第10話 ローゼン祭の満月に
ローゼン祭前日。試行錯誤の結果満足のいくおしるこが出来たところで出店の設営に入る。言い出しっぺのリルさんは場所の予約はきっちりとやっていたらしい。だが場所が場所で素直に喜べない。場所は王宮通り。高級店が立ち並び、俺たち意外の店の値段は金貨1枚から5枚。「なんでこんな所選んだんですか。」「最初はリルのポーションを金貨1枚で売るって言ったじゃん。」なるほど。他の店に目移りしないようにということか。だがこっちは買う側からしたら異世界の料理だぞ?負ける気がしない。設営が終わり、少し通りを歩く。「おいおいあそこの店銀貨4枚だとよ。ここでの立ち位置分かってんのかよ。」とバカにしてくる声が聞こえる。金貨1枚当た理の価値は銀貨にすると約1000枚。つまり客を沢山集めないとなんの収穫もなしに終わってしまう。(いやー。楽しみだなぁ。私的にはこのローゼン牛の踊り焼きってのが気になるんだけど。なんと金貨2枚!)「買えるわけないだろ。そんなん食う金あったら新しい防具を買います。」(ハハハ。冗談だって。けど大丈夫かい?ここでは相当の金額を稼がないと設営費に消えて元が帰ってこないが。)「大丈夫だ。料理が人を呼び、食った人が人を呼ぶ。それが有名店の秘訣だ。」(まだ名も轟いてない料理だけどね。)老若男女問わず、人を落とすにはまずは胃袋からだ。決戦は明日。この通りの売上ランキングはこのおしるこが頂いた。
当日。祭りが始まる前にギルドや、ギルド宿、ホテルにビラを配り、宣伝をする。始まると同時に王宮通りは貴族や、平民で溢れ返った。人の殆どが高級店がに流れていく中、この店にも人が並ぶ。「甘いそしてこの白いやつ。モチモチしててこの汁と合うわー。」「マーリーと、コロンを使ってます。」「へー。これがマーリーから出来てるのね。あの実がこんなものになるだなんて。お代わり頂戴。」確実にリピーターが増え始める。やっぱり和食ってすごい。高級店からも人が集まり、売上が伸びている。もうそろそろ餅がなくなる。1度引いて材料の確保をしなければ。「午前の販売は終了します。今から午後の整理券を配りますので並んでください。」整理券を使った作戦。これで午後の売上も確保する。一人一人に次の販売時間を言い渡し、午前の部は終了。団子の数は総数40000個1人の2個ずつもちを入れたため、20000杯は売れた。だが、これでは金貨80枚にしかならない。午後になる前に団子と汁を増産しなければ。「おーい。カエデくん。」ランさんだ。ランさん用に1枚整理券を残している。「どうぞランさん。これを持っていれば優先的におしるこが食べれますよ。」「ありがと。もう売れちゃったの?早いねぇ。まさか売った量が少ないとかぁ?」「2万杯。」「ふぇ?」「2万。」「嘘ついちゃダメだよ。どうせ200杯でしょ?」ランさんに売上を見せる。「嘘でしょ。そんなに資材もないはずなのに。」「マーリーとコロンは爆買いしたので家に帰ればまだ沢山あります。お椀に関しては神の力の応用ってやつです。」(はぁ。何万回土から木を作ったんだろうか。神の力ってもっと神聖なものなんだけど。)元から想定してただろこの神。(ま、その通りなんだけどね!)「まぁその勢いも今のうちよ!」そう言い残し、ランさんはその場を去る。「リルさん。このお金で何か食べてきてください。俺は仕込みをするので。」リルさんにポケットマネーを渡し、別行動をする。(いいのかい?せっかくの祭りなのに。)「俺にはやるべきことがまだある薔薇戦にも出なきゃだからな。」(出るのかい!君にしては珍しいじゃないか。けど薔薇戦って明日だった気がするけど。)「ポーション作んなきゃだし。もっといえば俺は祭りみたいな騒がしい行事は好きじゃない。」(まぁ祭りの楽しみ方は人それぞれだし。強制はしないさ。)家に戻り、仕込みを済ませ、ポーションを作る。多分ランさんも出るだろうしマルドも出るだろう。しかも薔薇戦は自由参加。どんな猛者が来るかはわからない。念入りに準備しておいて損は無いだろう。
