第2話 神のいる世界

知らない空そして知らない景色。蒼空には鳥や、ドラゴンのような生物がのびのびと、空を飛んでいた。

とりあえず自分の荷物や、体を見た。体には傷一つなく、本当に撃たれたのかと思えるほどに無傷。腰にはポーチが付けられ、中身を見ると、金貨1枚銀貨4枚、銅貨10枚入っていた。そして綺麗に折りたたまれた地図が入っていた。場所こそわからないが、とてもありがたい。とりあえず近くの村を目指すことにした。道中でスライムや、動く植物、巨大なモグラなど地球にはいない動物を見かける。ここが異世界であることを再認識すると共に、襲ってこないかなど恐怖を感じた。歩いてから何時間かかっただろう。日も傾き、夕焼けが綺麗に見えてきた頃、無数の光が俺の目に入る。走ってその光の場所まで行くとそこには村があった。やっと休めると、少しほっとし、村に入るとりあえず宿を探そう。「1泊2銅貨」日本語なのか?まぁ言葉が通じるなら困ることは無いだろう。「2泊したいから4銅貨。この村位置って分かります?」「あんた地図なんて持ってるのかい。地図は高いんだよ。ここはビダーヤ村ここだね。」宿のおばさんに部屋を借り、位置がわかったところで次は酒場を目指した。目的は情報収集。この世界に来たばかりの俺には情報がとりあえず必要だ。そ酒場で1つの集団に声をかける「ここはガキの来るところじゃねぇぜ!」「お聞きしたいことがあるのですが。」「お前みたいなガキに話すことなんてねぇよ。ガキはさっさと帰ってママに絵本でも読んでもらいな。」やっぱりそう簡単には教えてくれないようだ。「そうですか。なら仕方ないですね。あなた達が昼間から仕事もせずに酒を飲んでいたことを奥様方に言うしかないですね。」これは一種の賭けだ。今日が何曜日でいつ仕事が休みなのかなんて俺は知らない。だが、昼間から酒を飲んでいることは、どんな世界でもいいことではないはずだ。「チ!で?何を聞きたい。」ビンゴ!やはり、どの世界でも嫁という兵器は最強のようだ。「では、神を宿した者について。」まずは1番の疑問を解決しなければならない光は大まかにしか説明しなかったし、未だ疑問が多い。「神を宿した者?それってピルグリムの事か?俺は詳しいことは知らねぇし見たこともねぇが、なんでも自分の体の1部を捧げて契約するとかなんとか。」光と同じことを言っていた。そして名称もわかった。ピルグリム。確か意味は巡礼者だったか。まぁこの世界では神を宿した者らしいが「次にこの地図で1番栄えてる国は何処だ?」「この地図だったらローゼン聖堂王国だな。ここら一帯の小国や、村を支配する国だ。一応ビダーヤ村も支配されている。だから各地から物増しがローゼンに集まるんだ。1度だけローゼンに仕事では行ったんだけどよォあそこはすげぇ街の建物一つ一つに金の装飾が施されていてよ、騎士の甲冑はどれも洗練されたものばかりだ。」ローゼン聖堂王国か。まずはそこを目指すとしよう。そこで資金調達や、情報収集をしよう。これが最後の質問だ。これはこの世界で生きてくために1番必要なことだ。「じゃあ最後にひとつ。1番稼げる職業ってなんだ?」この質問をした瞬間店の中は静まり、皆大声で笑った。「ぶはははははははははははお前よくもここまでこれたなぁははは!」「ははは!地図を見た時から思ってたがよォお前。どっかのおぼっちゃまかよ!はぁ腹いてえ。」うぜぇ。とりあえず俺は家出した少年ということにした。「まぁ稼げる職業って言ったら冒険者だな」「冒険者だな。」冒険者か。1番安全で楽な仕事だったら良かったのだが、やはり現実はそうも行かないらしい。「ありがとうございます。では」「待ちな。お前ピルグリムのこと知りたいんだろ?なら村外れにある小屋を目指しな。そこにピルグリムに詳しい爺さんがいる。」酒場をあとにし、俺は村外れにある小屋を目指した。小屋に辿り着くと、「こんな時間になんの用じゃ」と、1人の老人が出てきた。「ピルグリムについて詳しく知りたい。」「ほぉピルグリムとな。お主のような若者がピルグリムについて知りたいとは。今日はもう遅い。話は明日にしよう。」そう行って老人小屋の中へ帰っていった。

