第4話 痴漢なんてしてない


最悪だ。

混み合う電車内、いつも通りバイト先へ向かうはずだったのに。


「いい加減認めなさい!私、見てたんだから!」

「真後ろにいたの、あんたでしょう!」

「うっ、うぅ……ぐす…っ」


喚く女性2人に泣き続ける女性1人。

俺は全く身に覚えのない事で降りたこともない駅のホームで問い詰められていた。

突然痴漢だと捕まり、やってないと何度言っても聞き入ってもらえずついにホームへ連れ出された。周りの人は面倒そうなものを見る視線だけをくれる。


「だからさぁ、、何度も言ってるけど俺じゃないって。触ってもいないし」

「嘘よ!」

「あーもう、だったら検査でもなんでもすりゃいい」


駅員さんはまだだろうか。もう勘弁してほしい。バイトは確実に遅刻だし……。

今は検査してもらえればハッキリ証明できる。逃げ出す時代じゃない。


「ほんっと最低!」


罵声をこれでもかと浴びながらぼんやりと家を出る前に届いたSMSを思い出す。


『お兄ちゃんはなぁにもしてないよ!』

『だから安心して死んでね。お兄ちゃんは綺麗なままだよ!』


差出人は奇妙な文字化けをしていて解読不可能だった。薄気味悪い、イタズラにしてもセンスがない。俺に妹はいないし、親戚に俺をお兄ちゃんなんて呼ぶ子はいない。


「ちょっとこのクズやろう! 無視してんじゃないわよ!」

「謝りなさいよ! 土下座しなさい!」


ああ、もううるさい! なんでこんなキーキー声を出せるんだ。

ため息を吐いて何か1つ言い返そうと口を開いたところで今までシクシク泣いていた女の子が立ち上がった。


「は?」


あ、消化器。そう思った時にはすでに頭に強い衝撃が走り倒れこむ。

それから何度も何度も赤いそれで頭を、顔を、首を殴打されて……最後に聞こえたのはあの女たちの笑い声だった。




─────────────

─────────

──────



「ふ〜〜。こんなところかなあ。……ふふ、お兄ちゃんは本当に綺麗だなぁ。真っ赤でぐちゃぐちゃ、ふふ!安心してね、アイツらはみぃんなミンチだよぉ」


女の子は線路上でクルクル踊る。クルクル、クルクル。









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