第4話ローゼン聖堂王国

「ようこそローゼン聖堂王国へ。入国許可証はお持ちですか?」ビークの爺さんから貰った銀の許可証を渡す。「銀の許可証ですね。ではこちらを。この免除書をギルドが経営する宿に提示しますと、宿代が免除されます。」銀の許可証にはこんな特典がつくのか。「他にはどんな入国許可証はあるんですか?」「3段階あります。銅、銀、金の3種です。銅は3年間の入国許。価格は銀貨10枚です。銀の許可証には無期限の入国許可、そしてギルドが経営する宿へ無料で宿泊。価格はは金貨1枚です。金の許可証は銀の許可証と同じく、無期限の入国許可。そして食事代の免除。そしてギルドが経営する宿と、それ以外の個人経営の宿の宿泊費免除。なんと国の経営するホテルへの宿泊許可がつきます。ですが、宿泊費はかかりますのでご注意を。価格は金貨100枚となりますがね。」金の許可証だけ桁がおかしい。持つ人は貴族だろう。「では危険物がないか荷物検査をさせていただきます。」門番はカバンとポーチを入念に検査し始めた。「この布に包まれたものはなんですか?すごく冷たいのですが。」やはりそれを聞いちゃうか。「それは旅の途中で襲われた狼の毛皮ですね。冷気を操るんですよ。」できるだけピルグリムを倒したことは隠さなければ。聖堂国だから裁判ごとになるかもしれないし。「冷気を操る狼ですか。ここにはナイトウルフという狼の魔物はいますが、冷気は操りませんね。」あの狼はナイトウルフというのか。「魔物って部位を切断すると肉は残るですか?」「残りませんよ。切った際、その部位は消えてなくなります。」では宿した部分は何故残ったのか。疑問は残るが、とりあえずは入国をしなければ。「危険物はなさそうですね。では、ようこそ神を信じ、神を祀る国ローゼン聖堂王国へ。」門番が開かれ、そこに広がるのはビダーヤ村の男達が言っていた金の装飾をした建物が建ち並ぶ。そして僧侶や、神官、騎士が多くいた。建物は木と、レンガでできている。建物にはシミひとつなく、全ての建物が最近できたかのように感じた。まずは、宿へ行かなければ。街の案内図を見る。街は水路を1つと、街のど真ん中に謎の建物。そして街の南に城がひとつあるようだ。とりあえず案内図を頼りに宿に行こう。

「ようこそ狩人の宿へ。1泊銀貨4枚です。免除書はお持ちですか?はい、確かに。では名前と、血印をお願いします。」名前と血印を押すと、受付は鍵を渡し、説明に入った。「部屋は106号室になります。風呂らシルフの8時からシスの12時までです。洗剤などは持参願います。部屋にいる際は、必ず鍵をベットの横にある棚へ刺してください。鍵を失くした場合、銀貨400枚と、2ヶ月感のここでの労働がありますのでお気おつけください。」

部屋に行き、荷物を置いたところで、次にギルドへ行った。「ようこそギルドへ。冒険者登録ですか?依頼ですか?それとも奴隷希望ですか?」おかしなものが一つ混じってる気がするがここはスルーで。「冒険者登録で。」受付嬢は紙を用意した。「ではこちらに名前と、性別、血印、そしてこの文章を1字1句間違えず書いてください。」文章の内容は、『私は受けた依頼を全身全霊で挑み、失敗した場合、奴隷になる、または身を売ります。』ギルドはブラック企業以上のブラックだ。「これ書かなきゃだめ?」「はい。これは決意表明みたいなものです。依頼を受ける以上生半可な気持ちで挑まれては困りますので。失敗した場合は賠償金を払ってもらいます。払えない場合まぁ地獄に生きたまま言ってもらいます。」と、満面の笑みで恐ろしいことを言った。書き終わり、受付嬢に渡すと、どうの指輪が手渡された。「なんです?告白ですか?」と、聞くと、笑顔で、目と言葉で圧をかけながら「うるせぇ豚野郎でクソ野郎の童〇の生物。お前みたいなやつは一生奴隷として生きればいいんだよ。です♡」と、女性の口から出ない言葉を言った。「これは冒険者の階級を表します。階級はギルドからの進級クエストをクリアしますと昇格します。」階級制度か。多分階級が上になるほど高額の報酬で、危険度の高い依頼を受けれるのだろう。「通常の依頼はあちらの掲示板で選んでもらいますが、進級クエストに関してはギルドから手紙として送られてきます。依頼はパーティーを組んで受けることもできます。しかし、報酬は山分けとなります。」ギルドの中を見ると、作戦会議をする集団や、酒盛りをする集団がいた。平均的に4人パーティーが多く、剣士や、弓使い、魔法使いなど役割分担がされているパーティーや、全員筋肉ムキムキで武器が斧や、ハンマーだけの脳筋集団もいた。「魔石について説明します。魔石は通貨に換金できます。小さい魔石ですと、銅貨になり、中ぐらいのものは銀貨になります。大型の魔物は大きめの魔石を落とします。金貨に変えることができます。」貰える金の量は魔物によって違うらしく、スライムの魔石は銅貨1枚、ナイトウルフだと銅貨4枚のようだ。「度の道中でナイトウルフを倒したんで換金して頂いても?」「わかりました。長を1匹倒されたんですね。では全部で銀貨4枚と、銅貨8枚ですね。」魔石を交換したあと、受付嬢は石版を持って「こちらに手を乗せてください。」と言った。多分ステータスとかスキルとかレベルが見れるんだろうな。『レベル:4 魔法適性率:60 体内魔力量:40 適正魔法属性:炎 固有スキル:ブラスト コンセィーブ メイキング』「ブラストは魔法を自由自在に飛ばすことができます。メイキングは魔法の形を変えることができます。コンセィーブは見たことないですね。もしかしたらエクストラスキルかもですね。」レベルが4ということは魔法書が4ページまで読めるようになった。