次の日。老人に会い、話を聞く。「ピルグリムとは神を宿した者じゃ。神を自分の体の1部に宿し、その力を使うことが出来る。神は人の作ったもの全てに宿るという話があるのじゃよ。」つまり八百万。「では何故ピルグリムは数が少ないのですか?」「それは神に選ばれし者にしかピルグリムになる資格はないからじゃ。神は気まぐれじゃ。認められる人間は極僅かじゃからかな。神は人間に限らず物や道具にも宿る。」なるほど。光の言っていたことは本当らしい。人間に限らないか。つまり動物にも宿る可能性があると。「どんなピルグリムがいるのか知ってますか?」「神にも色んなジャンルがある。星の神や、刃の神、火の神など上げてけばきりがないない。神だけが宿せる訳では無い。中には悪魔を宿す者もいる。それをフィンドと呼ぶ。ピルグリムは体の1部だけなのに対し、フィンドは体全体に宿る。力を使ったら最後、悪魔にその体を乗っ取られてしまう。」この世界は神だけでなく、悪魔も存在するのか。「お主も気おつけていた方がいい。特に騎士の悪魔には。」「騎士の悪魔?」「やつが来た都市に、生存者はいない。やつは厄災を振り撒く者じゃ。」何故生存者ゼロなのにこのおじさん知ってるのか。「おじさんはなんの仕事をしていたんですか?」と聞くと、おじさんは笑いながら「わしは冒険者をしていたんじゃよ。まぁ恐怖に負けてこんな村に逃げてきた老いぼれじゃがの。あと名乗ってなかったな。わしはビークじゃ。」「僕は東楓です。」「ほうカエデとな。ここら辺では聞かん名前じゃな。次はどこに行くかとか決まっておるのか?」「とりあえずローゼン聖堂王国を目指そうかと。」行く先を伝えると、ビークの爺さんは家の奥へ行き、何か取ってくるとすぐに戻ってきた。「じゃあわしからの餞別じゃ。あとローゼンに行くなら注意した方がいい。あそこはピルグリムや、フィンドが多く集まる国じゃ。どこにピルグリムや、フィンドがいるかわからん。」ビークの爺さんは剣と、『通行許可』と書かれた銀の板を僕に渡した。「これがあれば金を払わず、ローゼンに入ることが出来る。もうワシには必要のないものだからね。ほかの国に入る時も、許可証が必要じゃ。だがその許可証はローゼンや、ローゼンの支配下にある国にしか使えん。他の国にそれを出したら捕まって拷問されるから注意じゃ。」この世界では戦争をしているのか「ありがとうございます。もう今日は帰ります。明日には出ようと思いますので。」「気おつけてな。何かあったらまた来るといい。」ビークの爺さんに別れを告げ宿に戻り、そのまま寝る。

次の日。食料や水など旅に必要なものを買い、村を出ようとすると、荷車が、村に入ってきた。あれはなにか聞いてみると、「あれは魔導書を売る荷車でね。1ヶ月に1度この村に来るんだよ。生活に役立つ魔法から戦闘に使う魔法までいろんな魔導書を売ってるんだ。」魔導書か。さすが異世界。魔法があるとは。とりあえず1冊買ってみよう。「いらっしゃい。見ない顔ですねぇ。もしかして旅をされてるのですかァ?」胡散臭そうな顔をしたおじさんだなと思いつつ、「魔導書が欲しいのですが。」「ほー!お客様でしたかァこれは失敬。で?あなた魔法適性はァ?」魔法適性?そんなものが存在するのかまさか低ければ低いほど使えないとか。「知らないです。」「そうでしたかぁ!じゃあ今から測りましょ!この石版の上に血を流してくださァい。」血流すの?痛いのは嫌だが、とりあえず指先をさっき買ったナイフで切る。痛い。日本じゃこんなことやらないのに。ナイフの血を拭き取り、おじさんはの話を聞く。「魔法適性はァ。ホウホウ50。まぁ平均的な数値ですねェ。これから成長してけばどんどん上がっていくので頑張ってくださァい。」良かった低くなくて。適正率を確認したところで、魔道書を見る。今は旅に必要な魔法さえ使えればいい。そこで目に入った『火の魔法』と書かれた魔導書を手に取る。「これで。」「お買い上げありがとうございまァす!では使い方を。魔導書は使い方が記されてまァす。これ通りに使えば魔法が使えるのでェす。しかし1度読んだ本は読んだ者以外読むことができませェん。魔導書は読んだ者のレベルが上がれば上がるほど読めるページが増えてきまァす。」レベルが高いほど威力ではなく使える魔法の量が増えるのか。「では金貨1枚でェす。」「は?」「当たり前でぇす。魔導書は作るのに相当な力がいるのでェす。なのでこれぐらいはしまァす。」痛い思いをしたあげくなけなしの金貨まで取るとはだが夜は火がいる。必要な出費だろう。「ありがとうございまァしたァ!またのご利用をお待ちしてまァすよ!」魔導書を開く。しかし、1ページ目しか読めず、あとのページは白紙だった。レベル1か。読んでみると。「火を操りしもの。火をイメージし、イメージを指先に集めたまえ。」書かれたとおりそれを実行。そうすると、指先から火が出てきた。「小さいな。」「最初はそんなものでェす。一応その火なら薪ぐらいなら燃やすぐらいは出来まァす。」今はこれだけで十分だ。魔法を得たところで、いよいよ出発。最初に上方をくれた男達が見送りに来た。「頑張れよぉー!おぼっちゃま!ハッハッハ!」全く。だが、日本にいた時には絶対になかったことだ。今、自分が知らない土地を歩く時、楽しみと、不安を噛み締めながら俺はローゼン聖堂王国を目指した。

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