れなのか、光がなかった。ただでさえこの辺は暗いのに。これじゃあ真っ暗だ。おまけに雨まで降っている。傘は……いいか。
「えー、お前もさっき起きたのかよ。いま? いまはコンビニ行くところ」
錆び付いた階段をいつものようにコンコン降りていく。少し軋む音が雨音に混じり、嫌にうるさく聞こえた。
「ていうかお前ちゃんと帰れたのか、意外」
ちょうど階段の電気も球切れでついていない。
「そうそう、久しぶりに会ったけどなんも変わって……うわぁっ!」
屋根もない階段は思う存分雨に濡れていて、俺はそのままバランスを崩し、そして。
「………………」
──────────────
──────────
──────
灰色でザラザラした地面に綺麗な赤が広がる様を彼女は見ていた。それは愛らしい笑顔で。
降り出した雨は止む気配を見せず振り続ける。あたりは水たまりだらけだ。それだというのに彼女は嫌がるそぶりも見せずにその赤で指を汚す。
「ここにひとつ、電気があればもっと素敵なのになぁ。ねぇ、お兄ちゃん」
ノイズだらけの空間がそこにはあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます