第10話 レンコンのきんぴら

レンコンが安かった。買った。

明日の晩御飯はレンコンのきんぴらにしよう。


「そうだな、いいなぁきんぴら、千切りにしてな」父が言う。

「え…レンコンは千切りにできないでしょ、半月切りにして…」

「何を言っている! きんぴらにするなら千切りだろう!!」


たぶんゴボウと勘違いしているんだろう。言い返しても疲れるだけである。どうせ作るのは私だ。

明日仕事から帰ったら作ろう。


翌日。

「ただいま~」

「おう! おかえり! レンコン切っておいたぞ!」

「え…え? はぁ、どうも…」

「それがどうも上手く千切りにできなくてな…」


……え? はい?


「まぁ…とりあえず台所のまな板に置いといたから、あとは頼むわ。んじゃ俺、ちょっと散歩に行ってくる」


――まな板の上に『かつてレンコンと呼ばれし者たちの亡骸』を残し、父は散歩へと旅立った……。





片栗粉をまぶしてゴマ油で炒めたら意外と美味しかったです。

(協力:COOKPAD)

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