LOSTpilgrim

@soara14200

第1話 TurningDays

俺は神なんて信じない。

神なんてのは人が作った幻想で、他者に信仰させ人を操る道具に過ぎない。そうあの夜までは。

東 楓。19歳。大学生。将来就きたい職業もなければこれといって趣味はない。12月25日縁もゆかりも無いこの日に1人ライトアップされた街を歩く。周りからは楽しそうなカップル達の声。そしていつもの様に行きつけの店に行き、食事をする。いつも通り進んでいた時間は突然狂った。ドアを勢いよく開け男は店に入った。「おい!金を出せ!ありったけ全部だ!この店にいるヤツら全員このバックに金目のものと、財布を入れろ!」最初は何が何だか分からなかった。しかし男の表情、手に持っている銃、店員と、客の顔を見た瞬間分かった。強盗だ。ちょうど金の周りが良くなるクリスマスを狙うとは考えた男はそれだけ金に困っているのだろうと悟った。「まぁまぁ少し落ち着きなさい。」と、歳とった店員が近づく。「うるせぇ!近づくんじゃねぇ!」バン!店内に、銃声が響き、火薬の燃える臭いが微かだが充満がした。撃った弾は店員の肩に直撃。その瞬間血が吹き出し、撃たれた店員の悲鳴が上がり、それに続くように店内にいた全員の悲鳴が鳴り響く。「おい!そこのお前全員から財布と金目のものを集めてこっちに来い!」指名されたのはまだ10歳になったばかりの子どもだった。その子はレジや、客から金や、時計、指輪などを回収し、男の元へ戻る。「こいつは俺の人質だ!」人質になった子の親は「やめて!その子だけはその子だけは」と、叫ぶ。「代わりに私が人質になるからお願いします!」と土下座し、男に必死で言う。しかし男は母親の声を聞かずに店を出ようとする。このまま静かにしていれば俺は助かる。「助けて!助けて!」と、恐怖のあまり子どもは泣き始めた。「うるさい!黙ってついてこい!」子どもを強引に引っ張る男それを見て俺はとっさに体が動いた。男の胴体目がけ突進。犯人と俺は地面に勢いよく倒れた。そして男は「ふざけるなこのクソガキ!」と怒りをあらわにした声で怒鳴り散らしながら俺に銃を乱射した。体のあちこちに銃で穴を開けられ、ついには心臓に弾が当たり俺は死んだ。

気づけばそこは何も無い空間。何も無く、色もなくただ真っ白な空間。人の形をした光が立っていた。「ここはどこですか?」と、人の形をした光に問う。「ここは無だ。全ての人が死に、最後にたどり着く地だ。お前は死んだのだ。若き芽を助けるがために自らを犠牲にしたのだ。」と、光は俺に説明した。「ところで楓よ。君は神を信じるか。」と、俺の名前を言い、光は問いかけた。「神なんてのは人が作った幻想だ。信じるはずがない。」「しかし今ここに私は存在している。」あたかも自分が神だと言っているように聞こえた。「お前は神を信じないのか。若き芽と、多くの命を助けるがために自らを犠牲にし、そして神を信じない。合格だ。お前には第2の人生をおくってもらおう。そう『神の存在する世界』で。」神のいる世界。光は確かにそう言った。「神のいる世界か。まるで元いた俺の世界に神はいないと言ってるように聞こえるが。」「はははすまない言い方を間違えてしまったな。厳密には神が現界している。いや、宿っていると言った方が正しいか。」「宿る?どういうことだ。」「言葉の通りだよ。神に選ばれた人間が自分の身体の1部を代償に神と契約するのさ。」神に選ばれてそのうえ神に身体の1部を渡すとはなんとも非道なシステムなのだろう。「もちろんその分神の力を使えるようになる。契約するもしないも自由だがね。おっとそろそろ時間だ。ここに長居してはそのまま成仏してしまう。最後に聞きたいことは?」最後に1つか「あの後どうなった。」他に聞きたいことなんてなかった。しかし自分が守った命だその後が知りたい。「犯人は逃亡を試みたが、君のタックルのおかげで怪我をしてそのまま駆けつけた警察官に逮捕。みんな無事だよ。君の守った子どももね。」よかった。それを知れただけでも充分だ。「では君をあちらの世界に送るよ。目を閉じて。開けていいと言うまで目は閉じたままだ。今からきおつけなければいけないこを言う。1つ、自分が異世界から来た者だということを隠すさなければならない。1つ、神を宿した者には気おつけること奴らは宿した部位にタトゥーのような模様がついている。それで見分けるのだ。」と、光はいくつか注意事項を言った。注意事項の中でも1つ疑問がある。それは最初に言ったことだ。異世界から来たことを隠すこと。何故隠すのか何か知られたらまずいのか。「これで以上だ。私は君を見守っているぞ。さぁ目を開けたまえ。」目をゆっくり開ける。そこにはライトアップされた木もなければビルもない。そこに広がるのは平原。風を邪魔する障害物はなく、勢いよく風は草を揺らし、吹き抜けて行った。

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