第3話 FROZENWolf

川に沿って歩く。まだこの世界の北や、南がわからない今川がナビのかわりだ。川は透き通るように綺麗で、魚が何匹か泳いでいるのが見えた。丁度太陽が真上に位置してた。「飯にするか。」ビダーヤ村で買ったパンや、野菜を食べる。一応3日分は買ったが、いつ食糧難になるかわからない。そこで保存出来るパンはできるだけ残していた。しかし腹が減る。このままでは歩くのは困難。近くに川。泳ぐのは魚。竿はない。ふと頭の中にある方法が思いつく。1度だけだが、テレビで見たことがある方法だ。石を積み、川の一部に流れのない場所を作る。それでよってきた魚に気づかれないように槍でつく。しかし槍がない。近くに木が生えていたので、長い丁度いい太さの枝を1本頂戴した。ロープと手ぬぐいでナイフと木の棒を結ぶ。これで簡易的だが槍の完成だ。次に罠となる岩の壁作り。なるべくゴツゴツしてない石を積む。積み終わり、少し時間が経つと魚が何匹か罠の中に入る。魚が動きを止めたところを1突き。1回目は失敗。もう一度。次一点集中し、魚が動きを止めたところで「今だ!」グサッ!確かに魚を突き刺した感覚がした。まずは1匹目。その後も感覚を掴み、5匹目を捕まえるまで続けた。

捕まえた魚は内蔵をとり、枝に刺す。さっきの木から落ちている乾いた枝なるべく多く集め、「燃えろ。」火の魔法で火をつけ魚を焼いた。焼き上がるまでにさっき作った罠を崩していく。元々の形に戻し終わると、ちょうどいい感じに焼き上がっていた。果たして食えるのか。だが何事も試すことから始めなければ。勇気を振り絞って魚を食べる。「美味い!」日本で食べる魚よりも断然に美味かった。多分ここの水が汚れていないことと、栄養のある藻がしっかり育っているからだろう。何もせずにこの美味さとは。一応熱中症対策にと買っておいた塩をかける。塩は兵士の英気を養うためにも使われる。何処ぞの船のコック長が「塩がないと戦力に影響するぞ!」と、塩の大切さを主張してた訳が今だからこそわかる。ありがとう。コック長。

ここでまた思いつく。塩があれば魚保存できるじゃん。しかし、保存を考えてなかったため、そんなに量はない。ローゼン着いたら絶対買っとこ。

魚と塩のおかげで、腹は満たされまた歩こうという気持ちになった。ひたすら歩く。時々川の水を飲み、ひたすら前へ。歩き続けると、日が暮れ、夜が近づいてきた。今日は野営か。火を焚き、夜へ備えた。

