第21コーナー「扉の向こうの扉」
プレハブ小屋から扉の外に出た俺らは部屋の中に居た。
壁や天井も床も赤一色に塗られた部屋で四方に扉がある。
「これは……どういうことだ?」
水槍が怪訝な顔付きになる。
部屋を出た先が部屋という新たな展開に、みんなは困惑しているようだ。
一足先にプレハブ小屋を出た夜闇は周囲を偵察していたらしい。
「扉の向こう側も同じで、赤い部屋があるだけだったぜ」と、肩を竦めた。
夜闇の軽卒な行動に、水槍が呆れた顔になる。
「罠でもあったらどうするつもりだ。不用心な奴め」
「そん時は、拳で蹴散らす!」
夜闇が握った拳を前へと繰り出す。
「同じ部屋が続くなんて……これから先、どうしたら良いのかしら?」
詩音が首を傾げる。
「どこかに正解の扉があるんじゃないかな。『あけろ』っていうのは、それを探して開けろってことじゃないかな」
「よーし! そんなら簡単じゃねーか!」
夜闇がパチンと指を鳴らす。
「開けまくればいいってことなら、簡単じゃねーか!」
「待って!」
安易に扉に手を掛けようとする夜闇に、俺は声を掛けた。
「同じ部屋が続くなら、迷路みたいな構造になっているのでしょう。だったら、何か目印をつけながら進まないと迷子になるだけだと思います」
「なるほどな! じゃあ、印を書きながら進もうぜ。誰か、ペンとか持ってない?」
夜闇が手を出し、指を曲げてチョイチョイと促した。
俺たちはそれぞれバッグやポケットの中を探してみた。
「いや、ない……」
「私も持ってないです」
──誰もそれらしきものは所有していない。
「じゃあ、どうすんだよ!」
夜闇が呆れたように溜め息を吐く。
「だったら、ひたすら真っ直ぐに進みましょう。そうすれば、いつかは行き止まりに辿り着きますから、そうしたら進行方向を変えればいいんです」
「全体の構造を把握するためにも、それが一番良いかもしれないな」と、水槍も俺の意見に賛同してくれた。
「このプレハブ小屋からの扉を背にして、まずは真っ直ぐに進むとしましょう」
「おっしゃあ! んじゃあ、出発だ!」
ようやくスタートを切り、待ち侘びたとばかりに夜闇は拳を突き上げた。
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