午後の部結果は2倍の量を用意したが、残り1杯を残し完売。「やぁカエデくん。来たよ。さぁ君の自慢の料理出してもらおうか。」ランさんにおしるこを出す。「これがマーリーとコロンを使った料理だって?コロンは原型があるから分かるけどマーリーは見つからないなぁ。」そう言いながらもランさんは食べる。「んん!美味しい。コロンの甘さだけじゃなくて砂糖も入ってる。しかもこのしょっぱさは塩だ。塩のしょっぱさが、甘さを引き立ててる。しかもこの白い塊。もちもちしてるしコロンがくっついてたり汁を吸ってるからこれ単体でも美味しい!」よし!下を唸らせることに大成功。「しかもお腹にたまるからこれはいいな。完敗だ。」「美味かったでしょ?これぞマーリーとコロンの美味さ。報告することがあります。」「なんだい?」「俺も薔薇戦に出ることにしました。」ランさんは笑顔を絶やさず大声で笑い始める。「ハハハ!君なら出ると思ったよ。じゃあ私と当たるまで負けるなよ!神殺し!」神殺し?変なあだ名が着けられたものだ。
夜になり、王宮通りは一層賑やかになる。おしるこも午後の倍の量を用意したが、もうすぐ完売。今のうちに今回の売上から設営費を引いておこう。「おい!そこの貴様。」貴族の方だろうか。「はい。」「そのおしることやらを持ってまいれ。」見た感じ俺と年齢は同じか1歳下か。服装はなんともまぁ煌びやかな。髪は銀髪で顔は美を追求したような顔をしている。華奢な体ながらも筋肉で引き締まっている。ただの貴族じゃないな。「4銀貨になります。」「4銀貨そんな細かいの持ってるわけなかろう。ほれ釣りは入らん。」男は金貨1枚ほおり投げる。やべぇ貴族はやることが違うな。よそい終わり、周りを見る。周りの人は貴族や、平民問わず跪いている。「カエデただいま。ってカエデ失礼!」「ブハ!」リルさんに勢いよく頭を打ち付けられる。「よいよい。主ら頭を上げよ。これはなかなか美味いな。主ら名前はなんと申す。」「私はリル·リベラールと申します。この男はカエデ·アズマと申します。」リルさんの口調がいつもと違う。そんなに身分の高い方なのか。「リルさんこの方は一体?」小声で言う。「カエデ知らないの?このお方はこの国の王にしてこのまつりの主催者ローゼン17世ことローゼン·ガズエル様だ。」まさか王だったとは「いい加減頭を上げぬか。このままでは話しづらい。」頭を上げ、ガズエル様の目を見る。目の奥どころか自分の考えを読まれているように感じる。この男只者じゃない。これが王だというのか。「カエデと言ったな。主は確かあの戦いにおいて勝利した神殺しだったか。」王にまでこの話が届いているとは。だが俺の対応を決めたのは確か王だったな。「主は薔薇戦に出るのか。」「はい。私は薔薇戦に出ます。」「ハッハハハ!そうかそうか。いい話を聞いた。カエデよ!貴様負けずに薔薇戦を勝ち抜いてみせよ。そして全てを倒したその先に我は主を待つ。主の戦い楽しみに待っておるぞ!」そう言い残し、ガズエル王は帰っていく。薔薇戦に勝ち残ればガズエル王との決戦。考えもしていなかったが、これはややこしいことになりそうだ。
王が来たということでおしるこの人気は爆発的に上昇した。
次の日つまり薔薇戦当日。
朝ポストを覗くと一通の手紙が入っている。
内容は『王に気にいられる者には栄誉を与える。』という手紙に金の盾。そして王からの手紙。それには取引が書かれていた。
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