第15話 休日ランチ

父の特技、それは「麺類を茹でる」である。

そうめん、稲庭うどん、生ラーメン…。もっちりツルツル、絶妙なコシで茹で上げる。休日の昼は基本的に父が麺類を茹でてくれる。


――問題は、彼は「茹でるだけ」なのだ。


「よし、今日は稲庭うどんにしよう! おい、お湯を沸かせ! 菜箸どこだ? ほら、どんぶり出せよ! あと麺つゆ!」


決して「座っていればうどんが出てくる」なんてわけではない。

なんか…ありがたいけど…自分で作ったほうがラクかな…鍋とかザルとか洗うの私だし…。


私はホーローのフライパン(熱の通りが早い)に湯を沸かした。

「おい! うどん出しておけよ!」

「いや、私パスタ作ります」

「え?」

ロングパスタは半分に折って入れる(茹で時間短縮)。

「いいのか?」

「いいですよ」

切った玉ねぎも一緒に入れる。ベーコン(ハムでもソーセージでも、とりあえず冷蔵庫にあるヤツ)も入れる。

「なんか悪いなぁ…」

「どうぞお気になさらず」

パスタが茹で汁を吸うので牛乳とバターを加える(生クリームなんて高級なものはない。マーガリンでも構わない)。

「何か手伝うことあるか?」

「いえ、お掛けになってお待ちください」

おっと、ニンニク忘れるところだった。チューブのでいいや。

「(ワンパン)クリーム(風)パスタです」

「おお~!」


粉チーズをバサバサかけて食する父。

「うん! いい味だな!!」

「それは何より」



本当に何より。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る