第81話*

 ほとんど待たされることなく、湯気をあげるスパゲッティが運ばれてきた。ニンニクとオリーブオイルの香りが食欲をそそる。よく見るとスパゲティの間にスライスされたニンニク片がいくつも混ざっていた。あなたはフォークを取り上げて、スパゲティに突き刺し巻き取る。


 息をかけて冷ましたスパゲティを口に入れると、ぐにゃとした感触が口いっぱいに広がる。茹で過ぎだ。やはりここはイギリスだった。茹でる場合は食感が無くなるまで茹でてしまうお国柄である。そして、ニンニクの風味と唐辛子の辛さは伝わってくるがまるで塩気を感じられなかった。


 あなたは卓上の塩をスパゲティに振りかけて口に入れる。だいぶましになったが、美味いか、不味いかで言えば自信をもって不味いと言える。正直言って全部食べるのは苦痛だったが、育ちのいいあなたは食事を残すということに抵抗があった。無理やり口に押し込んで飲み込む。


 そうこうするうちにポッポと体が熱くなってきた。なんとか最後まで食べきるとあなたはテーブルに8ポンドと小銭を置いて席を立つ。話のネタができたから良しとするかと自分を慰めながら店を出ると目的地に足を向けた。


⇒第13話に進む

https://kakuyomu.jp/works/1177354054890935249/episodes/1177354054890935680

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