第3話  実習生




「あー、もう、なんだよめんどくさい!」


「せっかく命拾いしたってのに実習生って? ここは重力嵐を生還した者としてヒーローインタビューするところだろ!」



「ついてねー時はトコトンついてねー。」




学生達は解散後仲良しのグループで集まり口々に不平を言っていた。




「まあ仕方ないさ。でも本来の航海実習は無理だけどここで同じ単位がとれるならひょっとしたら楽に終われるかも知れないぞ。」とリーダー的な存在のハロルドは言った。






「そりゃー早く船の修理が済めばいいけど凄い時間がかかったらどうするんだ?!」



「通常ワープでも地球に戻るのに何回ジャンプしなきゃならないか?ここは宇宙の果てだぜ!」


学生達の不平不満は止むことがなかった。













惑星開拓が始まって数世紀、初めは夢中だった惑星開拓もマンネリ化してきて今ではほとんどニュースにもならなくなっている。



惑星開拓の目的は初めの頃と替わって来て資源採取が目的になりつつあった。





地球はほとんどの化石燃料資源と希少資源を使い果たし、多くの人々が出ていき今では人口1億に満たなかった。




人類の聖地として観光地化してきている。



そんな地球のマクシミリアン学園は超エリートが集まる学校で名門中の名門であった。





学生達自身学園内でもトップの成績であり、スポーツも大会で優勝するほどの優秀さでこの学園の学生であることに誇りと自負があったし、なにもしなくても皆から無条件に敬われる存在であることを疑っていなかった。



それがタダでコキ使われる実習生という名の外国人労働者みたいな事をやらされるのかと思うとへき易した。





迎賓館で豪華な食事をあたり前のように採りながらぶつくさとぼやく学生達は翌日再びバスにのせられ近くの国立博物館へ向かった。




薄暗い館内はこの星の開拓の歴史をVRで体験出来るようになっていて若く美しい女性学芸員が案内した。




「ようこそ地球の皆様、当博物館の案内をさせていただくことになりましたミシェル・ハイファーと申します。短い間ですがよろしくお願いいたします。」と挨拶した。



学生達は男も女もミシェルの美しさに見とれていた。




「今からおよそ50年前、第一陣としてメレンゲ法執行前の遺伝子を組み替えた人々がこの惑星に本格的に入植を始めました。」



「それから12年後、この星に大規模なタンホイザー鉱石が発見され、以来この星は鉱石採取のため急速に発展し今日に至っています。」




と学芸員は見た目の美しさと変わらぬ美しい声で解説した。



だが内容は非常にザックリしたもので事前の情報と大分ニュアンスが違った。




学生達はブーブーと不平を言いながらもエリートとしての優秀さで事前にこの星のことを様々な面から調べていたのだ。









惑星開拓が本格的に始まった頃、それぞれの恒星や惑星の環境に適応出来るように人々は遺伝子を操作した。



ほとんどは免疫力を高めたり体力や持久力を高めたりするものだったが中にはおもしろ半分で好き勝手に遺伝子を組み替えるものが現れ、ほとんど人間に見えない半獣半人や完全に魚人の様なものが現れて収拾がつかなくなってしまった。



とうとう遺伝子組み換えは禁止され特別許可を得たものしか許されなくなった。



当事簡単に遺伝子組み換え出来る技術を確立したドクター・メレンゲの名前を取ってこれを禁止する法律メレンゲ法が制定された。




学生達は当然遺伝子組み換えは行われていない。








遺伝子を操作した者の共通したリスクは多くの場合繁殖力を失う事だった。


子供が出来たとしても組み換えた遺伝子が遺伝しなかったりする。


また寿命が極端に短くなったりする。




未だに解明されていない謎だった。





そのためあれほど大勢いた遺伝子を操作したものは今ではほとんど生きておらず、不治の病の治療にのみ行われる程度であった。




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