第2コース『探せ』

第5コーナー「隕石落下」

 それからどれくらい時間が経過したのか、腕時計や携帯電話といったたぐいを所持していないので分からなかったが、ようやく起点となる声が聞こえた。

『探せ』

 短く、声はそう呟いた。

『町のどこかにある赤色の扉の中に入れ』

「赤色の扉? それはどこにあるんだよ?」

 聞き返すが返事はない。いつも声は一方的に言いたいことだけ言って、俺の問いには答えてくれない。最早もはや、それが定石じょうせきとなっている。

『生きたければ見つけるが良い』

 まるでその言葉を開始の合図にでもするかのように、最初の部屋と同様に壁が四方へと倒れた。

 壁が取り除かれたことで視界が広がる。何故なぜか俺は、見晴らしの良い丘の上に立っていた。丘の斜面しゃめんの下──眼下がんかには町が広がっている。

「町だ! 人が居る!」

 驚きと興奮で俺の胸は高鳴った。

 ところが、同時に疑問符も頭の中に浮かんだ。

 俺は先程まで平野に居たはずである。足元が崩れ世界が崩壊した──そんな天変地異のさなかに居た。それなのに、そこにはいたって平穏で、何事もなかったかのような町並みが広がっている。

 町の人たちも普通に日常生活を送っているようであった。少なくとも、視界に見える範囲ではパニックが起こっている様子もない。


 しかし、だからといってここも安全という訳ではないようだ。

 ふと視界に影がかかり空を見上げると、無数の隕石が空から地上に向かって落下してきているのが見えた。

──なんだよ、これ!

 俺は慌てて丘の斜面を駆け下りると、近くの町へと向かう。


 いつ地上に隕石が到達するかも分からない。俺に残された有余ゆうよわずかであった。

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