料理って難しい



完☆全☆回☆復!よっしゃー!なんて思ってたら今度は真照が風邪を引いた。


真照…。人の看病をするのは良いが、自分が風邪ひいちゃ本末転倒だろう。


まあ、うつしちゃって悪いと思うし看病して貰ったからそのお礼も兼ねて真照を看病しようと思う。お土産もバッチリだ。


☆☆☆


ここは街の西側。大分歩いて来たな。幾らか前に真照が言ってた話だと、ここら辺で1番大きな家だとか…。お?あれか?


確かに大きいな。時代を感じさせる建物だ。和洋折衷と言う言葉がしっくり来る。表札は…ちゃんと日神って書いてあるな。ここで間違い無いみたいだ。


こんな所に住んでいるだなんて、本当に真照はお嬢様なんだな。改めて実感した。


入り口には大きな門がある。所々錆びてて、やはり時代を感じさせる。そして誰も居ない。どうやって入ろうか。


あ、インターホンだ。これを押せば誰か来るかな?


『ピンポーン ピンポーン』


チャイムが鳴る。ここは普通だな。


「はい。どちら様でしょうか?」


知らない人の声だ。召使いとかかな?


「俺は真照の友達の幸神 万です。真照が風邪をひいたと聞いたので、お見舞いしたいと思って来ました」

「分かりました。少々お待ち下さい」


そう言ってインターホンは切れる。流れるオーケストラ。


うん。ここだけ豪華だな。


あ、カメラがある。あれで俺を見ているのだろうか?


手を振ってみるが反応は無い。


待つ事数分。


「真照様の許可が下りました。どうぞお入り下さい」


ドアがキィ…と開いた。


全自動か!凄いな…!


どうやら家…と言うか屋敷までは一本道の様だ。少し遠くに玄関が見える。


庭も和洋折衷かと思いきや、洋風だった。薔薇園がある。


…あれ?一つだけ場違いな物があるな。菊だ。鉢植えに植わっている。白く、綺麗な花だが今にも枯れそうだ。あと菊って春に咲く花だったっけな?まぁ良いや。


なんて考えている内に玄関に着いた。


「お迎えにあがりました。幸神様。ここからはメイドの私が案内させて頂きます」


…メイドさんだ!本物のメイドさんだ!やっぱりこう言う所にはいるもんなんだな…!


メイドさんに付いて進んで行く。廊下には高価そうな花瓶や絵等が並んでいた。


よく見なくてもどれもこれもが高価そうな物だと分かる。窓も、床も、天井も!


「着きました。ここが真照様のお部屋でございます」


おっと危な!周りの物に気を取られて危うくメイドさんにぶつかる所だった!


「真照様、幸神様を連れてまいりました」

「分かったわ。入ってちょうだい」

「失礼致します」


メイドさんがドアを開ける。そこには深窓の令嬢…では無く真照がいた。髪はポニーテールでは無く下ろしている。


顔が赤いな。風邪をひいて熱があるのだろう。


「では私はこれで」

「えぇ、ありがとう」


メイドさんは退出した。


俺は真照に声をかける。


「俺の風邪をうつしちゃったみたいだな。ごめんな」

「いえ、いいのよ!」


何だ?真照がいつになく慌てている様な…。


「大丈夫か?顔が赤いぞ?」

「こ、ここここここれは熱よ!気にしないで!」


更に赤くなった!このまま顔でお湯が沸かせそうな勢いだ。


「本当に大丈夫か?…あ、そうだ!俺、お土産持って来たぞ」

「あら?何を持って来たのかしら?」


切り替え速いな!もう顔が赤く無くなったぞ!


俺はテーブルの上にソレを置く。


「ほら、リンゴだ。俺は料理は苦手だからな、お粥とかは作れないんだ。」

「あら、そうなの?でもうさぎさんカットとは気が効くじゃない。嬉しいわ。ありがとう、万」

「そこまで上手く出来なかったけどな」


あまり包丁とかは握らないからな。かなり武骨なうさぎさんカットだ。


「所で万…」

「うん?何だ?」


真照はソレを指して言う。


「…あたしにはなんだか呪われた謎の物体Xにしか見えないのだけれど…。何かしら、これ?」

「…リンゴだ」

「…あの」

「リンゴだ」

「……」


うん。残念ながらそれはリンゴなんだ。


あまりにも俺の料理レベルが低すぎて、リンゴは血まみれのうさぎさんになってしまったんだ。


リンゴのうさぎと俺は死闘を繰り広げた。今も指に傷が沢山ある。


「…ありがとう。有り難く頂くわ」

「えっ!?食べるのか!?」

「折角持って来てくれたんだもの。ここで食べなきゃ女が廃るわ」


死にそうな顔で言うなあ!

無理して食べる位なら廃れちまえ!そんなもん!


「真照!逝っきまーす!」

「やめろ!無理すんなぁああああ!!」

「んぐ!?な、何よこれ…。どの味にも当てはまらないわ…」


これ程料理を持って来た事を後悔した事は後にも先にも無かった。


☆☆☆


数分後。


「燃えた…。燃え尽きたわ。真っ白にね…」

「だから止めろって言ったのに…」


真照は燃え尽きていた。元々白いが更に白さが増していた。


余談だが、帰り際に着物を着たおっさんに


「ワシはお前を認めんからなぁあああああ!」


と言われた。


アレは一体何だったんだろう。

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