『気負う必要はないんだけど』

 見学では好印象を受けたという女性ひとが、数日、体験に来ていました。


 ……が、パッタリと来なくなる。


 始めは私の隣で作業する予定だったとか。何か期待されているのかと焦ったけど、その女性ひとは静かな空間を希望していたようで、理想に近いんじゃないかと話になっていたらしい。


 どこの場所へ行っても賑やかですよ。悪く言うなら煩い。


 気持ちの面で、抱えていたモノが身体に分かるように症状となって現れたら、行くのも億劫になる。


〝少しずつ頑張れるかな〟そういう場所だからね、作業所は。無理にとは言えません。


 落ち着きない人が数名いるわけで、場合によっては職員さんも大きな声を出してしまう。初めての場所で怒鳴り声がするところは、誰だって嫌でしょう。



 数日経過して、仕事の格好で座っている姿が目に映りました。オレンジのバンダナか、実はお喋りだったりして? 勝手な想像です。ピンクの人もあれば、水色もあって、身に付けるモノって、個性が出ますね。

 バンダナにヘアピン付けてるのって、自分くらいかも……。まわりと違うことをしたかったんです。我ながら変わってる。体調を考えながら、少しずつ頑張ろうと決まったのかもしれない。


 気負う必要は無いと思いますが、お菓子を渡せたらなーと考え、勝手にソワソワしてました。誰かと話したりして余裕が伺えたら、渡してみようかな。

 というより、新人さんが居ることに慣れないとなぁ……。自分にも余裕が出来なきゃ動けない。



 初対面とは、どうやって仲良くなったっけ。そんな事を考えていたら、いつもミニオンの帽子を被ってる男性とは、距離が縮まっていることに、ふと気付いた。始めのうちは、周囲の人がちょっかいを掛けようと帽子を取りに行き、揉め事に発展してたのに。


 今では帽子を取って欲しそうに寄ってくるほどです。悪戯されても良い相手だと思ってくれているのは、嬉しいかも。キッチリしてるから行動は読みやすかったし。会話らしい会話が無いっていうのも、私にとっては都合が良かったんだと思う。


 会話だけがコミュニケーションじゃないんだと、学んだ良い機会でしたけど。大半は会話ですし、口下手っていうのもあるし、妥協もするし。改善できるならした方がいいよねー。



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