第57話*

 そっと音をさせずにくぐり戸を通り扉を閉めたとたんに脹脛に鋭い痛みを感じた。ドーベルマンがあなたの足に噛みついている。詰所から猟銃を持った男が現れて犬に向かって離れるように言った。ドーベルマンはあなたの足を離すがじっと身構えてあなたを凝視するのを止めてはいない。ちらりと時計に目を向けると4という数字が見えた。


「あんれ、猛犬注意の張り紙が見えなかっただか? このお屋敷に何の用だか?」

 男の問いにあなたは痛みをこらえながら、散歩をしていて道に迷ったのだと告げる。

「外国からはるばる来ただか。それで犬に咬まれたんじゃお気の毒だで。だけんど、勝手に入ってきたあんたが悪いんだども。それにあんたは携帯電話を持っておらんのかね?」

 実直そうな感じの年よりの顔に警戒が浮かぶ。


⇒第50話に進む

https://kakuyomu.jp/works/1177354054890935249/episodes/1177354054890936010


 

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