第3話 ヤキモチ
「お兄ちゃん、最近へんな女と仲良しさんだね!」
スーパーの買い物帰り。片手に袋を下げ、夕暮れに染まる街へ出ると女の子に声をかけられた。
黒髪を耳の上で2つに結んだ可愛らしい女の子だ。
「えーと、誰かと間違えてない?」
「ハルがお兄ちゃんを間違えるわけないよぉ」
花が咲くように笑う女の子。うーん、記憶の中を遡ってもやっぱりわからない。
「ごめんね、俺にはわからないんだけど……」
「うんうん、だいじょぉぶ!知ってるよぉ。お兄ちゃんは“毎回”忘れちゃうもん」
先ほどと変わらず笑うその顔がどこか零度の冷たさを持ったように見えてビクリとする。
「でもねぇ、今回は自業自得だからねっ!私は怒ってるんだから」
人差し指をビシッとこちらをに向けて愛らしい雰囲気で怒る女の子。なんだ、なんなんだ。
「お兄ちゃんはこの後死んじゃうよ」
嫌がらせとか、からかってるとか、そういうのではない断言。頬を膨らませてるのは可愛いのに、全体的な雰囲気が年相応の女の子ではなく、俺は気づくと逃げ出していた。
ボロアパートに入り、乱れた息を整える。
25歳のいい歳した男が、恥ずかしい。
「っ、はぁ、はぁ……!あー、クソ……なんなんだよ」
少し落ち着いた所で生物を買ってきたことを思い出してとりあえず冷蔵庫を開ける。肩で息をしながら肉や野菜、豆腐、牛乳を入れる。と、箱に入ったソレに気づいた。
昨日、バイト先の女性から貰ったケーキだ。紅茶のケーキとか……なんとかと言って渡されていたんだ。これ食べちゃわないとな。
「ナッツ系は、よし、入ってないな」
重度のナッツアレルギーの俺は少し食べただけでも死の危険がある。さっきあんな風に言われたからか少し慎重になってしまった。
「あ、うまい。………………ん?」
ごくん。
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「もっとちゃんと確認しないとぉ。何処の馬の骨かもわからない女からのものを食べるからだよぉ……あーぁ、汚い。お兄ちゃん以外の血なんて気持ち悪いや」
女の子の足元には血だまりと女性の身体が転がっていた。
「次、はお兄ちゃんにちょっかい出さないでね。もう聞こえてないか」
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