真照の悲劇的☆ビフォーアフター!
「ゔぅぅ…」
フラグは俺に休みをくれた。
風邪と言う名の休みをな!
「ゴホッ、ゴホッ」
咳が辛い。鼻水が止まらない。考えがまとまらない。
視界がぼんやりする。あぁ、何だか白いのがいるなぁ…。
もしかして…。
「チーズの、精霊…?」
「違うわよ」
違う…?なら、お迎えか?
「短い人生だったなぁ…」
「安心しなさい。アンタはまだ死なないわ」
違うのか…。良かった…。なら、誰だ?
ひんやり冷たいタオルが頭に乗せられる。思考がハッキリしてきた。目の前にいたのは…。
「なんだ、真照か」
「なんだとは何よ。そんなこと言うならもう看病してあげないわよ」
「ごめんなさい」
今、親は家に居ないからな。居なくなられると困る。誰も看病してくれないのは結構辛い。
「あれ?そう言えば真照はどうやって入って来たんだ?」
まさか、鍵開け…!?
「ん?そんな事簡単よ。拳で穴開けたのよ。ね?簡単でしょう?」
予想よりもっと悪かった!それなら鍵開けの方がまだ良かった!
と言うか拳で人が入れる位の穴空くのか!?
「…俺の家を欠陥住宅にしないでくれ…」
「あら?爆発よりマシじゃないかしら?」
爆発!?物騒な言葉が出てきたな…。
しかもそんな事したら俺が死ぬと思うんだが。
「真照、お前まさか俺の事を暗殺しようとしているんじゃ無いだろうな?」
「して無いわよ!」
否定されたが、不安が拭えない。
「まあ、家に穴開けちゃったのは悪いと思うわ。ちゃんとリフォームしとくわよ」
「ああ、頼む。次からは穴を開けないでくれ…」
ドアがドアとしての意味を成してない。
あと、不法浸入と器物破損は犯罪です。良い子じゃ無くてもマネしないでね!
「あ、あたしご飯作って来るわ!何が良いかしら?」
「チーズ」
「お粥ね」
おい!人の話を聞けよ!俺、『お粥』の『お』の字も言って無いんだが!?
「万…」
真照が呆れた様な目で俺を見る。
「チーズは病人食じゃ無いわ。体が弱っている時は栄養のある柔らかい物を食べなさい。胃に負担が掛かるわ」
「うっ…」
そう言われるとぐうの音も出ない。
「じゃ、あたし作って来るわね」
そう言って真照は俺の部屋から出て行った。
それにしてもお粥かー。食べるのはいつぶりだろうか。あんまり美味しく無いんだよなぁと思いつつ天井を眺めていると。
「おー幸神!元気かー!?」
「それにしても幸神の家の玄関凄いな!穴が空いてたぜ!アレが現代アートって奴か!?」
そんな現代アートがあってたまるか。
「違う。
何と言う事でしょう!さっきまで普通の家だったのに、今では欠陥住宅ではありませんか!
「そうだったのか!幸神、お前も大変だな!」
他人事だな!なんて思っていたら。
「お粥出来たわよー。って、あら?」
「よお!匠!」
「匠!?」
「いいわよ。あたしが口に持ってってあげるわ」
「え、だが…」
「病人なんでしょ?病人は病人らしくしてなさい」
口に持ってって貰える事になった。
「ふぅー、ふぅー…はい、あーん」
真照に口まで運んで貰ったお粥を食べる。
「…!めっちゃうまい!」
何と言うか…。家庭的な温かさを感じる。母の味だ。
「あら、そう。良かったわ」
真照は嬉しそうに笑っている。
九頭龍が真照に「そんなにうまいのか!?俺も少し食って良いか?」と聞いている。
真照はニコニコしながら「少しなら良いわよ」と言って小皿に分けた。
風邪の看病して、お粥を作って、口にまで運んでくれるなんて…。まるで真照は
「お母さんみたいだな!」
がくっとなる真照。少しお粥をたべて「うまい!」と言っている九頭龍。
真照の「…そこは彼女みたいでしょ」という呟きは小さすぎて俺の耳には届かなかった。
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