登録が終わったところで、次は街の観光だ。街を歩くと、屋台や大道芸で賑わっている。大通りは笑顔でみちていた。しばらく歩くと、ローマのコロッセオのような建物が見える。そうすると異世界版コロッセオから叫び声や、歓声が聞こえる。「あそこで何が行われてるんですか?」と、屋台のおじさんに聞くと、え?こいつ知らないの?という顔をされた。「あそこはね聖堂闘技場と言うんだ。ここローゼン聖堂王国は沢山の宗教が集まっていてね。そのせいかよく争いが怒るんだよ。制動闘技場ができる前は街が戦場になって観光客や、市民が危険な状態だったんだ。そこでローゼン12世は闘技場を作った。宗教の代表者が闘技場で闘うようになり、それが市民の娯楽になり、観光名所になったのさ。」争いを納めるためにローゼン12世が働いたと。「じゃあローゼン12世は皆さんからの好感度が高いと。」「いいや、逆に今じゃ低いね。歴代ローゼン王はドゥルダ教を信仰してたからローゼン12世は他の宗教をこの国から排除しようとした。それが市民の怒りに火をつけちまったんだろうね。市民が反対運動をしてね。ローゼン12世は闘技場で処刑。王の座を子供に移したのさ。」多くの宗教が盛んになるのは多分12世が排除しようとしたからだろう。宗教だけに限った話ではないが、危機を感じれば感じるほど成長する。話を聞いたあと焼き鳥を買い、屋台を後にする。聖堂闘技場に行き、代表者達の闘いを観戦する。片方の戦士は剣を使いながら魔法で牽制する。もう一方は拳に魔法を纏わせ、ひたすら前に進む。飛んでくる魔法を拳で弾いたり、体を捻りギリギリで回避。近づいたところで剣士は足を狙う。拳士はバックして回避しつつ相手が魔法を使う瞬間を見計らい拳を相手の右腕に当てただけで粉砕させる。火や、水のような属性だけではなく、能力増幅や、破壊など様々なようだ。使い物にならなくなった右腕をかばいながら剣士は闘うが、最終的に胸に攻撃を受け気絶。勝負が着いた瞬間に観客席は湧く。そして「殺せー!」「殺っちまえ!」と観客は口々に言う。そうすると勝利した男は「私は無駄な殺生は好みません。我が神リースもそれを望まないでしょう。」と、言い残し、聖堂闘技場を後にした。観客は男の対応に怒りを覚え、バッシングをした。剣士は同じ宗派の人達に運ばれて行った。

宿に戻り、魔法書を開く。2から4ページが更新され、4ページ目には『炎は蒼く、そして白く燃え上がる。触れれば爆発し、炎は身を焦がす。』と書かれていた。下には魔力を込める位置や、タイミングがびっしりと書かれていて 少々読む気が失せる。

