第11話 始まりの炎は小さくそして激しく。

「準備は整いました。」あえてカエデのいるブロックには猛者を集めた。奴らを倒せなかったのならその程度の人間だったということ。「よし。あとは貴様らに任せる。我も準備をするとするか。」我が剣もいつも以上に輝いている。「ほう。そなたも楽しみか。」カエデは我を楽しませる唯一無二の存在だろう。

薔薇戦の開会式。見回せばいつもギルドで飲んだくれている男達もいれば、騎士だと思われる人達もいる。そしてガズエル王の演説が始まる。「聞け!ここにいる己の技を磨き、己の剣に誇りを持つ戦士たちよ!汝らはこの祭りを締めくくる華である!自分の技を相手にぶつけよ!そして勝ち残れ!我に挑み、我を倒した先を見たくば己を超えよ!我を倒した者にのみ得られる称号を己の手で掴め!これより薔薇戦の開催を宣言する!」ガズエル王の宣言と共に会場を戦士たちの声が揺るがす。

一人一人に魔法がかけられる。なんと攻撃を1度無効にするそうだ。多分俺の戦いの時、教徒達はこの魔法をかけられていたのだろう。予選の相手を見る。初戦はガリルという男らしい。だが、俺のブロックにランさんがいる。勝ち進めばブロック内の決勝であたる。「やぁカエデ君。」話しかけてきたのはマルドだった。「マルドか。違うブロックだが、決勝で戦おう。」「ああ。あの時のリベンジをさせてもらうよ。君に忠告をしようと思ってね。」「忠告?」「ああ。君のブロックの戦士たちはどれも猛者ばかりだ。ほとんどの戦士が前回の薔薇戦を経験してるし何勝かしてる。ランだけに注意しないように。」なるほど。多分ガズエル王に仕組まれたな。だが、自分の技術を上げるのにももってこいだ。ランさんとの戦闘の前に技術を上げる。「忠告ありがとう。だが、俺にはガズエル王に勝たなきゃならん理由があるんだ。」「その意気なら大丈夫そうだね。」「おい!ガズエル王!あんたの賭けに乗ろう!それまで俺の戦いを見て楽しむがいい!」「王に失礼だぞ!」ガズエル王は笑い、手を上げる。「そこのお前。カエデに何もするでない。主ならそう言うと思っていたぞ!ならば我からも宣言しよう。カエデ アズマよ!我を楽しませるがいい!」会場は静まりかえる。理由はだいたいわかる神殺しが王に宣戦布告をしたことに驚いているのだろう。「この、東楓。お前ら全員潰させてもらう!」他の戦士にも挑発をする。大体の戦士が頭に血を上らせて睨んでくる。そして1つの笑い声。多分ランさんだな。(カエデくん。その度胸だ。1つ私からアドバイスだ。あのランという少女、多分ピルグリムだ。注意したまえ。)ランさんの体にはピルグリムの証となる光の筋が見えない。脚にあるのかそれとも服の下にあるのか。注意するのには変わりないが、気になるな。

初戦。ガリルは斧を使うらしい。体は鉄の鎧に包まれ、その斧は俺の身長よりも大きい。やつの体はムキムキでThe筋肉って感じだ。「おいおい兄ちゃん。あんた神殺しだろ?」もう国中の人に伝わったのか。「そうだと言ったら?」「お前を倒せば俺の名はうなぎ登りよ。ついでにこの国の宗教から賞賛を受ける。キヒヒヒ!」始まりの鐘が鳴り、ガリルは斧を振り回す。攻撃の速さが尋常じゃない!「蒼爆!」蒼爆を使い近づけさせないようにするが、鎧のせいで効果が薄い。まずは鎧を剥がさなければならないか。西洋甲冑のように鎧の関節部は硬くない。関節を重点的に狙うか。「キヒヒヒさぁさぁ踊れ!」奴の攻撃は今の所斧を振り回すだけ。魔法は使えないのか。奴の体力も無造作ではないはず。動きが止まったところで攻撃だ。エイワスの力で障害物を作りながら回避。「エイワス。あれやるぞ!」(その選択は良い。)フレイムファントムを使い、数的有利にする。「2対1か。だが、その魔法を使っている間は集中力を使うんじゃないか!」エイワスがいるという情報はないのか。「フフフ。私は二重人格なのだよ。」「な!なにぃ!」エイワスの嘘にガリルが困惑している中今のうちに鎧の破壊をする。付け根に入り込み、鎧の繋ぎを焼き切る。「あちぃ!離れろ!離れろぉ!」「鎧の1部が剥がれたね。てい!」エイワスは鎧の剥がれた右腕を狙い続ける。(なぁエイワス。俺思ったんだけどさ。)「なんだい楓くん?」(防具を物質変化で、他の物質に変えればよくね?)「すまない楓くん。それは出来ない。君が成長すれば可能だが今の君では出来ないのだよ。」成長すればか。もうすぐ奴の鎧を崩せる。鎧が重々しい音を立て地面に落ちる。「クソ!なーんてなぁ!キヒヒヒヒ!おかげで軽くなったぜぇ!」さっきよりも攻撃スピードが上がる。図体がでかいくせに早いとは。しかもさっきよりも1回1回の攻撃が重い。「俺はなぁ魔法が使えないんじゃない。身体強化がメインなのさ!」攻撃スピードと身体強化による斧の攻撃。剣で防ぐのにも限度がある。防ぎきれない攻撃が身体にあたり血が流れる。(カエデ君。私の言う通りに行動してくれるかい?)「勝算は?」(勿論あるとも。だが、彼が拳による攻撃もできると考えると少々キツいがね。)「やれることはやろう。もし、拳による攻撃になった場合でも俺にはアレがある。まず何をすればいい。」エイワスの指示通りまず石のドームを形成。「そんな所に引きこもっても同じだぜ!」石の削れる音が内側からでもわかる。(いいかい。攻撃のタイミングは彼の斧があ見えた瞬間。決して彼をこの空間に入れてはならない。)着々と音は近づいていき、斧が見えた。「アブソリュートゼロ!」アブソリュートゼロはガリルの斧を凍らせ、粉々に砕く。「お、斧が!貴様!何をやった!」「凍らせただけさ。さぁどうするお前の武器と鎧はもう壊れた。降参してくれると助かるんだが。」俺の話を聞くわけでもなくガリルは突っ込んでくる。今必要なのは一撃だけでいい。「業火。」小さな炎がガリルのいる方向へゆっくりと飛んでいく。今にも消えてしまいそうな炎はガリルの体に着いた瞬間激しく燃え始める。業火は魔力を燃料にして燃える。空気中の魔力ではそこまで激しくは燃えない。だが、ガリルのように身体強化にしか魔力を使わず、魔力もありあまっている人間に使えば激しく燃え上がる。「ウア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!アズイダレガア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙。」死なないとはいえ炎による痛みは燃え尽きてもしばらくは続くだろう。「そこまで!勝者カエデ!」まずは一勝。会場からは拍手や、歓声ではなくブーイング。多少は歓声は聞こえるが、教徒がこの会場の半分以上を占めているのかブーイングが目立つ。まぁいい。決して卑怯な手は使ってないのだから。ガズエル王を見る。彼は笑みを浮かべ拍手をしているが、けして笑っている訳では無い。つまらないと感じているのだろう。彼を楽しませるためには彼と同等の力を手に入れなければならないのか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る