第2話 嫌な夢
嫌な夢を見た気がする。
目覚ましが鳴るにはずっと早い時間。まだ空が白くなり始めたばかりだ。小鳥の声が聞こえるほど爽やかな朝なのに嫌な汗でぐっしょりと背が濡れてしまっていた。
「なんの夢だっけ……まあいいや、シャワー浴びるか」
どうにも二度寝をする気にならない俺はタオルと着替えを用意してシャワーを浴びる。
なんとなく体のあちこちが痛む。寝てる間にぶつけたのだろうか。部屋の掃除でもしたほうがいいのかもしれない。
10分ほどでさっとシャワーを終わらせてタオルで頭をふく。喉が乾いたなぁ。
そのまま冷蔵庫を開けると物の見事に空っぽだった。お茶は……そうか、この前飲みきってしまったか。水道水はなんとなく飲みたくなくて、仕方なくコンビ二へ行く準備をする。
「んん〜っ、はぁ……。たまには早朝の散歩もいいなあ」
「そうでもないよ、お兄ちゃん」
「っ?!」
ボロアパートのドアを開けて背伸びをしていたらふいに下から声がした。
「おはよう、お兄ちゃん! 今日に限って早起きなんてどうしたの?」
黒髪を耳の上で2つに結っている幼い顔の女の子だった。お兄ちゃんと親しげに呼ばれてこんな子親戚にいただろうかと悩む。
「ねぇお兄ちゃん、無視しないでよ」
「い、や……どこかで、会った? 俺ぜんぜん覚えてない」
「会ってるよぉ〜。ずぅっと前からハルとお兄ちゃんは知り合ってるんだよ〜」
にっこりと可愛らしい笑みを浮かべて女の子は俺の手にその小さな手を絡めてくる。彼女すらいない俺は簡単に心臓をドキドキとさせてしまった。いやダメだろう、しっかりしろ!
「だからお兄ちゃん。コンビニに行っちゃダメだよ。行ったら死んじゃうから」
そう、笑顔を崩さずにさっきの挨拶のように爽やかに言い放った。
恐怖。幼い、12、3歳くらいの女の子に対して抱く感情ではないはずなのに。
「あ、お兄ちゃん!」
絡められてた腕を振り払って俺は急いでアパートの階段を降りた。なんだ、なんだあの女の子は。
そのまま近場のコンビニへ駆け込むように入ると店員から変な目で見られてしまった。それはそうだろう、早朝にこんな息を荒く駈け込めば。
水を買って……帰るにもまだあの子がいたら……いや、相手はただの女の子だ。
うやうやと悩みながらもとりあえずレジへ向かうともう1人店内へと入ってきた。早朝でも人が来るもんだなと思いその人物をチラッと見るとまるで強盗のような格好をしていた。
「金をよこせ」
そう言って黒く鈍い銃口がなぜか俺に向けられて、店員が面食らってる事に苛立ったソイツはあっさりと引き金を引いた。
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まーた死んじゃった。お兄ちゃんはどうしてハルのこと怖がるのかなあ。ちゃんと12歳の顔と体なのになぁ。
「お兄ちゃんは照れ屋だもんね。えへへ、ハルは知ってるよ」
さてと、お兄ちゃんがまた死んじゃったからやり直しだね。
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