夜。

日本の夜とは全く違う。街灯もなければ、電球や、LEDの光もない。火の光と、雲に隠れる月の月光だけが存在する世界。

どこから襲われるかわからない。俺は剣を抜き、背中を川のある方向に向け、警戒態勢に入った。木の棒に布を巻き、火をつけ投げる。少しでも見える場所を作らなければ。火をつけた棒を投げた所を何かが避けて通っていく。暗闇から光る玉が10個見える。恐らく薪の火に反射しているのだ。1匹の狼のような生き物が暗闇から飛び出してくる。俺は全力で横に飛んだ。「アウゥーー!」と、飛び出してきた狼が吠えるとそれを合図に9匹の狼続々と暗闇から出てくる。俺は火のついた木と、剣を振り回す。1匹の狼が、大きくジャンプし空中で一回転。そして思い切り尻尾を地面に叩きつけた。そうすると、冷気が火に目がけ飛んできた。冷気に触れた火は一瞬で消えてしまった。尻尾をよく見ると光の筋が集まっている。他の狼の尻尾には光の筋はない。つまり狼の尻尾に神が宿っている!「狼版ピルグリムか!」おそらく冷気や、氷を司る神だろう。多分あいつがこの狼の長に違いない。ならば長を先に倒す他ない。憶測ではあるが長さえ倒せば他の狼は逃げていくはずだ。とりあえず火をもう一度つける。そして長以外の向かってくる狼を追い払っていく。長はまた火を消しに来る。魔法も何度も使えるわけではない。体感的にあと3、4回だろう。剣をを降っても剣を振るう生活をしたことがないため、1度も当たらない。ただ振り回しているだけでは余計に体力を消耗してしまう。一度剣をしまい、かまえる。向かってくる狼に集中。距離が狭まったところで、剣を水平に振る。見事に狼に攻撃を与えた。ちょうど胴体を捉えたようで狼は悶え、小さな石を落とし、消えていった。「致命傷を与えれば石になるのか原理は分からんがさすが異世界。」透かさず2匹目の攻撃。近ずいてきたところを火の魔法で動きを止め、剣を頭に突き刺す。2匹目撃破。残り8匹。周りの狼は動かず、長だけが前に出た。「グルルルルルル!」長は唸り、そのまま突進。そして体を横にねじり、回転し、尻尾による冷気攻撃。間一髪で避けたが、体制が崩れる。長はそれを見逃さず噛み付いてきた。左腕に噛みつかれる。「ア゙ァァ!痛てぇ!」痛い。噛まれた所から血が流れる。今まで見たことないほどの量が。これが異世界で生きるということ。今、警察はいない。自分の身を守ることの出来るのは自分自身だけ。振りほどけないと思い、顔目がけ、剣を振るう。長は後ろへ後退。一筋縄では勝つことは出来ない。長が警戒しているうちに傷口にポーションをかけ、治癒をする。店員が言うには2〜3分あれば噛まれた程度なら治ると言っていた。残り魔法の撃てる回数は3回。睨み合っている時間が続いている中剣布を巻きつける。巻き付け終わったあとあることに気づく。寒い。長を見ると、尻尾を立て、冷気を周囲に撒き散らしていた。薪の火は消え、燃えていた木は凍りつく。このままでは火を使うことが出来ない。おさに向かって突撃し、剣を振る。長はまた後ろへ後退。その時、冷気を放出するのを止めていた。つまり冷気を放出する時は必ず止まっていなければならない。「ひたすら動かし続けるのが一番か。」長の足を止めないようにひたすら前へ。そして火を前に飛ばし、長が日を消しに来るのを待つ。長が冷気を前に飛ばす体勢に入った。そしてまた一回転した所を剣で狙う。「今だ!」魔法で巻き付けた布に今出せる最大火力の炎を火剣に纏わせる。布は勢いよく燃え上がり、狼の尻尾と、胴体を切断。尻尾は地面に落ち、そのままになる。擬似ファイアーソードはまだ燃えている。この戦いの中で剣筋は鋭くなり長の体を貫く。「グルルァァ!」と、悲鳴をあげ長は少し大きめの石を落とし、消えていった。他の狼はその場から逃げ去り、残ったのは長の尻尾だった。尻尾には光の筋が残っていた。「宿した本人が死んでも切断さえすれば残るのか。」とにかく疲れた。とりあえず尻尾の毛皮だけをナイフで剥ぎ、疑似ファイアーソードで焼く。丁度焼けたところで炎は消え、残ったのは煤だらけの剣だけだった。肉を食べる。「まっず!」苦味が舌を刺激し、口の中で悪臭が漂う。これは人の食べる物じゃないと、思いつつも全て食べ切った。そして満月が顔を出した。「今日は寝よう。」初戦闘にして、初のピルグリム戦は今幕を閉じた。

日が昇り、朝を迎えると、俺は木の枝を何本か集め、火をつける。魔力は1日たてば全回復とまではいかないが、回復するようだ。そして川に石の罠を作り、魚を獲る。火にかけ焼き上げ食べる。昨日の狼の肉のせいか味がしない。腹が膨れ、尻尾の皮を触る。「冷た!まだこんなに冷てぇのかよ。いや待てこいつを上手く使えば魚の保存ができる!」毛皮を川で洗い、大きめの布で魚をと、毛皮を包む。これで保存は完了。昨日、狼が落とした石を拾い、また前へ進んで行った。どこを見ても草しか生えていない野原に道が見える。多分この道を行けばローゼンへ行けるのだろう。狼の襲撃があったが、無事にローゼンへ着くことが出来そうだ。

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