第5話 タッグ

8時。起きてそのまま着替えを持って風呂場へ直行。体を洗い、風呂へダイブ。風呂はちょうどいい湯加減で昨日の疲れが湯に解け込むようになくなっていった。しばらくすると他のの冒険者も次々と風呂場へやってくる。体を洗ってから入ると思いきや、魔物の体液やら血やらが着いた体をそのまま湯につける。血や、泥がお湯に溶け込む。早く出よう。全くルールがなってないぜ。まぁ俺もダイブしたけど。「おい坊主。お前、昨日ラフングリズリィ倒した小僧だよな。」「はい。そうですけど。」と答えると「坊主嘘はいけねぇぜ。どっかの金の指輪級の冒険者に助けて貰ったんだろ?それで魔石とドロップ品だけ奪ってトンズラしたんだろ?」銅の指輪のやつがラフングリズリィを倒すのは無理だと思われているようだ。蒼炎と蒼炎を習得する際にできた産物がなければ倒すのは無理だったが。「ですが、倒したのは事実です。あの後レベル8まで上がりましたし。」「まぁ冒険者だから夢を見るのは大切だよなハッハハハ!」男達が爆笑している間に風呂から出る。着替えが終わり、ギルドに行くと、1人の紅い髪の少女が受付嬢と話している。「私とタッグ組んでくれる人いないかなぁ。」「貴方のスキル結構珍しいから頼めば入れてくれるんじゃない?」「人と話すのはお師匠との修行並みに嫌い。」クエストボードを見て何かいい依頼がないか探す。「あ、カエデさん。お風呂にはいられたんですね。」「あぁ、どうも受付嬢さん。冒険者って体洗わずに湯船に浸かるんですね。」俺の言葉を聞くと受付嬢は笑いながら「それはグリドのパーティーですね。あいつらマナーとか守らないクズな生物ですから気にしなくていいですよ。」相変わらず受付嬢の毒舌がやばい。さっき話していた少女はすぐそこの柱に隠れてこちらを片目で見つめてくる。あんな小さな子でも冒険者になれるのか。流石異世界。「彼女は?」と聞くと受付嬢が答えようとした時に「リル。」と、応えた。「彼女は珍しいスキルもちでしかもスキルを5つ持ってる珍しい人材なんですよ。」そう説明すると受付嬢はなにか思いついたかのような顔をした。「そうだ。カエデさん。この子とタッグを組みませんか?タッグを組めば戦闘で楽になれますよ。」戦闘が楽になるのはいいが果たして使えるのか。「少女を守りながらの戦闘はちょっと」と応えると「リルはレベル12。指輪は銀だしカエデよりも冒険者経験は長い。どうせみんな口々にこういうんだ。ガキは連れてけねぇって。」まさかこんな少女に負けるとは。「わかりました。」そう応えると完璧に体を隠し「ほんと?」と聞く。「はい。俺的には自分より上の階級の人と組みたかったので。」「カエデいい目持ってる。よろしいリルがタッグ組んであげる。」そう応え、タッグとして成立した。「リル良かったじゃない。カエデさん。リルに迷惑かけないように頼ってあげてくださいね。」受付嬢の説明によるとタッグは交流を深めるために同じ建物で暮らすことになるらしい。リルさんが言うには「私の住んでるところに住めばいい。部屋は沢山空いてるから。」とのこと。街を歩けば冒険者達に「おいルーキー少女と二人きりとは。お前さん、まさかロリコンかよ。」と冷やかされる。冷やかした相手を無視していたが、リルさんは風の魔法で冷やかした相手を吹き飛ばした。リルさん怖し。しばらく歩き、街の北側につくと、1件だけ古いレンガの家が見える。「ここ。」リルさんはいつからここに住んでるのか。そんなことを思いながら家にはいる。入るとフラスコや、鎌など魔女の家のような内装をしていた。「ようこそ。我が相棒よ。」とけだるげそうに言った。部屋に案内され、部屋を見る。部屋は埃まみれで本が床を支配している。リルさんから掃除用具を借り1時間かけて掃除をやり、宿から新しい拠点に荷物を運ぶ。「早速依頼をこなしにレッツラゴー。」気の抜けた声は響くわけもなくゴーと伸ばすはずがすぐに途切れる。最初の依頼はスライムとナイトウルフを4体討伐。道中で少し会話を混じえながら歩いた。「リルさんって何使うんですか?」「魔法。」「何の魔法が得意なんですか。」「秘密。」3文字以上喋ってくれ。そう思っていると早速魔物が現れる。「リルさん戦闘態勢に!」そう言い、リルさんを見るとリルさんはポーションをがぶ飲みし始めた。1本、2本と飲んでいき、3本目を飲み干すと「カエデ下がって。」と指示が出る。「合図したらすぐに突っ込んで。まずはナイトウルフから。」そう言うとリルさんは「目をつぶって!」と言う。言われたとおり目をつぶるとリルさんの杖から神々しくそしてめっちゃ眩しい光が出される。「ゴー!」の合図とともに俺はナイトウルフめがけ突進。一体目は剣で頭部に突き、2体目はフレイムで焼き殺す。目のないスライムには効果がないらしく、リルさんの方に向かっていった。このままじゃまずい。昨日光に言われたとおり狼の毛皮をスライムの方に向け使った。そうすると自然と「アブソリュートゼロ!」と言葉が出て冷気がスライム2体を氷の塊に変え、風に当たると粉々に砕け魔石だけを残していった。これがピルグリムの力。だが使った魔力の量が多く、その場に倒れる。「カエデ!大丈夫か?さっきの攻撃何?とりあえずこれ飲んで!」とリルさんの薬を飲む。飲み干すと魔力は全回復。リルさんは俺が持っていたナイトウルフの毛皮を取り上げ、目を輝かせる。「この光の筋間違いない。ピルグリムの証。これ、どこで見つけた?なんでカエデが使える?」と、質問をひたすらしてくる。「多分コンセィーブってスキルのおかげだと思います。」「リルのスキルのひとつ『スキル鑑定』で見てみる。」この時のリルさんの目はやる気と興味に満ち溢れていた。「スキルはほかのピルグリムの力を魔力を使い使用可能。つまりさっきのアブソリュートなんちゃらによる魔力枯渇で倒れたと。まさかこんなスキルがあるとは。これはエクストラスキル級またはそれ以上。」魔力を変化させて使用か。魔力が尽きたら倒れるのにこのスキルは欠陥だらけなのでは?それとも威力の強い魔法を使ったからだろうか。「リルさんは神を信じますか?」ナイトウルフの毛皮を見たんだもし神を信じていて崇拝しているとなると確実に裁きの対象にされる。「神は信じてる。けどなにか理由があるとりるは思う。」俺はローゼンに来るまでのことを話した。異世界人であることは隠して。「なるほど。リルは神は信じるけど崇拝はしない。さっきの話を聞く限り襲われたから殺した。それは正当防衛。」正当防衛か。「リルさんはピルグリム見たことあります?」リルさんはこくりと頷くと「2回ある。1人目はお師匠。もう1人は聖堂闘技場で見た。」リルさんには師匠がいるのか。けどあの家にはリルさん以外居なかった。もしかしたら違う国にいるのだろうか。「お師匠様は今どこに?」と聞くとリルさんはうつむき暗い顔で「お師匠は去年死んじゃった。病気だったらリルの作った薬で何とかなったけど病気じゃなかった。」聞いてはいけないことを聞いてしまった。「ごめんなさい嫌なこと聞いてしまって。」「別にいい。カエデにはいつか言わないといけないと思ってた。けどこれを聞いたからには死ぬまでタッグ組んでもらうから。」死ぬまでとはこのロリっ子大きく出たな。その後残りのスライムとナイトウルフを倒し、ギルドへ戻った。

