第6話 beginning agreement I

ピルグリムを殺したことがバレたらこうなるとは思ってた。だから隠していた。けどバレた。薄暗いコンクリートの個室の中、ひとつの魔石の光に照らされ、ひたすら尋問を受ける。ローゼンでは拷問はしないらし。「君は罪を犯したのだよ。そのまま神獣に召されて成仏すれば良かったものを。私は悲しい。あぁ神よこの愚かな子羊に罰を。」と尋問官と一緒にいる教徒は休まず言う。「なんでこんなことをした。」俺は嘘偽りなく「殺されそうだったんだ。どんな生物でも襲われれば逃げるまたは戦って相手を殺すことを選ぶだろ。」「だから貴様は涙を流して笑顔で召されればよかったんだよォ!」と教徒は怒鳴り散らす。この世界の宗教団体にはこんなやつばっかなのだろうか。「俺は宗教に入ってもなければ神を信じていない!神なんてのは人が作った他人を思うように動かす道具だろ!」と今置かれている状況といきなり怒鳴り散らされたことにイラだった。「落ち着いてください。あなたの場合特別にこの場にいるんですから少しは静かにしててください。追い出しますよ!」教徒と俺は怒られた。教徒に関しては尋問中終始睨んでブツブツと文句を吐いてきた。「このままでは貴方は死刑になります。ですが、この国のルール上貴方には選ぶ権利があります。今から2つの選択を出しますのでそこから選んでください。1つ目は死刑を受けいれ、火あぶりにされる。もう1つは決闘を行うことです。」決闘?どういうことだ?「決闘とは聖堂闘技場で戦ってもらいます。本来は被害者や、犯罪者との決闘ですが、貴方はピルグリムを殺した罪として、この国にある2000の宗教の戦士と戦って頂きます。」2000?そんな大軍と戦えるのか?まず戦士ってことは鍛錬の参考にしていた人達と戦えということ。現実的に無理だ。「持ち込みはできるんですか?」「はい。武器はもちろん罠や、ポーションの持ち込みはルール上違反ではありません。ですが、観客からバッシングを浴びますがね。」この際観客はどうでもいい「わかりました。俺は決闘を挑みます。俺がやったことは罪じゃねぇ。正当防衛だ!」答えを出すとリルさんの元へ返してもらえた。

「カエデ!ごめん。リルのせいで。」「構いませんよ。リルさん。あなたに頼みたいことがあります。」「相棒の頼み。聞こう。」リルさんに大量の魔力アップや回復ポーションを作ってもらい、特性のローブを作る。次にドレインの魔導書を買い、決闘まてまの1週間読み続けた。そして最後の仕上げ。これは当日のある条件が揃わないとできないし、できなければ死を意味する高確率で低確率の賭けだ。

当日。

家を出る前にリルさんから贈り物をもらった。「これ、使って。ピルグリムの毛皮をグローブにしてみた。いちいち手に持って使うのは不憫だから。」「ありがとうございます。今日絶対勝ってきますね。」「行ってらっしゃい。うぅ、もうリルを1人にしないで。」「約束したじゃないですか。死ぬまでタッグを組むって。絶対帰ってきます。今ここが俺の居場所ですから。」涙をこらえ、いざ戦場へ。

ルールは簡単。相手の全滅。相手は俺を殺していいが、俺は相手を殺してはいけない。だが俺は帰る場所がある。汚れた自分をリルさんに見せたくない。

「ここでもう一度大罪人アズマカエデの罪を神に伝える。大罪人は神の子ピルグリムを殺した。これは裁かれる罪である。」開始の時間まで刻一刻と時間は迫る。開始の時間になると鐘が鳴り響き、観客の声が鳴り響き、戦士たちは突っ込んできた。まずは数をできるだけ減らす。「蒼炎!」先頭の槍使いは蒼炎を切ろうとするが当たった瞬間蒼炎の効果で爆破。8人ほどダウンしたところで俺は揺さぶりをかける槍使いの頭を踏み、「おいおい俺を裁く戦士たちがこんな弱い奴らでいいのかよ!」と挑発をする。元々統制なんて取れてない集団だ。怒りをあらわにし、突進して来る。蒼炎を乱射し、数を減らしていく。勝利条件が全滅させることのため、蒼炎を乱射し、数をひたすら減らす。魔力が無くなったところでリルさんお手製の魔力アップのポーションをひとつ飲み乾す。からになった容器の中に油を注ぎ集団に投げるそして火の粉で着火。一時的なスタンに成功し、次の段階へ。次は相手の動きを鈍らせるために左手に着けたグローブを突きつける。「吹雪!」と叫び天候を吹雪に変える。転向を変えるほどの魔法のため、一瞬で魔力は尽きる。2本目。相手だけでなく自分にも吹雪の寒さはくるが、ローブのおかげで多少はマシだ。動きが止まった相手から順番に剣で攻撃。だがここで1人の戦士が突っ込んでくる。吹雪の寒さなど効かないやつもいる。だがその戦士は最初に見た拳士だった。蒼炎とフレイムで牽制するが相手は人間離れした機動性と回避で全て避ける。ここに来て初めての被弾。「神を侮辱しその手を汚した者よ。」「あんた。本当に人間かよ。その打撃は魔法だとしてもその足の動きによる回避は人間には出来ねぇ。」さっきの攻撃で吹雪に回していた集中力は無くなり、吹雪は止んだ。「だがこれでいい。知ってるか?人間ってのはよォ急激な環境の変化に弱いんだ。特に寒いところから暑い所に変わった時はな!」次々と戦士たちは倒れていき、「残り1000人!」と司会が言う。さっきの攻撃でここまで行くとは。「だが君の不利には変わりない。裁かれよ。」やつの動きを止めるためにはアブソリュートゼロしかない。だが必ず決まる訳では無い。だが、「アブソリュートゼロ!」地面は凍り、拳士の足を捕える。だが拳士の足に着いた氷は溶けだし、その場で水となった。「まさかお前!ピルグリムか!」「あぁそうだ。名乗ってなかったな。私はマルド。リーフ教の戦士だ。」ピルグリムの出現。ますます成功の確率は上がる。マルドは脚力でジグザグ移動しながら近づく。近くにいる人達の魔力をもらおう。ドレインで魔力収集。半分近くなるまで吸い、そして回避。「ほう。君は僕の動きをよんでいたね。」1度は見た事ある技だ。だが、相手の方が有利なのは変わりない。必ず帰る。そう心にいいきかせ目を閉じ深呼吸。そして目を開けると時間はゆったりと流れていた。

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