第12話 キーマカレー(ナン付き)

仕事から帰る途中、自分の少し前を走っていた軽自動車が対向車線の車と正面衝突した。こ、これは110番だ!


「ええと、もうどなたか通報しているかもしれませんが、〇〇市の△号線で車が衝突して……(心臓バクバク)」

『あ~、場所を確認しますので、隊員がそちらに向かうまで待機していてもらえますか?』


自分が第一通報者だったようだ。

そんな訳で家に着くのが遅くなりそう…と父に電話したら怒鳴られた。


『なんでお前はそういうお節介をするんだよ!』※市民の義務です。

「だ…だって…(バクバク)」

『なんだ…お前、怖がってんのか? まったくしょうがねぇなぁ…△号線ってことは、交差点にカレー屋がある辺りか?』

「えっ、あ、はい」

『そろそろ夜の営業が始まる時間だろ。お持ち帰りのカレーを買って来いよ、晩メシにしよう』


え、話聞いてた!? この状況でカレー!? ……と思ったが、私はハッとした。


そう、これは敢えて他のタスクを与えることにより、動揺から解放しようという人生経験豊富な父の機転なのだ。さすが父上!


――まあ正直「いや~このナンっつうヤツ本当にうめぇよな!」と嬉しそうに頬張る笑顔に、ちょっとだけ(この人、純粋にカレーが食べたかっただけか…?)と疑いかけたが、ここは父の愛を信じることにした。




むしろ重傷者がいなかったとはいえ、大破した車をバシバシ写メってる観衆が怖かった……。

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