「おかえりリル。そしてカエデさんお疲れ様です。どうでしたか?リルの邪魔になりませんでしたか?」「はい。リルさんの指示通り動きました。」リルさんは目を輝かせながら「ナノ姉!あのねあのね。カエデが狼のピルグリムの毛皮の力を魔力で出したの!」と親に今日あったことを自慢げに報告するように言った。ナノさんって言うんだ。「ピルグリムの毛皮?リルったらカエデさんみたいな新米冒険者がピルグリムの毛皮なんて持ってるはずないでしょ?」「ソウデスヨハハハ。」ギルドで酒を飲んでいた連中はリルさんの言葉を聞くと一目散にギルドから出ていった。「今日は俺がごちそうしますよ。何か食べたいものは?」「肉!ステーキ食べたい!めっちゃ厚いやつ!」親交を深めていくためにもここは財布の紐を緩めるか。

ご馳走した結果お財布が冷たくなりましたとさ。

そして2週間が経つ。

相棒の朝は早い。朝6時に起き、朝の鍛錬。闘技場で見る剣士の動きや、剣の素振り、腕立てなどトレーニングを行う。リルさんからピルグリムが出る可能性があると聞いてから毎日通うようになった。鍛錬の後商店街へ朝の食材調達。沢山の国や村から物資が運ばれてくるだけあって沢山の食材が道を飾る。買い物を終えると次は朝食。今日は卵が手に入ったため、目玉焼きとベーコンを焼く。米に似た穀物も手に入ったため、釜で炊く。一通り朝ごはんを作り終わると次はリルさんを起こしに行かなくては。「リルさーん。朝ですよ!今日のご飯はベーコンエッグと白いごはんですよー!」ひたすら呼び続けて2分。眠たそうな顔と夜なにがあったか聞きたくなるようなをして「おはよう。」と眠たそうに挨拶をする。ご飯を食べ終わったあとはリルさん直々に魔法とポーションの講義。リルさんは魔力生成があまり得意ではないようでポーションで補っているだとか。おかげで魔法の使い方と魔力制御、魔力回復、魔力アップのポーションを作れるようになった。

こんな日が毎日続き、ある日の朝。いつものように朝食を食べ、食器を洗うとドアがノックされた音が聞こえる。「はーい。」ドアの向こうにたっていたのはローゼンに来た時に見た甲冑の兵士と神父らしき男だった。「お前がアズマカエデか?」「はい。そうですが。」そう応えると神父は怒りに満ちた顔をし、「アズマカエデ。貴様には神殺しの罪がある。来てもらおうか。」遂にピルグリムのオオカミを殺したのがバレてしまった。

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