次の日。朝早く街の門を出て4ページ目に書かれた内容を試す。まず手のひらに魔力を集める。その後1度集めた魔力を胸まで移動させ、魔力を胸いっぱいに広げながら蒼と白に燃あがる炎と、爆発をイメージする。そしてイメージが最大に達した時、一気に魔力を圧縮し、手に移動させ放出。成功すれば前に炎が飛び、ものに当たった瞬間爆発するはずだったが、気づけば自分の周りが吹き飛んでいる。失敗という訳では無いが、これでは高密度な魔力を打ち出すことは出来ない。そして爆発の音で魔物がよってくる。「お仕事と行きますか。」まず襲いかかってきたのはスライムの群れ。ただ突っ込んでくる行動しかしないため、ステップを踏みながら回避。そして真ん中にある核みたいな石を剣で破壊。そうするとブヨブヨした体は融解し、魔石だけを落とした。まずは1個目。スライムに関しては難なく倒せたが、右腕が発達した熊が襲いかかってきた。熊は四足歩行ではなく二足歩行で突進してくる。熊は接近すると発達した腕を地面に叩きつける。回避しようとするが間に合わず、おもいきり爪による攻撃を受ける。左肩から右腰にかけて三本の傷ができる。ナイトウルフの攻撃とは違い、引き裂く痛みと、衝撃が同時にくる。「逃げないと殺される!」今の頭の中には逃げることだけでいっぱいだった。しかし、熊は次の攻撃態勢にはいっていた。2回目の攻撃。なんとか地面を転がり回避はできたが、このままではいつか当たる。動くと傷が痛い。長い戦闘は出来ないだろう。短期間で終わらせるには相手の目を眩ませる他ない。さっきの爆発を使い、熊の目を眩ませ、熊から距離を摂る。敵は密集し突撃してくる。密集しているなら爆発で一掃すればいい。手に魔力を集め、胸に魔力を移動させ、胸いっぱい広げイメージを混ぜる。イメージと、魔力が最大限に高まったところで一気に魔力を手に移動させる。そうすると手に蒼く、白く燃え上がる炎が浮かび上がってきた。「蒼炎!」と叫ぶと共に炎は熊と魔物の集団に飛んでいく。熊に炎が触れると炎は爆発し、魔物達を飲み込んでいく。爆発が消えるとそこにはクレーターができ、熊の毛皮と、魔石だけが残った。

傷にポーションをかけ、傷の治癒の終わりを待つ。レベルはどのくらい上がっただろう。この魔石の量だったら結構な金になるな。と思っていると傷跡を残し、傷は塞がっていた。魔石と、毛皮を回収し、ギルドに戻る。

「おかえりなさい。ってその血の跡どうしたんですか?」と、受付嬢が問う。「熊と1戦混じえちゃって。」と苦笑いしながら言うと、ギルドにいた冒険者達がこっちを向く。「おいアイツってまだ銅の指輪だよな?」「熊ってあのラフングリズリィだよなぁ?」「ラフングリズリィって銀の指輪級の魔物だろ!?」ほうアイツはラフングリズリィっていうのか。銀の指輪級の魔物だったとは。蒼炎がなければ相手のスタミナが切れる以外の方法で勝つことは無理だっただろう。まず、腹に攻撃を食らって血が多く流れていた時点で長期間の戦闘で勝つのは無理だったが。「とりあえず換金お願いします。」換金すると、スライム20体で銅貨20枚、ラフングリズリィ一体で銀貨20枚になった。よしこれで防具をかう金が増えてきた。「レベルは今どれぐらいですかね?」と聞くと、受付嬢は石版を取り出し、その上に手をのせた。『レベル8』一気に4も増えたのか。今日はとりあえず寝よう。風呂はまぁ明日でいいや。そう思いながら部屋に戻ると、ベットの上に手紙が置かれていた。開けてみると、手紙は真っ白で何も書いていない。しかし、その手紙を見たあと意識は遠のき、そのまま気を失った。

目覚めるとそこは死んだ時に見た何も無い空間。「やぁ目が覚めたようだね。楓くん。」と、聞き覚えがあるが、少し声のトーンが違う声で呼ばれた。「あんたは俺をこの世界に連れてきた光か。」「そうだ。密かながら君をこの世界に連れてきた者として君の旅と戦闘を観させもらったよ。」この光にはプライバシーを守る気は無いらしい。なぜ今になって俺をこの空間に呼んだのかが未だにわからない。「なぜ俺を呼んだ。」「君にある交渉をもちかけようと思ってね。君は狼のピルグリムを倒したね。そこで君にお願いしたいことがあるんだ。」自称神が俺に持ちかける交渉とはなんなのか。なんの興味もなければ期待もないが一応聞いておこう。「君に僕と契約してもらいたいんだよ。」契約?つまり俺にピルグリムになれってことか。「断る。俺は神なんて信じないと言ったはずだ。確かにこの世界には魔物もいればピルグリムという神に契約したとかいう生物もいる。だがそれは突然変異じゃないのか?」神ではなく生物の突然変異。それが俺の考えだ。「確かに突然変異と思うのも仕方がない。その突然変異がこの世界のいたるところで起こっている。僕は君をこの世界に入れる前にあるスキルを授けた。そうコンセィーブだ。そのスキルを使いながら手に入れた狼の尻尾を使うがいい。まぁ今君に決断するのは求めていない。ピンチになった時もう一度君に問おう。」そう言って光と謎の空間は消え、気がつくと俺は布団を被ったままベットで寝ていた。光の言っていたことが本当だとは思わない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る