第2話 できるだろうか

「拙者が分断する。」

キリマルはそう言うと、刀を抜き、瞬く間に2回空気を切る。俺は斬撃波を防ぐため、腕を顔の前でクロスさせる。

 しかし、痛みは感じなかった。感じたのは大地の揺れだった。下を見ると、大地がショートケーキのように切れている。

 俺は一人、切込みの中に立っている。

「さあ、踏ん張りなさい!」

「ふん。」

クロウが同じ大地の切れ端に乗ってくる。

「バニッシュインパクトぉぉ!」

スカーレットドラゴンに乗ったマリアが上から降ってくる。

「レイヤを分断させようとしてる。」

タロウが言う。俺はその切れ込みを飛ぼうとすると、

「おいおい、逃げんのか?」

背中に大剣を背負ったクロウが目の前に現れる。

「私たちは大丈夫だから。」

マイはユウキの攻撃を必死に弾いている。

「決着をつけて来い。」

サムズアップする。

「頼んだよ、みんな!」

マリアが地面に到達し、俺達が乗った切れ端は飛んだ。どんどんどんどん重力に逆らって飛んでいく。苦労の不気味な笑いを眺めているしかなかった。

「ははは。俺達恐れられてるみたいだぜ。」

サイは嬉しそうに笑う。

 正直、どうして、俺とクロウの一対一の状況を作り出したのかは分からない。サイの言う通り、俺達を恐れているのか、それとも、クロウが俺と戦いたくて、仲間たちに頼んだのか。

 長い間飛んでいた。

「着いたら、ゆっくりやり合おうぜ。」

クロウはそう言って、大剣のゴミを取っている。肩のレイブンもゴミをつついている。

 もう、他のみんなが見えない。どころか、周りは雲しか見えない。どうやら、上空に飛ばされていたようだ。ここらでいいか。と彼は言う。

この夢のような場所で俺達はやり合う。もし、平和が訪れたなら、同じ方法で空まで来たいものだ。

 彼がやれ、と言うと黒い羽のようなものが周りに広がる。

「さあ、やろうぜ。」

脇腹の傷が痛む。あの傷は、もう治ったはずなのに。

 俺は彼に勝てるのだろうか。リベンジを果たせるのだろうか。





「さあ、自己紹介をしろ。」

教官がそう言う。俺達は班の中に番号を振られていた。俺が一番だった。

「青木レイヤ。17歳です。よろしくお願いします。」

反応は予想通り、極めて薄かった。

「趣味は?」

と教官が聞いてくる。

「読書と昆虫採集です。」

笑えもしない趣味でごめんなさい。

「次、2番。」

「斎藤マリア、趣味は買い物と雑誌集めよ。早くこの仕事終わりにしたいのだけれど。」

彼女は室内なのにサングラスと帽子をかぶっている。腕を組んでいる。よほどお金を使っているらしく、高級感漂う見た目をしている。それに声が美しい。

「き、君たちは訓練の末、妖精達から人々を守る戦士になってもらう…。放棄は許されない。」

「あら、そう。今夜逃げ出そうかしら。」

その発言には、10班の面々も困惑していた。というか、誰が戦いたくてこの訓練施設に集まったのだろうか。

「俺がすぐ妖精どもをぶっ殺してやるから安心しろ。」

と、いきなり言い出すものがいた。

「鳥山、順番を守れ。」

本当にいた。戦いを望んでるやつ。髪の毛がツンツンと立っている。まるで攻撃的と言わんばかりの見た目だった。黒すくめの服で、ポケットに常に手を突っ込んでいる。

 俺たちはなぜ選ばれたのか、なんとなく分かる気がする。ここから逃げ出さない奴だ。

 その鳥山という男は、首を傾げた。

「次、3番。」

「桜田ユウキ。よろしく。」

「短いぞ、趣味は?」

「運動。」

見るからに運動ができそうな女の子だった。短髪で、足も腕も細い。

「次!」

「さ、佐藤タロウです。趣味は歴史を学ぶことです。」

彼は声も体も震えていた。前髪がおでこの上でそろっている。この日の為に切ってきたのだろうか。

少し、仲良くなれそうだと思った。

話し終わった後、安心したのか、胸に手を置き、深呼吸していた。

「拙者、杉田キリマルと申す。よろしくお願い致す。」

最初から気になっていた男だ。ドラマで見るちょんまげと、うり二つの髪型をしている。それに着ている服は、袴だ。初めて生で見た。

反対側にいる佐藤くんが目を輝かせているのが分かる。歴史好きが興奮しないわけがないよな。

「趣味は、素振り、剣道、居合道でござる。」

絵にかいたような侍だった。

 教官に言われることなく、次々と話し始める。

「谷スミ。趣味は、虫の観察。」

フードにショートパンツ。ありを眺めている姿が目に浮かぶ。まさしく不思議ちゃんだ。

「鳥山クロウだ。趣味なんかない。俺は仲良くする気もない。」

教官はあきれ顔をしている。もう、しつこく訊こうとしない。

「西田マイ。趣味は、テニス。仲良くなりたいから、よろしくね。」

クラスに一人はいる、学級委員になれるタイプの人間だ。

「丸山タツヤだ。ともに世界の危機を救おう。」

空気が凍った。教官が頭をポリポリと書いている。タツヤ君は青色のサングラスをしている。表情一つも変えないことから、彼は本気で言っていることが分かる。きっと、正義感が強すぎるのだろう。俺はああいうタイプ、頼もしくてえ好きだが。

「実は10班にはもう一人班員がいる。入れ。」

と言うと、扉があき、背の高く、茶髪で髪が巻かれている男が入ってきた。

「俺はロジィだ。よろしくな。」

とても、高校生、いや大学生にも見えなかった。

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2050年 第一次魔法戦争 望月陽介 @yousukeM

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