第17話 サツマイモに憑りつかれた男

サツマイモ(大袋入り)が安かった。買った。

お弁当のおかずに大学芋を作ろう。


「お、大学芋か。弁当のおかずか?」

「ああ、うん。いっぱい作ったから、よかったらお父さんもどうぞ」

「お! いいねぇ!」

――その会話の時点では「どんぶりに山盛りの大学芋」があったのだが、仕事から帰ったら「空っぽのどんぶり」が待っていた。お弁当に連続三日くらい詰めようと思っていたのだが…まあいいか。


週末、弟夫婦宅にお邪魔することになった。

何か菓子折りでも用意しようとした私に父は言った。

「そんなモンより、大学芋だ! 手作りの品が一番だ!!」

手土産が“手作りの大学芋”って…いや、カリスマ主婦とか速水もこみちが作ったとかならともかく、若いカップルだって『え…オレのために“大学芋”を?(困惑)』って今後のお付き合いに影を落とす代物のような気がするのだが、父は頑なに譲らない。

仕方がないので作った。

「おい! 少ねぇな!」

「え、夫婦ふたりだけで食べるんだし…」

「俺の分がないだろ!!」

「……。」

もちろん受け取った弟夫婦の表情は

『え…手土産が“大学芋”なの?(困惑)』

であった(ごめん)。


しかしサツマイモがまだ少し残ってるな…晩御飯のおかずにするか。

素揚げして黒酢で味をつけよう(協力:COOKPAD)。

素揚げしたものを一度皿に取り出し、ちょっと台所から離れたら……明らかに減っているサツマイモ。

そして私と目を合わせないようにしながら、口をもぐもぐしている父。



――ここまで来ると流石に怖い。中毒である。ごくたまに海外のイモ類が主食の民族とかで集団食中毒が起きたりするけど、サツマイモも何かヤバいモノが入ってるの…?(サツマイモ農家の皆さま申し訳ございません)


そして散歩から帰ってきた父が笑顔で言う。


「スーパーでサツマイモ安かったから買ったぞ!」


……段ボール箱入り買ったの!?

(うわあぁぁ~)

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